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「宇宙利用」が広げるビジネスチャンス 宇宙環境利用のビジネス事例とアイデア集

国際宇宙ステーション(以下、ISS)の退役が迫る中で、民間企業による商用宇宙ステーションの計画が進んでいます。

ISS建設が考案された1984年から今日までの約40年の間、ISSではさまざまな実験が行われてきました。宇宙飛行士たちがさまざまな実験を行っているのをニュースなどで見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか?

長年親しまれてきたISSですが、NASA(アメリカ航空宇宙局)はISSの運用を2030年末まで継続した後、太平洋に落下させる計画を発表しました。そして現在、ISSの後継として活躍が期待される、民間企業による複数の商用宇宙ステーションの構築構想が着々と進んでいます。

もともと医学やバイオテクノロジーの分野では高品質なタンパク質の結晶化をはじめとする宇宙実験などで宇宙利用が進んでいましたが、商用宇宙ステーションが増えることで、宇宙に人が行くことが当たり前になる時代を見据えた生活インフラの整備が進み、人が宇宙空間をより楽しむためのエンタメも増えることが想定されます。

本記事では、宇宙利用の可能性について「医学・バイオ」「資源開発・エネルギー」「生活インフラ」「エンタメ」の4つに分類して事例と合わせて整理しているほか、ISSの歴史や今後の民間宇宙ステーション事業に参入するプレイヤーについても整理しています。

※ 本記事における宇宙利用の定義は、未来の宇宙ステーションを構想し、宇宙空間に宿泊施設や実験室、エンタメのための部屋といったさまざまなスペースや機能が拡張されることを想定したうえで利用できるようになること、また、そのために必要なビジネス、さらには、宇宙をテーマとした地球上で展開されるビジネスも含みます。

目次

宇宙ビジネス全体と非衛星産業の市場規模、今後の予測

はじめに、宇宙ビジネスの市場規模と予測を紹介します。合わせて、宇宙利用に関する市場規模も紹介していますので、本記事を読む際の参考としてください。

宇宙ビジネスの市場規模は2021年時点で約43兆円*となっています。
その主な内訳としては、通信機器・衛星測位システムなどの地上設備が約14兆2,000億円、通信やリモートセンシングなどの衛星サービスが13兆6,000億円、宇宙利用や惑星探査などの非衛星産業が約8兆3,000億円と続きます。

*(注)1ドル=109.8円で計算(2021年平均仲値)

モルガン・スタンレーは、2040年の宇宙ビジネス全体の市場規模は現在の2倍以上、100兆円を超えると予測しています。

同レポートでは、民間の宇宙ステーションの台頭がどこまで寄与するかまでの内訳は明らかにされていませんが、宇宙利用含む非衛星産業の市場規模は2040年までには約12兆円を超え、現在の1.5倍になると予測されています。

現在進行している計画では、2040年は商用宇宙ステーションの数も両手で数えられるほどで、月面に常時滞在する人数も10,000人に満たない程度と考えられます。それでも20年で4兆円以上市場規模が拡大するという予測であるとも捉えられます。

ISSの退役と商用宇宙ステーションの台頭

ISSの最初のモジュールが打ち上げられたのは1998年でした。以来、モジュールや部品が40数回に分けて打ち上げられて宇宙空間で組み⽴てられ、ISSは2011年7⽉に完成しました。アメリカ、日本、欧州各国、ロシアの15カ国が協力して宇宙活動の拠点として運用されています。

ISSは高度約400km付近を回っており、高度2,000km以下で地球を周回する軌道を「地球低軌道(LEO:Low Earth Orbit)」と呼びます。

ISS計画の始まりは、NASAがスペースシャトル計画に続く取り組みとして1982年に議論を始めたことでした。検討が本格化したのは、1984年に当時のアメリカ大統領ロナルド・レーガンが「⼈が⽣活することのできる宇宙基地を、10年以内に建設する」という発表を⾏ったためとされています。

本記事でも詳細を後述しますが、これまでにISSには多くの宇宙飛行士が滞在してさまざまな宇宙実験を実施し、多くの成果を残しています。

しかし、ISSは当初の設計寿命を大幅に超え、補修しながら運用が続けられています。たびたび運用の延長が合意されてきましたが、NASAがISSを2030年末で退役させる計画を発表しました。追随する形で日本も2030年までの運用延長への参加を発表しています。日本が運用延長に参加する理由としては「国際宇宙探査(アルテミス計画)で必要となる技術の獲得・実証の場として不可欠」「将来の地球低軌道における民間活動の拡大のための準備機会を提供し得る」などが挙がっています。

では、ISSが退役した後、人々は地球低軌道へのアクセスを失うのかというとそうではありません。

これまでは各国が宇宙ステーションを運用するという立場でしたが、今後は民間企業が宇宙ステーションを運用し、各国の宇宙機関(現時点ではアメリカが言及)は利用者として宇宙ステーションを活用する立場に変わっていくとみられます。

アメリカでは2029年から2030年の2年間をISSから民間宇宙ステーションへの移行期間と位置づけ、民間宇宙ステーション構想を掲げるアメリカの民間企業4組を選定し、開発に向けた支援を開始しています。

【参考リンク】

宇宙空間がもたらすビジネスの可能性と未来予想図

宇宙利用に今後注目が集まると考えられる理由は、大きく分けて以下の3つです。

  1. 微小重力環境という特殊な環境
  2. 商用宇宙ステーションが複数できる将来計画
  3. 宇宙に行く人が増える

微小重力環境という特殊な環境

例えば、高品質なタンパク質の結晶化実験について、聞いたことがある人も多いでしょう。微小重力環境では、密度差などによる流れ(対流)が起こらない静かな環境で結晶化が安定して進みます。流れに乗って不純物が結晶に取り込まれることも少ないため、結晶中で分子が規則正しく並んだ、品質の良い結晶ができる傾向があります。

後述しますが、高品質で安定した結晶化の実現は、新たなウイルスの構造を早期解明することによるワクチン開発、安全性の高い農薬の開発、歯周病の原因の解明による治療薬の開発など、地上で生活する人間の健康に寄与可能性を多く秘めています。

※ 宇宙と聞くと無重力という言葉を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかしながら、実はISSは無重力環境ではなく、微小重力環境です。詳細はこちらをご参照ください。

【参考リンク】

商用宇宙ステーションが複数できる将来計画

現在、宇宙空間にある宇宙ステーションはISSと中国の独自の宇宙ステーション「天宮」の2基です。

しかしながら、前述のとおり、宇宙ステーション建設に複数の民間企業が乗り出しており、宇宙ステーションで同じ期間にできることの数は増えることが想定されます。

また、ISSにはなかったような設備や空間そのものの広さの実現によって、できることの幅も広がるかもしれません。

宇宙に行く人が増える

これまで、宇宙ステーションは各国の選抜試験をくぐり抜けた精鋭の宇宙飛行士か、大金を手にした一部の人のみが行ける場所でした。

しかしながら、今後はロケットの打ち上げ価格が下がることで、宇宙に行ける人の幅も広がり、旅行目的で宇宙を訪れる人が増え、将来的には仕事で宇宙に出張するという人も現れるかもしれません。

では、どのような宇宙利用の可能性があるのでしょうか?

