コラム

COLUMN

スペースデブリと衛星の保護領域

スカパーJSAT株式会社と理化学研究所がレーザーを使ってスペースデブリを除去する衛星の設計・開発を行っています。これまで、スペースデブリ除去に関するアイデアは色々発表されていますが、今回はスペースデブリ低減に関する規則について概説します。

 

 2020年6月12日、スカパーJSAT株式会社は、理化学研究所、JAXA、名古屋大学、九州大学、それぞれとの連携により、レーザーを使う方式によりスペースデブリ(不用衛星等の宇宙ごみ)を除去する衛星の設計・開発に着手すると発表しました。このレーザーを使う方式は次のような利点があるとのことです(スカパーJSATニュースリリース)。

① 接触しないため安全性が高い。

② スペースデブリ自身が燃料となり、移動させる燃料が不要なため経済性が高い。

 さらに同社では、2022年にJAXAが静止軌道に打ち上げを予定している技術試験衛星9号機(ETS-9)に光学望遠鏡を相乗りペイロードとして搭載し、日本政府との連携の下、静止軌道上のスペースデブリを撮像し、宇宙環境を把握することで、スペースデブリと人工衛星の衝突を回避し、宇宙の安全に寄与することを目指すとしています(スカパーJSATニュースリリース)。

 

 スペースデブリについては発生させないことが最も重要で、スペースデブリ低減のための国際的な条約も作られています。これについては後程説明します。しかしながら宇宙空間にはすでに膨大なスペースデブリが存在し、現在、衛星運用事業者はデブリの状況を日夜監視し、衝突の危険性がある場合は自社の衛星の軌道制御を実施することでこれを回避しています。このスペースデブリを除去するビジネスを提供しようとしている代表的企業が皆さんよくご存じのアストロスケールです(アストロスケール)。

 

 スペースデブリについてはNew Spaceビジネスが盛んになる前から問題視されていました。1959年開催の第14回国連総会で決議された「宇宙空間の平和利用に関する国際協力」に基づいて宇宙空間平和利用委員会(COPUOS:Committee on the Peaceful Uses of Outer Space)が常設委員会として設置されました。COPUOSは宇宙空間の研究に対する援助、情報の交換、宇宙空間の平和利用のための実際的方法及び法律問題の検討を行い、これらの活動の報告を国連総会に提出する任務を負っています(外務省)。2007年、COPUOSにおいて「スペースデブリ低減ガイドライン」が定められました。これは法的拘束⼒のない所謂ソフトローですが、宇宙空間の人工または自然界のスペースデブリへの対応に関する政府機関の国際フォーラムである国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC:The Inter-agency Space Debris Coordination Committee)の提案に基づいて作成されたものです。スペースデブリ低減対策に関係する詳細な記述や勧告については、IADCスペースデブリ低減ガイラインの最新版を参照することとされました(内閣府)。IDACでは、静止衛星と低軌道衛星の安全と持続的利用を保証するために、以下の領域をスペースデブリの発生から保護する領域として定めています。

(1) 低軌道域(Low Earth Orbit (or LEO) Region))

地球表面から2,000kmの高度までの球状領域

(2) 地球同期軌道域

静止軌道高度(35,786km)より200km低い高度から静止高度より200km高い高度で緯度が±15度以内の範囲

 

 運用を終了した静止衛星は上記の(2)に基づき、保護領域である200kmと月、太陽および重力による摂動効果による最大高度変化量(35km)の合計235km以上に近地点高度が達するようにDe-orbitを行います。また、低軌道衛星は運用終了後25年以内に地上落下時のリスク低減を勘案しつつ、軌道寿命が短い軌道への移動が求められます(内閣府)。

 

 New Spaceによる宇宙ビジネスの参加や、大規模LEOコンステレーション計画などによる宇宙環境の変化に伴い、2019年2月からCOPUOS科学技術⼩委員会の下に設置された作業部会(WG)で「宇宙活動の長期的持続可能性」の議題等に基づいて活発な議論が行われ、2019年6月、国連ウィーン本部で開催されたCOPUOS本委員会において、宇宙活動に関する長期持続可能性ガイドラインが加盟国92か国の全会一致により採択されました。

 

 2020年6月30日に変更された宇宙基本計画でも、「同盟国・友好国等と戦略的に連携した国際的なルール作り」として、「我が国の宇宙安全保障及び宇宙空間の持続的かつ安定的な利用を確保すべく、同盟国や友好国等と戦略的に連携しつつ、スペースデブリ対策等を含めた包括的な観点から、実効的なルール作りに一層大きな役割を果たすとともに、各国に宇宙空間における責任ある行動を求めていく。」とされています。

 このような流れの一方、米中の宇宙探査競争や宇宙の軍事利用の活発化など平和利用とちょっと違った方向が垣間見えることが、筆者としては気がかりなところです。このような宇宙の軍事利用についても別のコラムで解説したいと思います。

 

写真はJAXAウエブサイトから転載(スペースデブリ

 

 
 
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