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夜空を彩る「星座」と「アステリズム」-夜空に見出す物語-

毎晩空を彩る天体現象は多くあります。日ごとに形を変える月、流星群、彗星……地球の外で起こる様々な現象を目で見ることで、私達は楽しみ、移り変わる時間を感じることもできます。一方で、目には見えずとも、私達人間が持つ想像という力によって生み出され、楽しむことができるものがあります。その代表的な物が「星座」と「アステリズム」といった、星と星を結ぶことでできる様々な人や神、動物や記号です。

 

今回はこうした「星座」と「アステリズム」について解説していきます。

「星座」とは?

「星座」と聞いて、人によって思い浮かべる形は様々かもしれません。自身の星座を思い浮かべる人も多いでしょう。「星座」とは、星と星を線で結んでできた様々な形の事と思われがちですが、実は少しだけ違います。

 

天文に関するあらゆることを決めている国際天文学連合(IAU)によると、「星座」とは天球上の星の並びごとに名称を決め、赤経と赤緯で境界を引いた領域であると言います。つまり、夜空を見た時に、特定の星の並びごとに境界線を引いた「領域」のことを星座と言います。星座は「星座線」によって星と星を結んで図を描いたものだと思われがちですが、実はこの星座線のパターンは決まっておらず、決まっているのは領域だけで、その結び方は自由です。いくつかの星座に関する本を見比べて見ると、星の結び方が違うことがあるかもしれませんが、これがその理由です。

 

こうした星座は、並んでいる星と星の間に力学的な関係性があるわけではありません。一つの星座の星々と地球の間の距離もまちまちで、実際に星同士が近い場所で並んでいるわけではありません。たまたま星が地球から見ると特定の形に見えるのが「星座」なのです。

 

星座を構成する星々は、毎日見ていると見える位置が変わっていくように見えます。冬と夏を見比べていると星の位置が全く違い、実際に「夏の星座」、「冬の星座」と星座が分けられることもあります。これは地球が一年かけて太陽を中心に周っている「公転」の影響で、季節ごとに見えている星の領域が違うことに関係しています。季節ごとに星座は移り変わるため、星座は空のカレンダーとして多くの人に利用され、現在も季節を感じることができるものの一つとして親しまれています。

また、北半球の空(北天)と南半球の空(南天)でも見える空は大きく違います。日本はヨーロッパと同じ北半球のため、ヨーロッパに古くから伝わる星座を多く見ることができますが、オーストラリアやニュージーランドでは、八分儀座やカメレオン座といった違う星座を見ることができます。

 

場所ごとに違い、季節ごとに移り行く星座ですが、その中で最も有名なものとして挙げられるのが「黄道十二星座」でしょう。「黄道」とは、地球上から見た際の、見かけ上の太陽の通り道のことであり、太陽はこの黄道を一年かけて一周するように見えます。この黄道には12個の星座があり、これらの星座は長い歴史の中で姿かたちを変えながらも重要視されてきました。現在でもこうした黄道十二星座は、おひつじ座、おうし座、ふたご座等の、お誕生日星座として親しまれています。

黄道十二星座の星座絵
それぞれ星座に伝わっている神話を元にした絵が描かれている

星座の歴史と物語

国際天文連合(IAU)によって、現在用いる正式な星座は「88」と定められており、今までの星座を整理して生まれました。これまで多くの星座が生まれ、また消えていきました。

星座が生まれた時期ははっきりと分かっていませんが、古代エジプトやメソポタミアの遺跡には、星の並びを様々なものに見立てた図が多く発見されています。古来から人々によって生み出されていた星座ですが、現在の星座の元になったのは、2世紀の古代ギリシャにおけるグラウディオス・プトレマイオスが決定した「トレミーの48星座(プトレマイオス星座)」でした。これはメソポタミア文明から変化しながらも伝わる大量の星座を48個に整理したものです。名前が変わったものもありますが、トレミーの48星座のほとんどが現在も使われており、うお座やかに座などはこの頃からあります。このトレミーの48星座には他の星座にはないギリシャ神話の物語が伝わっているのもあり、現在でも人気の星座群です。

 

それから星座の数や形は大きく変わることはありませんでしたが、16世紀になり大航海時代が始まると、南半球でしか見えずに今まで発見されることがなかった星座が多数見つかりました。大航海時代を過ごした貴族や航海士は次々と新しく見つかった星座に形を見出して名前をつけていきました。中には「フリードリヒのえいよ座」といった当時の権力者を讃えるための星座もいくつか作られたといいます。この時作られた星座の多くは現在消えていますが、それぞれ当時の歴史や、時代の興奮を垣間見ることができます。現在も残る八分儀座やカメレオン座といった名前にも、大航海時代当時の発見と驚きを感じることができます。