具体的にどのような宇宙利用に関するビジネスチャンスがあるのか、下記のイラストにまとめました。

Credit: SPACE Media

イラストにもある通り、本記事では、宇宙利用の可能性を「医学・バイオ」「資源開発・エネルギー」「生活インフラ」「エンタメ」の4つに分類しました。

次章以降では、それぞれの分野についてどのような事例があるのかを紹介します。ご自身の仕事でチャンスと思える分野があれば、参入の検討をしてみてはいかがでしょうか?

宇宙利用事例解説:医学・バイオ

まずは医学やバイオテクノロジー(以下、バイオ)に関する宇宙利用について紹介します。

ここでは、高品質なタンパク質の結晶を生成する実験をはじめ、宇宙空間の特徴を活かした研究や宇宙滞在が人の身体に及ぼす影響を調べる研究、宇宙開発の進歩によって生み出された技術が地上の医学・バイオテクノロジーの発展に応用されている事例を紹介します。

医学・バイオ分野での宇宙利用については、すでに一部実験が進んでいるものも多くあります。そのため、どのような実験なのか「概要」「ニーズ・宇宙空間である理由」「今後の展望」の3つに分けて紹介します。

宇宙空間での研究

ヤクルトに含まれる乳酸菌は宇宙でも生き残れるかを調べる研究

【概要】
腸内環境の改善など、人に有益な効果をもたらす微生物やそれを含む食品を「プロバイオティクス」といいます。株式会社ヤクルトとJAXAは、ISSに長期滞在する宇宙飛行士がプロバイオティクスを継続的に摂取することにより、免疫機能や腸内環境に及ぼす効果を科学的に検証する共同実験を実施しました。

共同実験に先立ち、ヤクルトとJAXAは、乳酸菌飲料「ヤクルト」で知られる「乳酸菌 ラクトバチルス カゼイ シロタ株(通称、乳酸菌シロタ株)」を凍結乾燥させた状態で入れたカプセルを「きぼう」日本実験棟に約1カ月間保管し、乳酸菌シロタ株が地上と同等の機能を維持できるのか検証していました。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
閉鎖環境、放射線、微小重力など複合的なストレス環境の下で長期間生活すると免疫細胞の機能低下や免疫バランスの変化など、免疫機能の低下を引き起こす恐れがあります。宇宙飛行士の心身の健康を維持し、パフォーマンスを最大限発揮させることが必要です。

【今後の展望】
同時にISSに滞在する宇宙飛行士によるプロバイオティクス摂取実験がなされており、宇宙空間で人体にプロバイオティクスがどのような影響を与えるか検証する取り組みが進められています。

また、ヤクルトとJAXAは骨量減少予防、免疫機能維持、精神心理的ストレス緩和、宇宙放射線被曝の影響を軽減するような機能性宇宙食の開発も検討していると2017年に説明しています。

参考リンク

水が凍らない不思議の研究

【概要】
北海道大学とJAXAは、ISSの「きぼう」日本実験棟に設置した、氷の成長速度を精密に測定する宇宙実験装置「Ice Crystal Cell 2」を用いて、氷点下に冷却した水中での氷の結晶成長実験に成功しました。

流氷直下の氷点下の環境に棲む魚の凍結を防ぐ機能を持つ不凍糖タンパク質が水中にわずかに含まれると、氷の結晶成長が促進される一方で、結晶成長速度の遅い面が成長途中の結晶を囲うことで結晶成長を抑制し、生体の凍結抑制に寄与することも判明しました。

【ニーズ・宇宙空間である理由
結晶成長の実態を探るには、成長速度の時間変動を精密に測定することが不可欠ですが、地上実験では対流などの効果で成長速度が変化しやすいため、微小重力環境での測定が重要です。

【今後の展望】
不凍糖タンパク質によって水が凍らない仕組みが明らかになったことで、生体の極限寒冷環境での生き残り戦略について、従来の定説を覆す結果が得られました。

この結果は、材料開発、医療分野(例:臓器移植で損傷・凍結しないように低温保存する技術開発)、食品分野(例:細胞凍結を防ぎ、おいしい冷凍食品を開発する)、エネルギー分野などへの活用や、生体内で起きるさまざまな結晶成長の原理を理解して、新しい材料の創製に結びつけることを目指すバイオ・クリスタリゼーションにも期待が寄せられています。

参考リンク

宇宙空間での研究を地球でも利用

続いては、宇宙空間で人が生存するための宇宙利用・宇宙実験ではなく、地球上の人間の暮らしをより豊かにする宇宙利用の事例です。

老化に関する研究

【概要】
微小重力環境に長期間滞在すると、骨量の減少や筋力の低下など、老化に似た諸症状が現れることが知られています。しかしながら、そのメカニズムは解明されていません。

リンの過剰摂取が老化を加速することがわかっているので、「微小重力環境下における骨量減少によって骨から流出して血中へ流入するリンが老化を加速する」という仮説のもと、宇宙飛行士から採取した血液・尿検体および軌道上で飼育したマウスを用いてこの仮説を検証するという研究が行われています。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
微小重力環境では老化が加速したような病態が出現します。このメカニズムを解明することで骨粗鬆症などの治療法開発につながる可能性があります。

【今後の展望】
骨粗鬆症による骨量減少を防ぐことで、腎機能低下や非感染性慢性炎症などの老化を加速する要因を軽減できるかもしれません。

また、これまで骨粗鬆症は老化の結果と考えられてきましたが、老化の原因にもなることが証明されれば、骨量減少を防ぐ運動療法や薬物療法の開発・普及が新たな抗加齢医学として正当化され、ますますその分野での研究が進むことになると予想されます。

