コラム

COLUMN

EUの宇宙開発―地球観測衛星データを利用した海洋・海底状況の把握(Satellite Seafloor Survey Suite)

欧州のイノベーションプログラムであるHorizon 2020の中で、地球観測衛星データなどを利用した4SSatellite Seafloor Survey Suite)の開発が行われています。四方を海に囲まれた海洋立国の日本でも参考になるプログラムとしてご紹介します。

 

 

 欧州連合(EU)は学術研究と産業が連携した複数のパートナーによる研究・イノベーションプロジェクトに対して助成金を提供しています。これは、1957年の欧州共同体設立以降、欧州規模での研究と技術革新を支援する目的の下で、いわゆるフレームワーク・プログラムFP(Framework Program:枠組プログラム)として、EUにおける研究に関連した政策手段として発達してきもので、欧州各国はこの政策手段に資金を投入することに合意し、長年にわたってテーマの優先度決定や財政支出によって、EUのニーズに対応してきました。

 

 欧州委員会は、コミュニティレベルでの全体的な開発、研究・実証戦略を提議し、実行するための最終目標として、1984年から1987年までの3年間をカバーする第1次フレームワーク・プログラム(FP 1)を立ち上げました。以降、FPが継続され、第8回目となる2014~2020年のFPはHorizon 2020と名付けられ、約800憶ユーロ(約10兆円)に上る公的資金がEUから投入されています(Horizon 2020)。

 これまでのFPでは、宇宙に係る様々な分野での研究が行われており、Horizon 2020でも、「欧州が宇宙に関するアイデアから実証に至るまでの革新的な技術と運用コンセプトを開発し、宇宙データを科学、公共および商業目的のために使用可能とする」、ことを目指しています。Horizon 2020における宇宙関連プログラムの概要は以下のとおりです(Horizon2020 Space Program)。

・EUにおける宇宙開発の重要課題であるEuropean Global Navigation Satellite System(EGNSS:欧州全地球航法衛星システム)と地球観測プログラムから派生する利益の継続的獲得および技術先導性の確保

・宇宙インフラの保護の支援。特に、欧州レベルでのSpace Surveillance and Tracking system(SST:宇宙監視追跡システム)の設置に対する支援

・世界における産業競争力とそのバリューチェーンを維持・強化するためのEU産業への支援

・欧州の宇宙インフラ投資が欧州の宇宙科学や市民に利益を提供するよう支援

・宇宙科学と探査における国際的パートナーシップでの欧州の魅力的立場の確保

 

 最近の情報によると、この中で欧州のフラッグシップと位置付けられているEGNSSと地球観測プログラムのうち、地球観測衛星を利用する海底状況把握技術の開発が行われています。周囲を海に囲まれる日本にとっても参考になるのではないかと考え、この内容について調べました。

 

 オランダに本社を置き、地球上の様々なデータの取得・分析・アドバイスを通して、ユーザー資産の設計・構築・運用を安全かつ持続的に効率的な手法で行えるように支援する、グローバルな地質データ専門企業であるFugroは、EUとの共同出資による研究開発プロジェクトである4S(Satellite Seafloor Survey Suite)に参加し、地球観測衛星による海底マッピングのためのリモートソリューションを開発しています(Fugro 4S)。

 4Sは2020年11月から開始され、2023年10月末に終了する3年間のプロジェクトで、自動化された地球観測アルゴリズムとワークフローを使用して、海底の生息地、地形、浅瀬の水深をリモートでマッピングおよび監視できるよう、オンラインクラウドベースのソリューションを開発しています。

 4Sでは、人工知能、物理モデル、衛星データ、航空機データを活用し、より少ない人員と設備で海底の特性を迅速に分析することにより、浅水域における海洋サイトの特性評価活動のリスクを低減します。この4Sコンソーシアムには、衛星データ解析、水路測量、生物学などの分野の専門家が参加しており、水環境の光学リモートセンシングの世界的なリーディングカンパニーであるドイツのEOMAPが主導しています(EOMAPホームページ)。その他の企業としては、Hellenic Centre for Marine Research(ギリシャ)、QPS(オランダ)、Länssstyrelsen Västerbotten(スウェーデン)、CNR ISMAR(イタリア)、INSTITUTO HIDROGRÁFICO(ポルトガル)、Smith Warner International Ltd.(ジャマイカ)などが参加しています。

 

 欧州委員会(EC)の情報源であるCORDIS(The Community Research and Development Information Service)では、EUの研究革新フレームワーク・プログラム (FP 1からHorizon 2020) が資金提供するプロジェクトから得られる成果に関する情報を提供しています(EC Cordis)。

 このCORDISサイトによると、4S SuiteにはAPIが用意されており、水路測量ソフトウェアやユーザーのワークフローと統合できるように開発、実証することが計画されています。4Sでは、欧州の地球観測プログラムであるCopernicusのデータを米国の衛星Lidarデータとともに利用し、オプションとして、ユーザが保有するドローン画像やオンサイトデータと統合することも可能で、海洋や沿岸の利害関係者へのグローバルなアウトリーチを達成することができ、欧州のブルーエコノミーの成長につながり、社会的利益としてUN SDG 14「海の豊かさを守ろう」(SDG14 sea)の目標に直接対応するもので、ユーザーの取り込みと経済持続可能性を継続しかつ増大することが期待されています(Cordis 4S)。

 

 日本政府が福島第一原発の処理水の海洋放出を決定したことに対して、日本の漁業関係者や韓国・中国などが懸念を示しています。地球温暖化が海洋の生態系に及ぼす影響も懸念されるところです。四方を海に囲まれる日本にとって海洋は重要な資産ですので、今回報告したソリューションなどを活用して、衛星データをはじめとする様々なデータから定量的に海洋資産の管理ができるのではないでしょうか。

 

写真はFugroホームページ(fugro.com)より転載

2021.10.20
2021.10.19
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