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日本は「宇宙法」の先進国になれるか? – 日本スペースロー研究会 北村尚弘

近年、宇宙開発業界は民間企業の参入が相次いでいます。その勢いは、国家主導の宇宙開発を凌ぐほどです。

 

そんな宇宙ビジネスを進めるには、資金や人材が重要なことはもちろんのこと、法律への理解も不可欠です。例えば、ロケットを打ち上げる際には、法律で、安全基準を満たしたものだけに許可を与えることとされています。

 

今回はそんな「法律」の面から日本の宇宙ビジネスを支援する団体「日本スペースロー研究会」の代表・北村 尚弘氏からお話を伺い、宇宙ビジネスと法律との関係に迫ります。

 

■目次

(1)宇宙法とは

(2)宇宙ビジネスを支援する「日本スペースロー研究会」

(3)宇宙法制定の重要性と課題

(4)宇宙法で発展する宇宙ビジネス

 

(1)宇宙法とは

宇宙に関する法律の総称を「宇宙法」と言います。

実は「宇宙法」はそのような名称の法律があるわけではなく、世界各国が定めている宇宙に関するルールをまとめた条約、国連決議、声明、法律などが、まとめて「宇宙法」と呼ばれています。

 

宇宙ビジネスを行おうとする事業者は、当然法律で規制されている事業を行うことはできないため、宇宙法の存在はとても重要なものになります。

 

日本で、月の鉱石を用いた事業を行おうとしている企業があるとします。

そのためには国内事業者が月の資源の探査・開発を行う際のルールを定めた日本の法律が必要で、この法律がない国ではそのような事業を行って良いのか否かすらわからず、事業化に向けて本格的に動き出すことはできません。

逆に言うと、そのような法律が制定されている国では、その法律の範囲内で月の資源を採掘して活用するような事業を行えるということになります。

 

小惑星探査機「はやぶさ2」Credit:JAXA

 

このように、宇宙法の充実は宇宙ビジネスの発展において重要な役割を担います。

同時に宇宙法が充実している国ほど幅広い宇宙ビジネスを行うことができる国ということであり、国内の宇宙産業の活性化や、海外からの宇宙開発事業者誘致における重要なテーマとなるのです。

 

(2)宇宙ビジネスを支援する「日本スペースロー研究会」

宇宙ビジネスを取り巻く法的問題・課題等についての研究・支援するために弁護士有志で立ち上げられた団体が「日本スペースロー研究会」です。宇宙ビジネスに関心のある弁護士の方々が所属し、宇宙と法律に関する勉強会やセミナーを開催しています。

 

日本スペースロー研究会は、北村氏がJAXAでのインターンを発端に、法律を使って、弁護士という立場から宇宙ビジネスをサポートしようと、宇宙ビジネスに興味がある弁護士仲間と集まったことがきっかけで設立され、現在に至るまで、宇宙ビジネスプレーヤーと法律・法制度との橋渡し役として活躍しています。

 

日本における宇宙法はまだまだ発展途上にあり、宇宙法の知識を持つ弁護士も国内では多いとは言えません。宇宙法に理解がある弁護士の方々との橋渡しは、宇宙ビジネスを行う人々にとってはとても貴重なものであると言えます。

日本スペースロー研究会HP<https://japan-space-law-association.org/>

 

(3)宇宙法制定の重要性と課題

このように宇宙法の舞台で活動する日本スペースロー研究会ですが、代表の北村氏は、宇宙法が国内の宇宙ビジネスに大きな影響を与えるとする一方で、国内では宇宙法について課題もあると語ります。

 

例えば2021年6月に、国内の民間企業が宇宙天体の資源を所有することを認める「宇宙資源法」を、日本が世界で4番目に成立させました。

これは月面や火星に存在する宇宙資源を活用した事業を行う宇宙ビジネスを日本に拠点を置く企業が行えるという事であり、宇宙資源法が成立していない他の国よりも、宇宙資源を用いたビジネスを行える点においては有利です。宇宙資源を活用したビジネスを行いたい他の国の企業が、日本に拠点を置く可能性もあります。このように、宇宙法は他国との競争という視点から見ても重要なもので、いかに様々な宇宙法を成立、充実させていくかが重要となってきます。

 

しかし、そうした宇宙法を成立させる際にも課題はあります。

法律を成立させるには国会に法案を持ち込んで議論し可決しなければいけませんが、法案を国会まで持ち込むのが日本では難しいのが現状です。

日本において法律が出来るまでの流れ(SPACE Media作成)

 

例えば、アメリカでは、実際に事業を行っている最中に必要に迫られてからというよりも、それ以前に法律を充実させようという動きが多く、事業を実際に行うかに関わらず事前に法を成立させようという傾向にあります。また、アメリカでは個人や団体によるロビー活動が盛んで、個人・団体と議員との交流の場が多いため、法制定についての議論がとても早いタイミングで始まります。

 

一方、日本は事業を進める中で、法制定が必要になってから議論が始まるのが主であり、アメリカに比べて法制定の議論が始まるタイミングが遅いというのが課題です。さらに実際に法制定に動くためには立法との繋がりが必要ですが、宇宙開発事業者が必要に迫られた場合は、国会議員と繋がりを持って働きかける必要もあります。

事業を始めてから法の壁に当たり、そこから動き出しては、法制定までに長期間かかる可能性もあります。事前に素早く法制定を行える環境があるかどうかも、宇宙ビジネスの発展に大きな影響を与える課題になりそうです。

 

(4)宇宙法で発展する宇宙ビジネス

技術・開発とはまた違う難しさや課題がある宇宙法ですが、そうした課題の解消のために、日本スペースロー研究会をはじめとした団体や弁護士の方々が国内で活躍しています。

 

北村氏も、宇宙法の充実と宇宙ビジネスの発展について、以下のように述べています。

「宇宙法の内容は基本的に各国横並びになりがちであるが、そもそも、法律が制定されているかが大事。
今後宇宙開発企業の誘致などでは、宇宙法の充実度合いによって企業が来るかが決まる。
宇宙開発の発展には技術だけでなく法律への理解も大切なので、是非多くの人に目を向けてほしい」
技術開発が注目されがちな宇宙ビジネス業界ですが、宇宙法にも注目して、今後の宇宙ビジネスの発展を考えていきたいところです。


K.Imanishi