参考リンク

【MHU-6】微小重力の環境で老化が加速するメカニズムの研究 | 「きぼう」利用のご案内 | JAXA 有人宇宙技術部門

無重力で応答する遺伝子の研究

【概要】
2014年にISSの「きぼう」日本実験棟で行われた実験では、生きたメダカを8日間連続で蛍光顕微観察して撮影することに世界で初めて成功しました。メダカには骨を形成する骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞に蛍光で光る遺伝子が組み込まれていました。

実験の結果、骨芽細胞と破骨細胞の蛍光のシグナルが無重力環境にさらされると急上昇することがわかりました。さらには、骨に関連する遺伝子以外にも5つの遺伝子が無重力環境に応答することもわかりました。

この実験により、微小重力環境下での骨量減少を解明する新たな手がかりが得られました。

【ニーズ】
骨量は40歳代以降、徐々に減少していきます。特に女性は閉経によって女性ホルモンの分泌が減るために骨量が減少しやすく、60歳代は5人に1人、70歳代は3人に1人、80歳代は2人に1人が骨粗鬆症だと言われています。

【今後の展望】
骨粗鬆症に関与しているかもしれない遺伝子の研究が進むことで、老人性骨粗鬆症の原因解明にもつながる可能性があります。

宇宙で生活するうえで対策すべきことが何かを把握するための手がかりにもなるでしょう。宇宙に滞在したいと考える一般の人にとっても、骨粗鬆症のリスクを解消できるかもしれないことはメリットだと言えるでしょう。

参考リンク

子宮内の胎児をモニタリング

【概要】
宇宙滞在中の宇宙飛行士のバイタルサインを追跡するため、カリフォルニア州にあるNASAのエイムズ研究所は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の胎児治療センターと共同で、横0.33インチ、縦1.3インチの錠剤型の小型送信機を開発しています。

この小型送信機を応用すると、子宮内で胎児の体温や血圧などのバイタルサインを測定できます。

【ニーズ】
厚生労働省の人口動態調査によると、2021年に2,500g未満で生まれた低出生体重児は7.6万人。出生数のおよそ9%です。また、世界的にみても、生まれてきた赤ちゃん10人のうち1人は早産です。早産率は、世界中のどの地域でも過去10年間、横ばいで早急な解決が望まれます。

【今後の展望】
「早産は、従来の機器では予測や監視が難しく、赤ちゃんの死につながることも多い深刻な問題です。しかし、医師が子宮の収縮の大きさと頻度をモニターできるようになれば、早産の発症を早期に発見し、胎児の生命を脅かす事態になるのを防ぐことができます」開発チームのメンバーでエイムズ研究所の電気技師であるカーステン・ムント博士はこう述べています。

今後、本研究で開発された小型送信機を用いて子宮内のバイタルサインを追跡できれば、多くの新しい命を救うことができるかもしれません。

参考リンク

タンパク質の結晶化実験

【概要】
タンパク質結晶化実験の歴史は古く、1983年に実施された最初の宇宙環境での結晶化実験はスペースシャトルに搭載された実験室であるスペースラボ1号で行われた、β-ガラクトシダーゼ結晶とリゾチーム結晶を対象とするものです。ロシアの宇宙機関ROSCOSMOSのKristallizatorをはじめ、現在でも各国が盛んに実験に取り組んでいます。

国内では、2003~2005年に計6回実施されたタンパク質構造・機能解析のための高品質タンパク質結晶生成プロジェクト(参考1参考2)や近年行われている高品質タンパク質結晶生成実験(JAXA PCG:MT、LTなど複数種類あり)があり、JAXA PCGではバイオベンチャーのペプチドリーム・宇宙ベンチャーのSpace BDがJAXAとパートナーシップを結び、民間の実験の実施やサポートしています。

また、結晶化容器であるJCB-SGTやPETITなどのキットを用いることで実験を簡単に行えるようになっています。

実験例として、人工血液向けのヘモグロビン(参考)、リウマチや心臓肥大、肝細胞がんなどに関与するタンパク質(参考)、多剤耐性菌・歯周病菌の生育に重要なペプチド分解酵素(参考)等が挙げられます。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
膜タンパク質は水溶性タンパク質に比べ不安定かつ非水溶性なので結晶化が困難で、沈殿・対流のない環境で不純物の除去・濃度勾配を解消することが実験環境として有利です。

一般に新薬候補の化合物探索にはシミュレーションが行われますが、高解像度の構造解析を可能にする微小重力下実験を行うことは無駄な実験を回避しコスト低下にもつながります。

また、地上では作った結晶が重力方向に落ちて容器と衝突することがあったり、対流の影響で結晶の周りに大きな乱れが発生、結晶にタンパク質が取り込まれ正しく並ぶ前に、次のタンパク質が来て結晶に欠陥が発生することもあります。

そのため、微小重力環境は非常に重要な要素と言えます。

【今後の展望】
さまざまなタンパク質で実証が行われていますが、共通して言えるのは、結晶の大型化や生成したタンパク質を解析することでその先の創薬や病気のメカニズム解明に適用できるということです。

参考リンク

安全性の高い農薬の開発

【概要】
タンパク質に関する実験は、地上における安全性の高い農薬の開発を行ううえでも重要とされています。

病害虫や雑草の重要なタンパク質の働きを直接阻害する分子標的農薬を開発するうえで、タンパク質の形状データ(立体構造)が必要となりますが、農業で重要な生物に由来するタンパク質立体構造の解析例はまだ少ない状況です。

宇宙でのタンパク質結晶化実験をすることで信頼性の高い構造データを得ることが期待されています。

【ニーズ】
現在市場に出回っている農作物は、健康被害が出ないように農薬の残留について一定の基準を満たしているかチェックされています。しかし、万が一、基準以上の農薬が残った状態の食材を食べ続けると、身体にはさまざまな影響が現れます。

また、本実験を進めるAgroDesign Studiosのサイトによると、これまでの農薬開発プロセスでは、農薬候補となる化合物を害虫や雑草、土壌性細菌に添加し、できるだけ多くの対象に効果を示す物質を採用する『ぶっかけ探索法』が主流でしたが、この方法では薬剤の作用メカニズムが明確ではないため、ヒトに対する安全性が保証できなかったとあります。

