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人類がもう一度月面着陸するための無人飛行ミッション「アルテミス1」がいよいよはじまる!

Credit:​​​​​​​​NASA/ Joel Kowsky

2022年9月2日(金)以降、全長98mの「SLS(Space Launch System)」ロケットがケネディー宇宙センターから打上げられる予定です(※)。人類を約50年ぶりに月に着陸させることを目的としたアルテミス計画初のミッション アルテミス1」がいよいよ始まります。この記事では、打上げから帰還の流れを説明します。

アルテミス1ミッションは、SLSロケットとオリオン宇宙船(オライオン宇宙船ともいう)の無人飛行試験です。SLSロケットは、2011年に構想が発表されて以来、初めての打上げとなります。

SPACE Mediaではアルテミス計画に関する記事を複数公開しているので、合わせてお読みください。

※当初は、2022年8月29日21時33分(日本時間)に打上げが予定されていましたが、エンジンに問題が発見され、延期に至りました。
※続いて9月下旬はハリケーンの影響で延期に至りました。

記事:
「SLS(Space Launch System) -月へ飛び立つ超巨大ロケット」
  https://spacemedia.jp/technology/1082
「Orion(オリオン宇宙船)―人類を約50年ぶりに月へー」
  https://spacemedia.jp/technology/1124

打上げ

SLSロケットの打上げイメージ図
Credit: NASA

SLSロケットは、フロリダ州にあるケネディー宇宙センター39B発射台から打ち上げられます。この発射台は、アポロ計画やスペースシャトルの打ち上げで使用された歴史を持ちます。

発射台を離れたロケットは、コアステージに接続されている4機の「RS-25」エンジンと固体燃料ブースターにより、宇宙へ。打ち上げ2分後に固体燃料ブースターを分離し、8分後にコアステージのエンジンを停止させ、分離します。

その後は、月遷移軌道投入(TLI: Trans-luner Injection)を実施し、オリオン宇宙船は「ICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)」と呼ばれる宇宙船を正確に投入するためのエンジンを用いて、月遷移軌道へ投入されます。そして約17分間、ICPSの燃焼が続けられ、停止後、宇宙船とICPSの分離が行われます。

SLSロケットの打ち上げから分離を表した図
Credit: NASA

月への飛行

月を周回するオリオン宇宙船の想像図
Credit: NASA

オリオン宇宙船とICPSの分離後、SLSロケットは搭載されている10機の超小型衛星(キューブサット)を放出します。衛星の中には、日本が開発した「OMOTENASHI(オモテナシ)」と「EQUULEUS(エクレウス)」も含まれています。

打上げ2〜5日後は、宇宙船の月への飛行が続けられ、地上では宇宙船のシステムが正常に作動しているかチェックします。

そして、6〜9日目に月の「DRO(Distant Retrograde Orbit軌道」へ近づいていき、10日目にDRO軌道へ投入されます。12日間の周回を経て、打ち上げから24日目にDRO軌道を離脱する予定です。

「DRO」という言葉は、あまり聞き馴染みがありませんが、NASAは次のような解説をしています。

D=Distant:月面から高い高度

R=Retrogate: 月の公転方向と反対に移動すること

DRO軌道を日本語に訳すならば、「高高度逆行軌道」とするのが一番理解しやすいかもしれません。この軌道は、宇宙船の燃料をほぼ必要としないメリットがあり、加えて安定性もあるということです。

NASAは打上げから帰還までの軌道を表した図を公開しています。(下図)
緑色の線は地球から月への軌道、灰色の線は月周回中の軌道、青色の線は月から地球への軌道を表現しています。

地球への帰還

パラシュートを広げて地球へ帰還するオリオン宇宙船
Credit: NASA

打上げ後35〜42日後、オリオン宇宙船はフライバイを行い、地球へ近づきます。
オリオン宇宙船は、地球の大気に40,000kph※で突入します。
そして地上7.6kmで、まず2つの減速用パラシュートを展開し、続けて3つのパイロットパラシュートを展開することで、32kphまで減速させます。
パラシュートの動作・性能試験に加えて、宇宙船を大気圏突入時の高熱から守る「ヒートシールド」の性能確認も行われます。宇宙船の表面温度は2800度にもなります。

※kph:1時間に何km進むかを表す速度の単位

着水と回収

海上に着水するオリオン宇宙船
Credit: NASA

オリオン宇宙船は、アメリカ・サンディエゴ沖に着水し、アメリカ海軍の船で回収されます。ケーブルを宇宙船本体に引っ掛けて、船の「ウェルドック」と呼ばれる部分に格納されます。そして、アメリカ海軍サンディエゴ基地へ行き、ケネディー宇宙センターへ輸送されます。

アルテミス1はSLSロケットやオリオン宇宙船などを使った初めてのミッションとなります。アルテミス1ミッションが全ての試験基準を満たした後、第2段階の有人飛行試験「アルテミス2」へと移行します。そして2025年には、半世紀ぶりの人類の月面着陸となる「アルテミス3」が予定されています。

Go Artemis !

参考:Artemis I press kit  https://www.nasa.gov/specials/artemis-i-press-kit/