コラム

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ECが更なる性能向上を目指す次世代Galileo

欧州委員会(EC)が、欧州の測位衛星システムであるGalileo次世代衛星の製造契約を締結しました。英国のEU離脱がこの契約に微妙な影響を与えています。次世代Galileo衛星の最新情報と併せてレポートします。

 

 

 2021年1月20日、EC(欧州委員会)は公募していた12機の次世代Galileo衛星について、イタリアのThales Alenia SpaceおよびドイツのAirbus Defense & Spaceと総額14億7000万ユーロで契約した、と発表しました(EC NEWS ANNOUNCEMENT)。

 ご存じの方も多いと思いますが、Galileoは欧州が開発・構築を進めるグローバル測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で、2011年から2012年に打ち上げられたIOV(In-Orbit Validation)と呼ばれる3機の実証衛星を含め、2016年から本格的に稼働しており現在24機の衛星が正常に運用されています(Constellation Information)。さらに2機の衛星が2021年後半に打ち上げられる予定ですが、新たに次世代Galileo衛星の調達に関するニュースが発表されました。

 次世代Galileo衛星の目的は、米国のGPS、ロシアのGLONASS、中国のBeiDou、インドのNAVICそして日本の準天頂衛星システムといった測位衛星システムとの技術競争で最先端を走り、欧州が戦略的に自立するための重要な資産として強化しつつ、世界で最も優れた衛星測位インフラとして維持することとしています。

 最初の次世代Galileo衛星は、2024年末までに軌道に投入される予定で、今後のデジタル時代だけでなくさらなるセキュリティと軍事利用の鍵となるように、デジタル的に構成可能なアンテナ、衛星間リンク、新しい原子時計技術、全電気推進システムなど、高度な革新的技術を取り入れることでGalileo信号の堅牢性(robustness)や復元力(resilience)の向上とともに精度の向上をはかることとしています。

 

 2018年、ECはそれぞれ6機づつの衛星を2社と契約することを目的として、競争的な対話を通じて次世代Galileo衛星12機の調達に関する入札手続きを開始しました。入札手続きはESA(European Space Agency)が行いました。3者から提案があったようですが、技術的および財務的評価を行った結果、優れた技術的および財務的提案であるとして、Thales Alenia SpaceとAirbus Defense & Spaceと交渉を進めるようECに推奨したのです。そしてこの度、提案3者に対して入札結果が報告されました(EC NEWS ANNOUNCEMENT)。

 

 入札の結果、現在運用されているGalileo衛星の主要契約者であるOHBは選定されませんでした。ECはThales Alenia SpaceとAirbus Defense & Space以外の入札者を明らかにしていませんが、1月20日、OHBが自ら提案を提出したことを認め、ESAから自社の提案は成功しなかったと通知されたと発表しました(OHB)。OHBは34機のGalileo衛星の契約を実行中であり、そのうちの22機は既に納入され、残りの12機は製造途中であることから、現在の契約には影響しないとしています(SpaceNews)。

 OHBは、英国のSurrey Satellite Technology Ltd.(SSTL)から衛星に搭載するナビゲーション・ペイロードの提供を受けています。ところが、SSTLが拠点を置く英国がEUを離脱し、今後Galileo計画に参加できなくなったため、次世代Galileo衛星に関してはこのような提携が行えなくなってしまったのです。

 ESAのナビゲーション担当ディレクターPaul Verhoef氏は1月14日の記者会見で、「英国がEUのナビゲーション計画から除外されていることは残念であるが、英国が本プログラムに参加することはないだろう。」と述べています(SpaceNews)。

 英国はEUを離れることにより「第3国」扱いになり、EUが安全保障プログラムとみなす加盟27か国しか参加できない機微な作業を扱うことができなくなります。Galileoのペイロード組み込み作業も機微な作業とみなされるのです。

 現在、英国はGalileoが提供する超精密測位サービスに代わる国産の代替品を探しており、インド政府がインドの複合企業Bharti Globalと共同で買収したOneWebも考慮しているとの見方もありますが、詳細ははっきりしてません。

 

 一方、英国とEUは、EUのもう一つの大規模宇宙プロジェクトである地球観測プログラムCopernicusについて協力を継続することに原則的に合意しました。英国政府は、英国がCopernicusサービスにフルにアクセスでき、また英国企業が関連作業に入札できるようにするため、今後7年間で約8億ユーロ(7億1000万ポンド)を支払うようです。ESAにとって、これは歓迎すべきことです。何故なら、英国からの資金提供は、Copernicusの資金不足を埋めるのに大いに役立つと見られているからです。EU加盟国は2021~27年のプログラム予算として54億ユーロの予算を承認したのですが、新たな衛星の打ち上げなどを含むすべての目標を達成するにはさらに20億ユーロ以上が必要とされており、英国や他の第3国であるノルウェーやスイスがCopernicus計画に参加させることができれば、資金不足を大幅に縮小することができるのです(BBCニュース)。

 このように、英国のEU離脱はEUの宇宙戦略にも大きな影響を与えていることがわかります。

 

写真はGalileo衛星のイメージ:Credit: ESA(spacenews.com

 

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