【今後の展望】
最近の流行であるオーガニックには、コストがかかる、流通量が少ない、長期保存ができないなどのデメリットがあります。安全性の高い農薬が開発されればオーガニックなもの以外で、安全性の高い作物を比較的低価格で食べられる可能性もあるのではないでしょうか。

参考リンク

歯周病改善の研究

【概要】
ISSの「きぼう」日本実験棟で実施された高品質タンパク質結晶生成実験を通じて、歯周病の原因となる菌を育ててしまう重要な酵素 DPP11の詳細な立体構造が世界で初めて明らかになりました。

DPP11 の働きを抑える化合物の研究が進めば、抗菌薬として活用できるだけでなく歯周病の症状を改善する治療薬となる可能性があります。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
ISSの「きぼう」日本実験棟でDPP11を結晶化することで、結晶品質が大幅に改善。この宇宙実験で得られた高分解能のデータは、DPP11 のペプチド分解機構と基質認識機構の解明に大きく貢献しました。

日本人の歯を失う原因の第1位は歯周病(37%)です。歯周病罹患率は15〜24歳が20% 、25〜34歳で30% 、35〜44歳で40%、 45〜54歳は50%、そして55歳以上は55〜60%という高い割合になっており、歯周病の予防だけでなく、症状の改善に対するニーズは大きいと考えられます。

【今後の展望】
歯周病は、世界中で最も感染者数の多い感染症であり、口腔疾患にとどまらず、糖尿病、動脈硬化などの全身疾患に関与するため、歯周病の治療薬開発は大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。

参考リンク

ワクチン開発

【概要】
大腸菌から生成したウイルス様粒子(VLP)や新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスを構成するNタンパク質を結晶化させ、その結晶をX線を用いて解析することにより、ウイルスの構造や感染のメカニズムを解明することを目的とした実験です。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
微小重力環境では、密度差などによる流れ(対流)が起こらない静かな環境で結晶化が安定して進みます。流れに乗って不純物が結晶に取り込まれることも少ないため、結晶中で分子が規則正しく並んだ、品質のよい結晶ができる傾向があります。

【今後の展望】
ウイルスの構造や感染のメカニズムが解明されれば、新型コロナウイルス感染症をはじめとする新しいウイルスに対しての効果的なワクチン開発に役立つと期待されています。

参考リンク

Space BD 国際宇宙ステーション「きぼう」高品質タンパク質結晶生成実験サービス 初受注案件として国内外3社と13の宇宙実験の契約を締結

iPS細胞を用いた宇宙空間での立体臓器創出

【概要】
東京大学医科学研究所の谷口英樹教授を代表として、iPS細胞由来の肝臓の基(器官原基)となる肝芽を用いた、人間の体にあるような立体的な人工臓器の成熟化に必須の要素である大血管付与を目指した宇宙実験が行われています。

ヒト臓器は、子宮内羊水中の浮力で重力がキャンセルされた環境において発生します。「お母さんのおなかの中と宇宙は似ている」という発想から生まれた研究です。

本実験では、微小重力環境下での地上とは異なる粒子の集合状態の維持など、将来の地上・宇宙での三次元培養技術開発につながる知見が得られました。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
地上の重力下では培養が二次元的になるため臓器としての機能を持つ三次元構造の培養は困難でしたが、微小重力下では微小重力では沈降や対流などがなく静かで安定した浮遊環境となるため三次元培養が可能になります。

立体臓器の培養における微小重力環境のメリット
source: 国際宇宙ステーション(ISS)における成果創出活動の状況について(2021年11月12日、JAXA 有人宇宙技術部門)

今後の展望
サンプルを地上に回収し、地上で培養した対照群と成長の違いなどを比較し、器官原基の成長における重力の影響について解析を行う予定です。

地上で大血管を付与したヒト臓器を作るための必要条件や、新たな三次元培養装置の開発のヒントが得られることが期待されます。

【参考リンク】

ペット用の人工血液の合成

【概要】
2016年、ISSの「きぼう」日本実験棟で実施された実験で、イヌ用人工血液の合成と構造解析に成功しました。構造解析には、JAXAの「高品質タンパク質結晶生成技術(Hyper-Qpro)」が適用されています。

【ニーズ】
実験が行われた当時、動物用の血液備蓄システムが存在しておらず、輸血が必要な重症のイヌやネコについては、獣医が自らドナーを準備し、輸血液を確保する必要がありました。

また、アメリカおよびイギリスで動物用の貧血の治療薬が製造・販売されたことがあるものの、皮膚や粘膜・尿の変色、黒色糞便、食欲不振、発熱など多くの副作用が報告されたため、副作用のない輸血策が求められていました。

【今後の展望】
動物医療の現場が抱える深刻な輸血液確保の問題を解決する画期的な発明であり、動物の輸血療法に大きな貢献をもたらすものと期待されます。

また、今回の研究成果はイヌ用の人工血液ですが、ヒト用に向けた研究も進められています。

参考リンク

イヌ用人工血液の合成と構造解析に成功 – 輸血液不足の解消に期待、世界で需要 -:「きぼう」での実験 – 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター – JAXA

パーキンソン病などの神経変性疾患の研究

【概要】
2019年に全米幹細胞財団(NSCF)と幹細胞財団サミット、ニューヨーク幹細胞財団(NYSCF)、SpaceTangoの共同研究として、パーキンソン病および一次性進行型多発性硬化症(PPMS)患者由来のiPS細胞に基づいた高度な細胞モデルの開発に向けた細胞培養実験が実施されました。

特に、中枢神経系にみられる免疫防御細胞の一種であるミクログリア細胞が微小重力下でどのように成長するか、遺伝子発現における影響、パーキンソン病など神経変性疾患の細胞間相互作用を調査し、パーキンソン病やPPMSの解明、バイオマーカーや治療薬の発見・開発に活用します。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
地上の重力下では培養が二次元的になるため三次元構造を有する細胞の培養は困難でしたが、微小重力下では沈降や対流などがなく静かで安定した浮遊環境となるため三次元的な培養が可能になります。

【今後の展望】
本調査に関するインタビュー記事では、2022年11月時点でデータの解析中とあるため、詳細は不明です。しかし、BOARDSミッション(Brain Organoid Advanced Research Developed in Space)としても知られる本調査では、神経発達過程にかかわる複雑なモデルをISSで研究する初の試みであるため、結果に期待が寄せられています。

参考リンク

また、バイオ分野とは少し離れますが、タンパク質の結晶化実験と同様に、微小重力環境の特性を活かして高品質の半導体製造ができるのではないかという期待もあるので、「宇宙空間での研究を地球でも利用」のおまけとして紹介します。

