モデルロケット、リフトオフ!-今日からあなたも、ロケット研究者-

宇宙開発においてロケットというのは特別な存在です。現状、人類が宇宙へ到達するのに欠かせないものであり、轟音と共に真っすぐと飛ぶその光景は、多くの宇宙好きの憧れでもあります。そんな人々は時にこう思うこともあるかもしれません。

 

「ロケットを自分で作って打ち上げてみたい」と。

 

しかしロケットはあらゆる技術が詰め込まれた物であり、ロケットを作って、ましてや打ち上げるというのはとても困難なことのように思えます。そんな夢を、簡単に叶えることができる物があります。それが「モデルロケット」です。

 

「モデルロケット」とは

モデルロケットとは、アメリカで生まれた、教育等を目的とした小型ロケットの総称です。その一番の特徴は、モジュール化され、簡単に購入できるものは花火と同じ玩具煙火扱いである市販のロケットエンジン(モデルロケットエンジン)で飛行することであり、危険物取扱に関わる法令の関係でロケット作りの大きな障害となっていたエンジンの問題をクリアしています。モデルロケットは、取り扱いについて学び、発射に必要な装置と機体とエンジンを用意すれば誰でも簡単に打ち上げることができる、夢のようなロケットなのです。

 

モデルロケットの打ち上げは、ロケットにエンジンを挿入し発射台にセット、遠くから発射装置を使って点火し打ち上げ、一定の高度に到達した後、パラシュートを展開して降下・着陸するという流れで行われます。エンジンは火薬ですが点火には電流を流す方式の発射装置を用いるため、火を直接扱いません。更にモデルロケットは紙や木、プラスチックを使って作ることが決められており、金属等を用いないため、周囲の安全を確認し広い場所で打ち上げを行えば、安全な打ち上げが可能になっています。

 

簡単かつ安全な打ち上げが可能ですが、最も基本的なエンジンで数十mまでロケットを打ち上げることができ、より強力なエンジンを用いれば数百mの高度までロケットを到達させることができます。同じエンジンを用いても機体の設計・構造によって到達できる高度等は大きく違ってくるため、打ち上げには機体の設計も大きく影響してきます。そのシンプルながら奥が深いモデルロケットは、NASAJAXAでも宇宙教育用の教材として認められているほか、高校や大学における宇宙開発系の部活・サークルでも代表的な活動としてモデルロケットの製作・打ち上げが行われています。

発射台にセットされ、打ち上げ体制に入ったモデルロケット。
Credit:北海道情報大学 宇宙開発研究会)

 

モデルロケットによる様々な活動

日本におけるモデルロケット活動の主なプレイヤーとして、航空宇宙系の学生が多くいます。毎年いくつかの地域で、学生が多く参加するモデルロケット大会が行われており、最大到達高度を競う「高度競技」、打上げ後パラシュート等で降下し発射点から最も近い場所にロケットを着地させる「定点着地競技」などが行われ、他にも大会によって様々な競技が設定されています。モデルロケットは大会等に向けて創意工夫を凝らし、ルールに則って競い合うことができるスポーツの側面もあります。

 

モデルロケットは娯楽や競技だけでなく、実用的に用いることもできます。その代表的な例として「CanSat(缶サット)」活動における役割があります。CanSatは、探査機のようにあるミッションを達成するために作られる、小型で宇宙へは行きませんが宇宙教育を目的とした模擬人工衛星で、モデルロケットと並んで航空宇宙系の部活やサークルの主な活動として知られています。このCanSatは原則として競技や実験の際には高空から放出されパラシュート等で降下する必要がありますが、このCanSatを一定の高度に運ぶために、大型もモデルロケットが多く用いられています。

 

他にも、日本では法令の関係で高高度に到達するような強力なエンジンによる打ち上げをアマチュアが実施するのは難しいですが、観測装置を積んで高高度での実験を行うこともできます。カメラを積んで空撮を行うこともでき、本物の観測ロケットのような働きをすることもできます。

 

モデルロケットは娯楽だけでなく、一種のスポーツとして、更に極めれば立派な実験装置として、様々な役割を果たすことができるのです。

パラシュートを開き、着陸したモデルロケット。
高度計測機の実験に使われたもので、機体に計測装置がつけられている。
Credit:北海道情報大学 宇宙開発研究会)

 

モデルロケットの魅力

モデルロケットの大きな魅力は、ロケットが持つスピード感や打ち上げることの達成感はそのままに、安全だけどどこまでも拘りを持ちながら、モノを作り目標を達成する感動を呼び起こせることにあります。

 

一口に「モデルロケットを作る」と言っても、その手段も目的も様々であり、機体を細部まで自作する場合には沢山のアイデアも生まれてきます。より重く高い高度を飛ぶロケットを作る際には、ロケットを2つ重ねた2段式にする、ロケットエンジンを複数束ねたクラスター式にする、機体の素材を変えて極限まで軽量化するなど、その手段は様々です。

目標を達成するためにロケットを飛ばすにはどのような機体を設計し、それを作るためには何が必要か……そういった、一つの目標のために設計・計画し、実際に手を動かして作り、そして打ち上げるという一連の「科学的体験」を楽しく、刺激的にできるモデルロケットは、宇宙開発や科学の魅力を感じられる、理想的な教材であると言えるかもしれません。

 

モデルロケットの詳細な構造や打上げ方法は、日本でモデルロケットの普及活動を行っているほか、ライセンスの発行を行っている「特定非営利活動法人 日本モデルロケット協会」のホームページで詳しく解説されています。

 

現在、モデルロケットエンジンや、発射装置を含むスターターキット等はインターネットを通して購入可能です。組み立てればモデルロケットの機体が完成するキットも販売されており、工作が苦手な方でも簡単に始めることが可能です。

ルールを守れば安全に宇宙開発の興奮を体験することができるモデルロケット、皆様も一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

メイン画像Credit:北海道情報大学 宇宙開発研究会


SPACEMedia編集部