 

20世紀に入って世界的な国際協調が強まると、天文の分野でも世界の協力関係が出来上がってきます。世界中の天文学者が集い国際天文学連合(IAU)が生まれると、トレミーの48星座と、乱立していた南天の星座から選びまとめたものを合わせて88星座とし、IAU方式の88星座が生まれました。

 

こうして西洋の星座は現在に繋がっていますが、中国では古代からまた違った星座が伝わっていました。古代中国では星座のことを「星官」と呼び、実に数百の星座が空に描かれていました。古代中国には1つや2つといった少数の星で構成される星座が多くあり、星座の数も多かったと言います。中国も、黄道十二星座と同じく黄道に28の星座を置いた「二十八宿」を置き、更にこれらを東西南北の「四神(四象)」として4つの方位に割り振りました。東西南北の四神にはそれぞれ青龍、白虎、朱雀、玄武という伝説上の獣神の名前があてられ、これらの星々は当時政治にも大きな影響を与えた占いでも重要視されてきました。こうした経緯から、ギリシャから伝わったものとは別の名前がそれぞれの星に与えられており、現在も、中国では古代伝統的な名前で星を呼ぶことも少なくありません。

 

また、オーストラリアやニュージーランド、アメリカの先住民族等でも独自の星座があり、それぞれ違った神話も伝わっています。人類は皆星に意味と形を見出し、名前をつけて眺めていました。現在は消えてしまったものも含め、星座は人類の歴史そのものであると言えるかもしれません。

空に見出す「アステリズム」

長い歴史の中で姿かたちを変えて伝わってきた星座ですが、複数の星から見出すパターンの中には、星座とはまた違ったものもあります。このように星座とは違う、星で描かれるパターンを「アステリズム」と言います。

アステリズムは星座とは違い、一部を除き国際天文学連合から認められていない星の集まりで、複数の星座にまたがって存在するものや、星座の一部を切り取ったような形のものが多くあります。実際には力学的な関係性がないのは星座と同じです。とはいえこうしたアステリズムも様々な美しい形が見出されており、中には神話と関連付けられるようなものもあります。

中でも有名なのは「北斗七星」です。北斗七星は現在のおおぐま座の腰から尻尾の部分を構成する7つの明るい星のことで、「ひしゃく」のような特徴的な形から、世界中で様々な神話が伝わっています。

おおぐま座の画像
画像下のおおぐまの腰から尻尾にあたる部分に、「ひしゃく」型の7つの星、「北斗七星」が見える

 

「夏の大三角」もまた有名なアステリズムの一つです。夏の大三角はそれぞれ、わし座のアルタイル、こと座のベガ、はくちょう座のデネブという、それぞれの星座の中でも特に明るい一等星で構成された三角形型のアステリズムです。このアステリズムはそれぞれ「七夕」の伝説に関わる星々で、アルタイルは「彦星(牽牛)」、ベガは「織姫」にあたる星で、2つの星の間には天の川がかかっています。年に一度、彦星と織姫は再会するというのが七夕伝説ですが、この2人を引き合わせるために「かささぎ」という鳥が群れで橋を作ったと言います。そのかささぎが、はくちょう座のデネブです。夏の大三角は、夏に美しく見える天の川がかかる位置にあり、夏を代表するアステリズムです。

北斗七星や夏の大三角のようなアステリズムは明るい星で構成されるものが多く、星座よりも形を見出しやすいです。初めて天体観察をする際には、明るくて大きいアステリズムを見つけてみるのも良いかもしれません。

夏を代表するアステリズム、夏の大三角
右下から時計回りの順に、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ、こと座のベガ

 

今回は空に見える「星座」や「アステリズム」を紹介しました。我々人類は遥か昔から星に特定のパターンを見出して図を描き、神話を唱えて過ごしてきました。そしてそれは現在の88個の星座や、多くのアステリズムに繋がっています。皆さんも時には星座を見上げて、人類が歩んできた物語に思いを馳せてみませんか? もしくは大航海時代の航海士たちのように、自分だけの星座を描いてみても良いかもしれません。

 

<参考>

IAU – The Constellations
https://www.iau.org/public/themes/constellations/

 

天文学辞典 – 星座
https://astro-dic.jp/constellation/

 

Stellar Scenes – 中国二十八宿を星座にたどる
https://stellarscenes.net/seiza/china28/index.html

 

SPACEMedia編集部