おまけ・半導体の製造

【概要】
タンパク質結晶化と同じで歴史は古く、1973年にskylab3で5つの半導体製造実験が始まりです。1978年に商用利用に向けた実験が始まり、観測用ロケットや落下装置によるμG環境を利用した実験が進みました。

その後、ロシア、アメリカ、中国、ドイツを中心に各国が商用利用などに向けた半導体製造実験を繰り返し、現在に至ります。

国内では、1992年に毛利衛宇宙飛行士が実施した「ふわっと92」によるインジウムアンチモン(InSb)の浮遊帯域溶融法結晶成長実験や宇宙実験・観測フリーフライヤー(SFU)による複合加熱炉(GHF)焦点加熱炉(MHF)を使った結晶成長実験が行われました。

近年では、Alloy SemiconductorHicariといったプロジェクトにて、排熱を電気に変換する素子用の混晶半導体のインジウムガリウムアンチモン(InGaSb)結晶や地上で育成困難なInGaAs(インジウムガリウムヒ素)混晶系の結晶成長実験が実施されています。

各種実験の結果、微小重力環境の利用で半導体結晶の均一性、純度、格子欠陥や不完全構造の数の減少、より大きなサイズを生成する能力が発見されました。

特にAlloy Semiconductorでは、結晶成長の高速化が起こり、「微小重力環境では物質が対流(流れ)の影響を受けず自然に広がることでのみ運搬されるため、地上に比べて結晶の成長速度が遅くなるはず」という従来の一般的考えでは説明できない結果が得られました。

【ニーズ・宇宙空間である理由】
沈殿・対流のない浮遊した環境で不純物の除去・濃度が均一になるため実験環境として有利です。いわゆる、水と油のようなものでも分離せず混ざったままになるメリットがあります。

一方で、温度による液体の表面張力の違いが原因で起こる「マランゴニ対流」が微小重力環境では顕著に表れ半導体結晶に影響を及ぼすため、自由表面(気体と液体との境界面)を減らすことが重要です。

【今後の展望】
扱う物質によって課題などは異なりますが、Hicariで取り扱うInGaAs混晶系半導体の場合だと組成的過冷却(合金の凝固に伴って生じる過冷却)を抑制することで、より大きく高品質な結晶が得られると期待されています。

その他、温度・濃度分布などの制御、結晶の元となる種結晶や原料結晶の工夫など多くの実験的検討が必要であるという報告があります。

参考リンク

宇宙開発の技術を地球で転用

医学・バイオ分野最後の事例は、もともとは宇宙開発を進めるうえで培われた技術が地球上で転用されているというものです。

宇宙空間は特殊な環境であるため、人間の生存のために常に新たな技術の探索が求められるほか、人間の生命維持を目的としたものではなくても、地上にはなかった新たな技術の開発が最先端で進んでいるケースが少なくありません。

そうした技術が地球上の予想もしなかった場所で活用されていると知れば、多くの方が驚くのではないでしょうか。

オゾン層のリモートセンシングのために開発したレーザー技術の心臓手術への転用

【概要】
心臓病やそれに関連する病気の最大の原因は動脈硬化(アテローム性動脈硬化症)です。近年まで、重症例に対する主な治療法は、詰まった血管をつなぎ替えたり入れ替えたりする心臓バイパス手術でした。一部の患者には、外科手術以外の方法としてバルーン血管形成術が用いられていましたが、適用できずに救えない患者も多くいました。

この問題を解決したのは、NASAのジェット推進研究所(JPL)が地球のオゾン層のリモートセンシングのために開発したレーザー技術です。

この治療法では、冠動脈に小さなカテーテルを通し、動脈内の様子を撮影した映像を見て、医師は血管が詰まっている箇所を見つけ、レーザー光線を短時間で照射して動脈硬化の原因を蒸発させることができます。

一般的なレーザーは高温のため、繊細な心臓手術には向きませんが、このレーザーは人間の組織が耐えられる65℃という低温で作動します。

【ニーズ】
日本人の中年男性では2人に1人、女性では5人に1人いると言われている動脈硬化。また、日本人のおよそ5人に1人は動脈硬化による心臓や脳の病気で亡くなるといわれています。誰にとっても身近な病気であるといえ、治療のニーズは非常に高いといえるでしょう。

【今後の展望】
1992年にFDA(米国食品医薬品局)承認済み。多くの患者に心臓バイパス手術に代わる方法を提供しています。

参考リンク

“Cool” Laser Heart Surgery

LED(発光ダイオード)の脳腫瘍手術への転用

【概要】
NASAがスペースシャトルの商用植物育成研究用に開発した発光ダイオード(LED)が、脳腫瘍の除去に使用されているという事例です。

3人の患者の難しい脳腫瘍を除去し、2000年時点で、全員がきわめて良好な経過をたどった例が報告されています。

永久に腫瘍を取り除くため、LEDの波長の長い光が、従来のレーザー光では届かない腫瘍まで十分な幅と深さで到達し、完治につながると期待されています。

【ニーズ】
脳腫瘍は日本国内では年間に約2万人、人口1万人あたり1.5人が発症します。脳腫瘍の5年生存率は、悪性腫瘍の場合、グレードⅡの髄膜腫で約91%、グレードⅢになると約87%となっています。

【今後の展望】
従来の治療方法であるレーザー光が届かない腫瘍を治療し、腫瘍の近くにある正常な脳組織を傷つけるリスクを低減することが期待されています。

参考リンク

遠隔操作装置を音声制御付き車いすの開発へ転用

【概要】
宇宙関連プログラムの遠隔操作装置やロボット技術をベースに、NASAのジェット推進研究所(JPL)が開発した音声制御システムが、音声制御付き車いすの開発に転用されている事例です。

「行け」「止まれ」「上がれ」「下がれ」「右」「左」「進め」「後ろへ」など、35の音声コマンドに反応するシステムを搭載し、麻痺のある人や重い障害を持つ人の移動に役立つことが期待されています。

車椅子・マニピュレーターは、カリフォルニア州ダウニーのランチョ・ロス・アミーゴス病院でテストされ、ニューヨークのVA義肢装具センターで評価されています。

【ニーズ】
日本には 400 万人を超える身体障害者がいます。そのうち車いすユーザーは、全人口の 1.57%にあたる約 200 万人にも上ります。 世界の車いすの総人口は約 1 億 2708 万人であり、車いすの音声制御のニーズは大きいといえるでしょう。

