コラム

COLUMN

スタートアップClearSpaceのスペースデブリ除去ビジネス

ESAがスイスのスタートアップ企業であるClearSpaceと世界で初のスペースデブリ除去に関する契約を締結しました。スペースデブリ除去ビジネスの概要とClearSpaceの現状について解説します。

 

 

 現在、宇宙には約2,000機の運用中の衛星と、3,000機以上の故障した衛星が存在していると言われています(ESA commissions world’s first space debris removal)。故障した衛星は多数のスペースデブリを発生させる要因となるため、以下のようなスペースデブリ対策が検討されています。

① 衝突回避

 観測・追跡が可能なデブリの軌道を予測し、衝突警報を発信し回避運用を行う。

② デブリ発生の抑制

 衛星からのデブリ発生を抑制するため、部品や破片の放出を抑制し運用終了後の廃棄の措置等への対応を確実に行う。

③ デブリ削減・除去

 上記①では、衛星運用事業者などがデブリ情報を取得し、自らの衛星の回避運用を行います。②では、国際的なルールやガイドラインの策定あるいは実施促進に向けた活動が重要になると思われます。そして、いくつかのベンチャー企業が新たな宇宙ビジネスとして取り組んでいるのが③のデブリ削減・除去です。これは文字通り宇宙に存在するデブリを取り去ってしまおうというものです。

 スペースデブリ除去ビジネスの事業化を目指す企業として、日本に本社を置くアストロスケール(Astroscale)が有名ですが、スイスのスタートアップであるClearSpaceがESAとスペースデブリ除去に関する契約を締結したとの記事がSpaceNewsに掲載された(ClearSpaceとESAとの契約)ことから、今回はClearSpaceに着目したいと思います。

 

 ClearSpaceは、スイスの科学技術研究所Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne(EPFL)に籍を置く経験豊富なスペースデブリ研究者がスピンオフして設立したスタートアップです。ESAはデブリ除去を含む軌道上サービスの新しい市場を確立を支援するために、スタートアップ主導の民間コンソーシアムとサービス契約を締結しており、ClearSpace-1は、2025年に打ち上げが予定されている軌道上のデブリを除去する最初の宇宙ミッションなのです(ESA commissions world’s first space debris removal)。2020年12月、ESAはこのスペースデブリ除去ミッションの完結のためにClearSpaceと8,600万ユーロ(1億400万ドル)の最終契約を締結しました(ESA signs contract for first space debris removal mission)。

 ESAの事務局長(Director General)を務めるJan Wörner氏は、「もしこれまでの歴史の中で失われた船が海上を漂っていたら、航海がどれだけ危険か想像してみてください。軌道上の状況はそれと同じでありこの状況を続けることはできません。ESA加盟国は、スペースデブリ除去ミッションを支持しており、将来の新たな商業サービスへの道を拓くものです。」と述べています(ESA commissions world’s first space debris removal)。まったくその通りだと思います。海洋におけるプラスチックごみは人類の生活をも脅かす国際的な課題となっていますが、軌道上においてもプラスチックごみのような小さなデブリが増大する前に細かなスペースデブリを発生させる危険性のある物体を除去することが必要だと痛感します。

 ESAのClean Space(Clean Space)の責任者であるLuisa Innocenti氏は、「宇宙へのすべての打ち上げが明日中止されたとしても、軌道上の破片の数は増え続けるだろう。」と述べています。

 

 NASAやESAの研究によると、軌道環境を安定させる唯一の方法は、大きな破片を積極的に取り除くこととされています。そのため、ESAは今後もADRIOS(Active Debris Removal/ In-Orbit Servicing)と名付けたプロジェクトで、スペースデブリ除去に必要不可欠な誘導、航法、制御技術やランデブー、捕獲手法の開発を継続し、その成果をClearSpace-1に適用しようとしています。

 ClearSpace-1ミッションは、2013年に第2回目のVega打上げにより高度、約800km×660kmに取り残されたVespa (Vega Secondary Payload Adapter)のアッパーステージをターゲットとして取り除くことを目標としています。これは、重量100㎏のVespaのサイズが小型衛星に近くかつ、比較的単純な形状と頑丈な構造であることから、今後、複数の目標をターゲットとし、より大規模で挑戦的な捕獲を目指すための第一歩として適切なものである、としています。

 ClearSpace-1‘chaser’は、最終テストのために500kmの軌道に打ち上げられた後、ESAの監視の下、ランデブーと4本のロボットアームを使用した捕獲を行うために目標軌道まで上昇してChaserがVESPAと結合し、大気中で燃焼するために軌道離脱します。

 

 ClearSpaceのCEO Luc Piguet氏によると、ClearSpace-1の完成後も、同社はさらに野心的なミッションに着手する計画で、1つの宇宙船で複数の物体を捕獲できるようにすることでコストを削減し、サービスをより手頃な価格で提供することを目標としているとのことです。

 ClearSpaceは、OneWebやIridiumをはじめとする複数の衛星コンステレーション事業者と連絡を取り合っているようですが、まだサービス契約の締結には至っていないようです。

 

 スペースデブリ除去をはじめとする軌道上ビジネスの開発が盛んに行われていますが、将来の低コスト化を見据えた開発がここでも重要になりそうです。

 

写真はSpaceNewsから掲載(ESA signs contract for first space debris removal mission

 

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