コラム

COLUMN

Space X Starlinkの地上設備~衛星を上げただけでは何もできない~

SpaceXが小型通信衛星Starlinkによるブロードバンドインターネットの構築を進めています。既に打ち上げられた衛星は1000機にも達する勢いですが、衛星を介して通信をするための地上設備(主に端末)に関する情報が少ないように思われます。今回はStarlink端末について考えます。

 

 

 2020年10月24日、Space Xは60機のStarlink衛星をFalcon 9ロケットで打ち上げました。Space Xは10月6日、10月18日にもそれぞれ60機のStarlink衛星を打ち上げており、運用衛星数はハイペースで増加し既に800機以上となっています[i]

 

 読者の皆さんは携帯電話を購入する時、何を気にされますか?スマートフォンの機能、デザイン、画面の大きさ、カメラ性能、大きさや重さ、でしょうか?

 「家の近くにXYZ社のLTEのアンテナが立っていないので、ABC社にしよう。」などと考えませんよね。多くの人は、携帯電話基地局数やネットワーク機能ではなく、毎日使用する端末の使い勝手が気になると思います。電波状況が悪いのはネットワークの問題なのですが、自分の端末に向かって、「XYZ社はダメだな!」と文句を言いませんか。ユーザーは、日頃利用する端末でサービスを提供する携帯電話事業者を評価しているのです。

 衛星通信や衛星リモートセンシングの分野で小型衛星コンステレーション構築計画が進んでおり、冒頭述べたように、Space Xもハイペースで通信衛星インフラを整備しています。Space XがStarlink衛星を打ち上げるとメディアは大きく取り上げます。筆者は、「いくら衛星を上げても、ユーザーが利用する端末がスマートなものでなければ、あまり使われないはず。何故、衛星の情報しか出てこないのだろう?」と考えていました。スマートな端末というのは、ユーザーが使いやすい、アフターケアが充実している、という意味です。衛星に搭載する通信機器を設計する場合、端末の性能も考慮して設計するはずです。何故、端末の情報が公表されないのだろう、と不思議に思っていたところ、少しだけ情報が出てきました。

 

 「The Better Than Nothing Beta」と名付けられたStarlinkのβ版の試験が招待者でのみ実施されることになり、Space Xからこの招待者へ送られたメールが投稿サイトであるRedditに掲載されたのです[ii]

 メールには以下のような項目が記載されていました。

・データ速度:50Mb/秒~150Mb/秒

・遅延時間:20ミリ秒~40ミリ秒(今後数か月)

・稼働時間:接続できない時間あり

・フェーズドアレイユーザー端末(アンテナと送受信機)とルータ費用:499ドル

・月額利用料:99ドル

 今後、さらに多くの衛星や地上局を整備し、ネットワークソフトウェアを改良することで、データ速度、遅延、稼働時間を劇的に改善させ、遅延については2021年夏までに16ミリ秒~19ミリ秒を達成する予定である、とメールの最後に述べられています。

 

 β版試験招待者もこれだけのメール内容で参加するかどうか判断できるのか少々疑問を持ち、端末に関する情報についてもう少し調べてみました。いくつかのサイトでSpace Xのユーザー端末に関する情報がありますので、ご紹介したいと思います。

 

 Elon MuskはStarlinkのユーザー端末について、「端末は棒の先に付いた薄く、平らで、丸いUFOのような形(round UFO on a stick)で衛星を自動追尾でき、電源に接続し空に向けるだけで使用できる。」と説明しています[iii]。しかし、これらの機能は従来の衛星通信端末が持っているごく普通の機能です。一つでも欠けたら、衛星通信用端末として不合格です。アンテナの大きさは19インチ程度[iv]のようですが、従来の衛星通信用端末と比べて目新しい機能は付いてないようです。

 連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)はSpaceXに対して100万台のパラボラアンテナの米国内での運用(設置)を許可していたのですが、Space XはStarlinkへのアクセス要望が多いことを理由に運用ユーザー端末数を500万台に増やす新たな要求をFCCに提出しました。Space XはFCCに対して、月に数千台ペースでユーザー端末を製造するために70Mドル以上の開発費を投資していると説明しています。

 

 衛星ブロードバンドを成功させるためには、ユーザー端末の販売価格が重要なファクターになりますが、端末の販売網や端末の修理および取り換えなどを行う代理店の整備も必要になるため、ロケットや衛星の開発・製造を行ってきたSpace Xにとって新たな取り組みが求められることになります。ユーザーを如何に獲得していくか、Space Xの手腕が問われることになり、β版試験の結果と併せて今後とも注視したいと思います。

 

 なお、Kaバンド(27.5~30.0GHz)でStarlink衛星と信号を送受するフィーダーリンク局はGate Way局として使用され、Starlinkと地上のインタネット事業者を接続するためのPOP(Point of Presence)とともに地上設備として整備されます。日本では、Gate Wayが札幌に、POPは東京に設置される予定です[v]

 

画像はStarlinkユーザー端末のイメージ:Tesmanian Blogより掲載

Credit: r/darkpenguin22 via Reddit

https://www.tesmanian.com/blogs/tesmanian-blog/ufo-starlink-terminal

 

 

[i] Space News:https://spacenews.com/spacex-reaches-100-successful-launches-with-starlink-mission/

[ii] Parabolic Arc:http://www.parabolicarc.com/2020/10/27/spacexs-starlink-beta-test-costs-499-for-terminal-99-per-month/

[iii] https://www.tesmanian.com/blogs/tesmanian-blog/ufo-starlink-terminal

[iv] https://www.tesmanian.com/blogs/tesmanian-blog/starlink-terminal

[v] ⼩型衛星コンステレーションによる衛星通信システム(Ku帯⾮静⽌衛星通信システム)の検討状況について:https://www.soumu.go.jp/main_content/000691584.pdf

2021.10.20
2021.10.19
2021.10.18