【今後の展望】
麻痺のある人や重い障害を持つ人の生活に欠かせない車いすとして利用が広がる可能性があるほか、次世代モビリティとして発展していく可能性もあります。

以上が、宇宙開発の技術が地球上で転用された事例です。

宇宙開発で生まれた技術が転用された例はこれだけではありません。NASAの流体分野の先端技術が白内障の手術に利用月面用の宇宙服の技術をスポーツ医学に転用発泡断熱材が人工義肢の素材として転用されるなど、さまざまです。普段私たちが何気なく利用しているものの中にも、宇宙開発で生まれた技術が使われたものが隠れているかもしれません。

宇宙利用事例解説:資源開発・エネルギー

続いて、資源開発・エネルギー領域における宇宙利用について解説します。

宇宙には多くの資源とエネルギーを生み出す可能性が眠っています。これらの資源を有効に活用することで、地球上の資源・エネルギー問題を解決し、持続可能な未来を築くことが可能になるかもしれません。

本章では、宇宙を資源とエネルギーの供給源として利用する可能性について掘り下げていきます。

資源採取

1.小惑星への期待

まずはじめに、小惑星の資源開発に期待されていることとして、小惑星に眠る資源の種類、推定される資源の採取量について紹介します。

① 惑星資源の種類

小惑星資源には、地球では希少なものが多くあると想定されています。例えば、金・銀といった貴金属だけでなく、プラチナ・ニッケル・コバルト・リチウムなどのレアメタルが豊富に存在すると考えられています。

また、月にはヘリウム3という核融合炉の燃料として利用可能性がある物質が多く含まれていると分析されています。

その他、大半が鉄やニッケルで構成されていると推定される16 Psycheという惑星も存在しており、今後も研究が進むにつれて、どのような資源がどの惑星に眠っているのか明らかになっていくでしょう。

資源採取を地球外で行うことで、地球上で資源を採取する活動が減るため、温室効果ガスの削減につながるというメリットもあると考えられています。

参考リンク

This Rare Asteroid May Be Worth 70,000 Times the Global Economy. Now NASA Is Sending a Spaceship to Explore It.

② 推定される資源の採取量

宇宙に眠る資源の総量は未知数ですが、一例として、東京大学の宮本英昭教授によると、半径1 kmのイトカワタイプの小惑星には3,000万トンのニッケルと150万トンのコバルト、7,500トンのプラチナが存在すると指摘されています。
さらに同じ大きさの金属型(M型)小惑星なら200億トンの鉄と1億トンのプラチナがあり、これは産業革命以来、人類が地球で生み出した総量に匹敵する鉄と、総量の倍もの白金がもたらされる可能性があるとのことです。

参考リンク

2.資源開発に臨む宇宙ベンチャー企業

続いて惑星資源開発に臨む宇宙ベンチャー企業を紹介します。

Moon Express(米)、 ispace(日)、 Trans Astronautica Corporation(米)、Asteroid Mining Corporation(英)などさまざまな宇宙ベンチャーが資源探査に向けて動いています。その中でも、2023年時点で最も動きが活発なAstroForgeという企業を紹介します。

同社は2022年に設立されたアメリカのスタートアップで、2022年5月にはシードラウンドで1,300万ドルを調達し、民間企業初の小惑星資源採掘や資源の地球への回収をミッションに掲げています。2023年4月に、SpaceXのFalcon9ロケットで最初のテスト機が打ち上げられ、宇宙での精製能力を検証していく計画です。また今年10月には2回目のミッションを実施し、地球に近い小さな小惑星のそばを飛行しながら惑星のデータを収集する計画を進めています。現在はまだデータを集めている段階ですが、今後数年以内にAstroForge社をはじめとした民間宇宙ベンチャーが、惑星に降り立ち資源を回収して地球に戻ってくる日がくるかもしれません。

参考リンク

AstroForge、宇宙での資源採掘に向けて2つのミッションを実施

3.商用宇宙ステーションを活用した資源探査への期待

最後に、資源開発の文脈において宇宙ステーションがどのように機能し得るか、アイデアを3つご紹介します。

① in-situ resource utilization(ISRU):現地資源利用

ISRUとは、現地で入手可能な資源を現地で利用することを意味し、他の惑星や月で発見・製造された物質の収集、加工、保管、利用を行うことです。

小惑星から採取した資源をそのまま地球に送り届けるには膨大なコストがかかるため、宇宙ステーションを将来の惑星ミッションで利用可能なISRU技術や手法の試験場として運用できるようになると、小惑星探査の費用対効果はより高まるでしょう。

② 惑星探査のための基地

惑星探査ミッションを行うための中継基地として、宇宙ステーションの使用が想定されます。例えば、月や火星などへのミッションにおいて、宇宙ステーションはミッションの初期段階で一時的な基地として機能し、必要な装置や物資を貯蔵する場所となり得るかもしれません。

アルテミス計画における月軌道ゲートウェイも中継基地としての活用が期待されています。

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③ 探査ロボットの制御拠点

ローバーなどの探査ロボットは、主に地球からの指令で動いていますが、地球と惑星との距離により、信号の往復には時間がかかるほか、ロボットが障害物に遭遇したときや資源を偶然発見した場合に迅速に対応することができません。

一方、宇宙ステーションから探査ロボットを操作すれば、この通信遅延の大幅な短縮や、通信遮断の時間がなく快適な通信環境を構築できる可能性があり、宇宙ステーション滞在者が直接ロボットを操作することで、探査活動をより効率的に行うことができるでしょう。

エネルギー(宇宙太陽光発電システム)

宇宙開発におけるエネルギー創出というテーマで、たびたび話題に上がるのが宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)という仕組みです。

1.宇宙太陽光発電システム(SSPS)とは?

