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【前編】オリオン宇宙船の3人の「搭乗者」？月に向かうマネキンたち。 - SPACE Media

【前編】オリオン宇宙船の3人の「搭乗者」？月に向かうマネキンたち。

公開日：2022年09月26日

アメリカの有人月探査ミッション「アルテミス１」ミッションは、SLSロケットやオリオン宇宙船の無人飛行試験です。しかし実は、3人の「搭乗者」がオリオン宇宙船に乗り込んでいます。今回は前編と後編に分けて、3人の「搭乗者」を解説します。

1 3人の「搭乗者」の正体とは？
2 マネキンの「船長」！？〜Commander Moonikin Campos〜
3 おわりに
- 3.1 SPACE Media アルテミス計画関連記事
- 3.2 参考文献

3人の「搭乗者」の正体とは？

船内服を着たCommander Moonikin Campos　（Credit: NASA/Ben Smegelsky）

3人の正体は、なんとマネキンです。マネキンといえば、アパレル店によく置いてあるのを見たことがあるでしょう。しかし、このミッションで使用されるマネキンは特殊な仕様で、センサーや計測機が取り付けられており、宇宙飛行士が乗り込んだときに感じる振動や加速度、放射線などを計測します。

さらにオリオン宇宙船に搭載されるマネキンのうち、２体はトルソー（torso）と呼ばれる胴体だけのマネキンです。

3人の「搭乗者」が計測したデータは、アルテミス２以降の有人宇宙飛行ミッションの参考に用いられるということです。宇宙飛行士が感じる振動や加速度などを軽減する狙いがあると考えられます。

マネキンの「船長」！？〜Commander Moonikin Campos〜

前編で紹介するマネキン「Commander Moonikin Campos」は、オレンジ色の船内宇宙服を着用しており、オリオン宇宙船の船長（コマンダー）の座席に置かれます。このオレンジ色の宇宙服は、「Orion Crew Survival System Suite」と呼ばれており、宇宙船の打上げおよび帰還時に宇宙飛行士が着用する船内服として開発されました。

気になるマネキンの名前は少し長いですが、一単語ずつに分けると意味が見えてきます。
・Commander：コマンダー（船長）
・Moonikin：ムーンキン（NASAは月にちなんでmanikinを文字ってこのように呼ぶ）
・Campos：公募で選ばれた人名。NASAの電気技師だったArturo Camposから命名された。

マネキンがミッション中に受ける加速度や振動を記録するセンサーは、様々な場所に取り付けられています。

まず、座席のヘッドレストの下と座席下部にあります。さらに、船内服には2つの放射線測定センサーが備えられており、宇宙飛行士が浴びる放射線量を測定することになります。この他にも5つの追加加速度計がマネキンの座席上部と座席下部の間の振動と加速度を比較しデータを測定します。このデータはNASAのラングレー飛行センターで実施された着水時の水衝撃を測定する試験で計測されたデータと比較されるということです。

オリオン宇宙船に搭載されたマネキン（Credit: NASA/Frank Michaux）

オリオン宇宙船は、新型宇宙船のため実運用の際に、どのような加速度や振動を受けるか分からない部分が多くあります。打上げ前に宇宙船の精巧なモデルを作り、実験を重ねて、データも取得します。アルテミス１ミッションでも実験は多く実施され、搭載されるマネキンは地上で実施された試験にも数多く参加してきました。例えば、打上げ時に飛行士へかかる重力をシミュレーションする加速度試験や振動試験、着水時の水への衝撃試験などです。地上でマネキンが得たデータと宇宙へ行った際のデータを両方取得し、比較することで、様々な改良点が見えてきます。このデータは有人宇宙飛行の1回目である「アルテミス２」へ向けて活かされます。