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Amazon Kuiperのユーザー端末とは?そして課題は・・・。

Space Xが構築を進めるLEOメガコンステレーションStarlinkではユーザー端末を用いたベータ試験を行っていますが、Project Kuiperを推進するAmazonもユーザー向けのアンテナを開発したと発表しました。今回はこの端末について報告します。

 

 2020年末、Amazonは開発中のLEOコンステレーションであるProject Kuiperのユーザー向け低コストアンテナの初期開発を完了したと発表しました(Amazon marks breakthrough in Project Kuiper development)。

 

 2020年7月30日、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)は、Amazonが構築を計画している3,236機のLEOコンステレーションによるインターネット、Project Kuiperを承認しました。FCCによると、Amazonは2026年7月30日までに計画する衛星の少なくとも50%を打ち上げ、2029年7月30日までには全ての衛星を軌道に打ち上げることが求められています(Space News, Amazon’s Kuiper constellation gets FCC approval)。Amazonはコンステレーションが設計中であるとの理由から、打ち上げ計画の概要を明らかにしておらず、578機の衛星が軌道上で揃った時点でサービスを開始する予定であると述べるにとどめています。Amazonが申請しているKaバンドの周波数は、17.7から18.6GHz、18.8から20.2GHz、27.5から30.0GHzの三つの周波数帯のようで(Space.com, The FCC has approved Amazon's plan)、FCCはAmazonのKaバンドサービスは、消費者、政府、企業における高速ブロードバンドの利用を促進するだろうと述べています。

 

 冒頭のAmazonの発表によると、Amazonが開発したユーザー端末用のKaバンドアンテナはフェーズドアレー型で従来のアンテナよりも小型・軽量化されており、同社のプロトタイプではすでに最大400Mbpsの速度を達成し、今後も性能向上に向けた取り組みが行われるとのことです。端末の製造コストを削減する最も効率的な方法はアンテナのサイズ、重量、複雑さを減らすことですが、Kaバンドなどで広帯域の周波数帯をカバーするためには送信アンテナと受信アンテナ間の物理的間隔が必要となることから、送信アレーと受信アレーを隣接配置していたため広いアンテナ面積と製造コストが必要でした。Project Kuiperのユーザー端末用アンテナでは送受アレーを互いに隣接して配置するのではなく、小さなアンテナ素子構造を採用してお互いを重ね合わせることで、端末全体のサイズと重量を削減したのです。この送受アレーの重ね合わせのイメージがAmazonのサイトに掲載されています(Amazon marks breakthrough in Project Kuiper development)。

 その結果、アップリンク(端末送信)周波数:28.5~29.1GHz、ダウンリンク(端末受信)周波数:17.7~19.3GHz、直径(最大幅)12インチ(30㎝)の単一開口フェーズドアレーアンテナが実現されました。

 

 弊コラム「Space X Starlinkの地上設備(コラム)」でご紹介したStarlinkの端末は、データ速度が50Mb/秒~150Mb/秒、アンテナは直径19インチのフェーズドアレー、端末費用はユーザー端末(アンテナと送受信機)とルーターで499ドルでした。最終的な端末価格は販売台数すなわちユーザー数に大きく影響されますが、Amazonが端末価格をどの程度に設定するか非常に興味があります。伝送速度については、静止衛星を介して4K品質のビデオストリーミングの試験を行ったと発表しています。

 

 このように、今回のAmazonの発表はProject Kuiperに対する同社の本気度を示すものと思われますが、課題がないわけではありません。

 

 Project Kuiperでは、ミッションを終了した衛星を355日すなわち1年以内に軌道離脱させるとAmazonはFCCに伝えています。これは、低軌道衛星は運用終了後25年以内に軌道離脱を行うことを求めるNASAの要求(NASA, Deorbit )よりはるかに短いものです。しかし、AmazonはFCCが要求するCasualty Risk Analysisを終えていない模様なのです。Casualty Riskとは、デブリを避けるための手段として宇宙物体を再突入させる場合に地上被害を与えるリスクのことです(FCC)。Amazonは、地球の大気圏に再突入すると完全に消滅する材料や部品を使用することを計画しているようですが、衛星コンポーネントの設計や構造が確定した後に有意性のある解析を行い、それに基づいてFCCとの調整が行われます(Space.com, The FCC has approved Amazon's plan)。

 

 LEOメガコンステレーション構築や運用に関しては、宇宙や地球環境を維持することが強く要求されるべきです。機会をあらためまして、このような問題についても報告させていただきます。

 

 

写真はAmazonから掲載

aboutamazon.com

 

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