宇宙太陽光発電システム(以下、SSPS)とは、宇宙空間において、太陽光エネルギーをマイクロ波またはレーザー光に変換して地球に伝送し、電力として利用するシステムのことです。

通常の太陽光発電は、地球上の日光が当たりやすい場所(山の斜面や建物の屋上など)に設置するのに対し、SSPSは、宇宙空間に太陽電池を搭載した衛星を配置します。

太陽光は地球上に届くまでに、大気の吸収などにより次第にパワーが減少していきますが、宇宙空間で発電すると天候や時間、大気の影響は受けず、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構の試算では地上の約10倍の太陽エネルギーを得られるとのことです。

再生可能エネルギーの1つとして、SSPSはエネルギー・気候変動等の人類が直面する地球規模の課題を解決する可能性のあるシステムと期待されています。

参考リンク

2.SSPSのメリットと課題

地球規模の課題の解決に寄与するSSPSへの期待が高まる一方で、実現までの課題もあります。SSPSのメリットと課題にはどのようなものがあるか、技術・安全性・経済性の観点で見ていきましょう。

●メリット

技術
― 地上の再生可能エネルギーと比較して、昼夜、天候の影響を受けにくく、エネルギー源として安定している
― 地上よりも強度の高い太陽光を利用できる
― 電力を必要としている地域へ柔軟に送電できる(地上送電網整備の負担が軽減される)

安全性(環境影響等)
― 発電時に温室効果ガスや廃棄物が発生しない
― 発電衛星は地震など地上における自然災害の影響を受けない(地上受電サイトを複数建設することで、サービスの継続や早期の復旧を可能にする)

経済性
― 発電時に燃料費を必要としない
― 化石燃料と異なり、紛争や需給逼迫に伴うエネルギー価格急騰の影響を受けない
― 送電線が容易に届かない地域への電力供給ができる

●課題

技術
― 宇宙空間への大量輸送技術、大規模宇宙構造物の構築技術、軌道上において長期間にわたり運用・維持(補修)する技術
― 高効率で安全な発電、送電、受電技術

安全性(環境影響等)
― マイクロ波・レーザーが、人の健康、大気、電離層、航空機、電子機器等へ悪影響を及ぼさないよう配慮する必要がある
― スペースデブリ、太陽フレア等による損傷や破壊への対処
― 運用寿命を終えたSSPSの安全な廃棄、もしくは再利用

経済性
― 宇宙への輸送費をはじめ、建設、運用・維持、廃棄にかかわるコストを他のエネルギー源と競合できるまで下げる必要性がある
― 周波数(マイクロ波の場合)の確保。軌道位置、地上受電サイトの場所の確保等

メリットとしては安定的に電力を供給でき、環境にも優しいエネルギーであることが読み取れます。一方で技術的な実現可能性や物理的な損失・損害が課題として挙げられます。

参考リンク

宇宙太陽光発電システム(SSPS)について | JAXA研究開発部門

3.SSPS事業に取り組む企業

実現までの課題も多いSSPSですが、これに事業として取り組む先進企業はすでに存在します。本記事ではそのうちの5社を紹介します。

① Space Power Technologies(日)

京都を拠点とする、空間伝送型ワイヤレス電力伝送機器の開発・製造を行うスタートアップです。宇宙空間に設置した太陽光発電設備で発電したエネルギーを、マイクロ波に変換して地上に送電するという技術的知見をもとに、マイクロ波による高効率な無線給電システムを開発・製造しています。同社の技術が実用化されれば、携帯端末や IoT センサー等に対して、離れた場所から無線で給電できるようになり、充電や電池交換等の作業が不要になる等、エネルギー利用の利便性向上も期待されています。

参考リンク

https://startup-db.com/companies/Ao31G8nUr2DZkwyX

② Space Solar(英)

イギリス発のクリーンテックスタートアップです。「ステークホルダーと世界の利益のために宇宙ベースの太陽光発電を開発する」ことを企業理念としており、安価でスケーラブルなクリーンエネルギー技術「スペース・ベースド・ソーラー・パワー」を開発し、商業化に取り組んでいます。

参考リンク

③ Virtus Solis Technologies(米)

2018 年に設立されたアメリカを拠点とするスタートアップ企業で、宇宙太陽光発電と電力伝送技術を開発しています。NASA が主催するコンテスト「Watts on the Moon Challenge」で入賞しており、同社の技術が可変電源から3 kmにわたってエネルギーを供給し、反対側の負荷にエネルギーを供給することが証明されています。

参考リンク

④ mPower Technology, Inc.(米)

アメリカのスタートアップで、宇宙用途向けの高効率の最先端シリコンセルの製造事業を行っています。2022年に、アルテミス計画におけるNASAのミッションに太陽光発電システムを提供するうえで同社がパートナーに採択されています。

同社では宇宙太陽光発電システムのことをSSPSではなく、Space-based-Solar-Power(SBSP)と呼び、ホワイトペーパーも出しています。

参考リンク

⑤ Emrod(ニュージーランド)

ワイヤレス電力伝送事業を展開するニュージーランドのスタートアップです。2022年に欧州宇宙機関やエアバスと共同で、宇宙での太陽光発電に使用することを想定したパワービーミングテクノロジーのデモンストレーションを行っています。

【参考リンク】

宇宙利用事例解説:生活インフラ

続いては、生活インフラの章です。本章では、人が宇宙で生活するうえで欠かせない資源や環境、物品の整備という観点でどのようなビジネスチャンスがありそうか、まとめました。

水の再利用

宇宙空間で生活するうえで、水はとても貴重な資源です。地上のようにこんこんと水が湧き出る場所は、当たり前ですがありません。

現在、ISSでは地球から高い輸送コストをかけて運搬した水をアメリカやロシアの水再生装置で処理した尿とISS内部の空気から除湿時に回収して処理した水を飲料水となる品質まで殺菌・浄水しています。

また、宇宙空間における水は飲料用途だけではなく、電気分解して呼吸用の酸素を生成するためにも使われます。

参考リンク

飲料水の供給はどのようにしておこなっているのですか | JAXA有人宇宙技術部門

宇宙ステーションに滞在する人が増える場合、より効率よく水を再生する方法が求められるほか、飲用水としての美味しさも求められるかもしれません。

ちなみに、毛利衛さんの書籍『わたしの宮沢賢治』(ソレイユ出版)では、宇宙から帰還した際に同僚に差し出された地球の水をいかにおいしく感じたかという感動が記されています。

宇宙で農作物を栽培

宇宙ステーションでの食料の自給自足もすでに検討が進んでいる研究の1つです。

例えば、過去の実証実験では、ISS内の植物栽培装置に48個の唐辛子の種が入った容器が挿入され、4カ月後の収穫までの観察が行われました。宇宙に滞在すると、微小重力下での一時的な副作用として味覚や嗅覚を失う恐れがあり、スパイシーな食べ物や味付けした食べ物は特に好まれています。

