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宇宙旅行をより身近で安全なものに – 気球で目指す宇宙 株式会社岩谷技研

2021年12月8日、ZOZO創業者の前澤友作氏が日本の民間人としては31年ぶりに宇宙旅行へ飛び立ちました。

宇宙旅行は今、国内だけでなく世界中でホットなトピックとなりつつあります。現在計画されている多くの宇宙旅行はロケットや宇宙飛行機(スペースプレーン)の利用が想定されています。

そのような中で、独自の技術で”高高度ガス気球”による宇宙旅行の実現を目指しているのが、株式会社岩谷技研です。今回は、同社の取締役社長 岩谷圭介氏に宇宙旅行にかける熱い思いをお聞きしました。

 

ガス気球を用いて実際に宇宙から撮影された地球

独自の結露防止技術でフライト全行程における高精細な撮影が可能となっている

 

■目次

(1)株式会社岩谷技研とは

(2)NearSpaceからの宇宙旅行とは

(3)気球での宇宙旅行の魅力

(4)宇宙旅行で人々の意識や視野を広げる

 

(1)株式会社岩谷技研とは

株式会社岩谷技研(以下、岩谷技研)は、北海道の札幌市に本社を持つ旅客技術開発会社です。

 

岩谷氏は2011年から宇宙旅行プロジェクトの開発をスタートし、2013年には風船での宇宙撮影に成功しました。その後、2016年に会社を設立。2018年には熱帯魚の「ベタ」を成層圏に打上げ生還させるという生物実験に成功し、さらに2021年5月には無人キャビンの打上げに成功しました。

 

岩谷技研は独自の技術でさまざまな特許を取得し、宇宙関連の研究開発や宇宙旅行の装置開発、宇宙撮影などの事業を行っています。

 

(2)NearSpaceからの宇宙旅行とは

宇宙旅行と聞くと、ロケットでの打上げをイメージする方が多いと思います。

そんな中、岩谷技研は高高度ガス気球、並びに旅行用気密キャビンを設計・開発し、気球による「NearSpaceからの宇宙旅行」を目指しています。

 

岩谷氏曰くNearSpaceからの宇宙旅行は「単に地球の大気圏外に広がる空間に人を運ぶことではなく、宇宙へ行くことによって人々の意識や視野が広がる宇宙旅行」を意図しながら開発を進めているそうです。

 

では、なぜ気球での宇宙旅行を開発しようと思ったのか、その理由を岩谷氏は次のように語ります。

(以下、岩谷氏)

「もともと宇宙に興味があったため大学で航空宇宙工学の研究室に入りましたが、ロケットを開発し打上げるということがいかに難しいことかを痛感しました。そして他の手法を探していた時に、気球ならば実現可能性が高いのではないかと見出しました。」

 

実験を行っている岩谷氏

 

ロケットの開発は難しいと壁にあたりつつも、諦めずに別の方法を見つけだしたという岩谷氏の姿からは宇宙技術の開発に対する熱い思いが伝わってきました。

 

(3)気球での宇宙旅行の魅力

ロケットと気球での宇宙旅行はどのような点が異なるのでしょうか。

 

ロケットの宇宙旅行では実現できないことが、気球では実現可能であると岩谷氏は語ります。

(以下、岩谷氏)

「ロケットでの宇宙旅行とは異なり、ゆっくりと上空へ浮上していくため景色を楽しむことができます。

また気球の場合、ロケットと比べ気候条件の制約が厳しくないため比較的打上げ可能な環境になりやすいというのが強みではあります。誰でも乗れる宇宙旅行をロケットで実現するのは非常に困難ですが、気球ではそれが可能という点が大きな違いです。

また、安全面においても、現在の宇宙旅行で使われているロケットの死亡率が約3%で、緊急時の脱出方法が一種類しかないのに対し、気球は死亡率 0.001%以下となっています。」

 

現在、気球での宇宙旅行の実現に向けて開発を進めているのが高高度ガス気球と旅客用キャビンです。高高度ガス気球はプラスチックでできており、今まで気球は重量15kgが限界と言われていた中で、耐荷重は数百kgとなっています。

 

またキャビンは、人が乗って宇宙に行っても無事に地球へ帰還することのできる耐久性のある容器を製造し、気温変化や気圧変化の少ない快適なキャビンを目指しています。

 

2018年に同社が行った生物実験で熱帯魚を実際に打上げました。実験時の水温の温度変化は1度以下。また通常、飛行機は約10%~20%の気圧変化がありますが、今回の実験では1%以下という結果を得ることができました。

 

打上げられた熱帯魚の「ベタ」-NEAR SPACEで撮影されたもの

 

また、これらの開発を独自の技術で行っているのが同社の強みであると岩谷氏は語ります。

(以下、岩谷氏)

「設計・製造・運用を一貫してできるのは国内で唯一、世界で見ても非常に珍しいです。

もともと風船で宇宙撮影を成功させる技術は持っているので、残りは高高度ガス気球とキャビネットの開発をするのみとなっています。これらもただ全く新しいものを開発するのではなく、今現在持っている技術の延長線上にあるので、それほど遠くない未来で宇宙旅行の実現が可能になるはずです。

作り上げるところまでは可能ですが、安全に運用するという面で時間がかかるのではないかと予想しています。しかし、気球での宇宙旅行実現のための技術を全て持ち、自社のみでつくれることが同社の強みになっています。」

 

開発が進められているプラスチック気球の打ち上げ風景

 

(4)宇宙旅行で人々の意識や視野を広げる 

将来的には世界中に波及させ、誰もが体験できる宇宙旅行の実現を目指している岩谷技研。

最後に、宇宙旅行を実現し利用者にどのような体験をしてもらいたいのか、岩谷氏の熱い想いを伺いました。

 

(以下、岩谷氏)

「一般の方々に実際に宇宙に行ってもらい、自分自身で景色を見て、素晴らしい体験をしてもらいたいです。

我々はその機会を提供するまでしかできません。実際に体験をした人は自ら変化し、視野が広がるはずです。私たちはその変わるきっかけをつくりたいと思っています。

 

また、弊社では一緒に仕事をする情熱のある人を募集しています。気になった方は、ぜひ下記サイトのお問い合わせ欄よりご連絡をお待ちしております。」

岩谷技研HP:https://iwaya.biz/

 

岩谷圭介氏
PhotoCredit: 株式会社岩谷技研



SPACEMedia編集部