ちなみに、ケネディ宇宙センターから遠隔で散水、LED 照明、およびその他の環境条件の制御が可能で、宇宙飛行士が栽培にかかわる時間を削減できるようにもなっています。

本実験は、4カ月の期間を経て無事栽培に成功しており、宇宙飛行士の栄養バランスの改善や宇宙空間での農作物栽培技術の発展への足がかりとなりました。

参考リンク

Chile Peppers Start Spicing Up the Space Station

宇宙飛行士の歯を守る歯磨きグッズ

宇宙では歯石がつきやすく、宇宙飛行士の歯を守るためのさまざまな製品が開発されています。

例えば、日本の株式会社トライフは「宇宙生活で付きやすい歯石を効果的に予防したい」という課題に対し、ケミカルフリー(化学成分無配合)・プラントベース(植物食品成分100%)・生分解性100%(体や環境で安全に消化分解)の、飲み込んでも安全かつ環境に優しい歯磨き粉「オーラルピース」に、乳酸菌抗菌ペプチド特許製剤「ネオナイシン-e」を増量配合した、宇宙でも安心して利用できる歯磨き粉を開発・販売しています。

さらに、この歯磨き粉には、歯垢を洗い流す自浄作用のある唾液の分泌を促す天然レモン精油も加えられており、予防効果を向上させる仕組みがあるとのことです。飲み込んでも安全かつ高い予防効果が評価され、2021年11月に、JAXAによりISSの搭載品として正式選定され、2022年秋頃からISSに搭載されています。

参考リンク

宇宙歯磨き オーラルピース 宇宙で使えるからだと地球に優しい歯磨き・口腔ケアジェル ケミカルフリー・プラントベース(植物成分100%)・食品成分100%・生分解性100% 機能性オーラルケア (spacetoothpaste.com)

宇宙用の洗剤開発

宇宙では日用品の洗濯も一苦労です。洗濯用の水や洗剤は宇宙への輸送が限られるだけでなく、微小重力環境では水や洗濯物は浮遊するため、うっかりしていると機材に湿った洋服などが接触し、トラブルになる恐れもあります。より少量での洗濯資源の有効活用と洗濯後の洋服の管理などが課題に挙げられます。

アメリカの大手消費財メーカーP&G社は、同社が開発する染み抜き製品を使用し、微小重力下での汚れ除去成分と性能の研究を行っています。

研究の目的は、微小重力下での汚れ除去に対する界面活性剤アミンオキシドの有効性を理解すること、また、微小重力への曝露によって引き起こされる、洗剤の物理的外観の変化や洗剤配合物中の酵素の安定性と性能の変化の調査です。

参考リンク

P&G Telescience Investigation of Detergent Experiments

本記事で紹介しているもの以外にも、化粧品や室内用の服など、地上の生活を想定すれば、人が宇宙に滞在するうえで必要なものは無数にあると考えられます。ここでご紹介した例を参考に、読者の皆さまも新たな宇宙用品のアイデアを考えてみてはいかがでしょうか。

宇宙利用事例解説:エンタメ

宇宙利用におけるエンタメと聞くと何を思い浮かべますか?

現在、現実の宇宙とエンタメが融合した全く新しい体験が誕生し始めています。宇宙旅行、宇宙からのライブストリーミング、実際の宇宙の映像を利用したVR体験……SFの映画や小説に出てくるような宇宙でのエンタメが現実になり始めています。

本章では宇宙とエンターテインメントを融合させたビジネスを未来予想も合わせて紹介します。

宇宙ホテル

ISSに実業家の前澤友作さんが滞在したことを覚えている人も多いでしょう。商用宇宙ステーションが本格化すると、滞在できるモジュールを備えることで、ホテルビジネスがひとつの事業として成立すると期待されています。

また、宇宙ステーションにモジュールをつけるのではなく、宇宙ホテルそのものの建設を計画する企業も現れています。例えば、アメリカのAbove Space社が、2030年までに建設完了を予定している宇宙ホテルを紹介します。

このホテルは中心部分に大型の円筒型構造を持ち、宇宙船や宇宙旅行者が停泊できるドック、レストラン、バー、ジム、プール、映画館、宇宙散歩用のエアロック(気圧の異なる空間を移動する際の出入口となる通路・小部屋)、360度パノラマを楽しめる観光用の展望デッキなど、多数の設備が備え付けられる予定で、最大400人近くを収容可能です。

構造は車輪型となっており、その理由は人工重力を作り出すためです。回転させることで宇宙旅行者に地球と同じような重力環境を提供できるため、不自由ない生活を送れます。

また、宇宙空間での移動技術が発達すれば、複数の宇宙ステーション間の往来も可能となるでしょう。宿泊者が実際の宇宙研究施設を訪れることで研究開発の最前線を体験し、宇宙や科学に対する理解を深めることができるようになるかもしれません。

参考リンク

You Might Be Able to Vacation in This Space Hotel by 2030

宇宙アート

2023年3月15日、アメリカのSpaceX社が打ち上げたロケットに、一つのアート作品が搭載されていました。この作品は、ニューヨークで活動するコンセプチュアル・アーティストYasuo Nomura氏によるアート作品で、日本のSPACETAINMENT社が宇宙アートプロジェクトの第一弾として打ち上げました。ISSへ到着した後、数カ月間ISS外部に設置されたプラットフォームに「展示」され、補給船で地球に帰還します。

また、2022年10月、音の振動で液体が飛び跳ねる様子を撮影する「流体アート」の作品づくりを手がけている京都大学らのグループが、飛行機を急降下させて無重力を再現した環境で制作した作品を発表しました。このような無重力空間を活かしたアート作品づくりも、今後宇宙旅行が活発化していくにつれ普及してくるかもしれません。

このように打ち上げ・制作・展示・帰還までの一連の流れを皮切りに、宇宙を経験し記憶したアート作品という新たな芸術領域の展開が期待されます。

参考リンク

宇宙ステーションの「外側」にアート作品を展示、地球帰還予定も

宇宙スタジオ

アメリカのAxiom Space社が2024年に打ち上げる予定の商用宇宙ステーションに、Space Entertainment Enterprises社が手がける撮影スタジオが導入される予定です。

このスタジオではアーティストやプロデューサー、クリエイターたちが、映画やテレビ、音楽やスポーツなど、宇宙ステーションの低軌道微小重力環境を最大限に活用するコンテンツを制作しライブストリームもできるようにするとのことです。宇宙の無重力空間を駆使した新たな作品の誕生と発展により、今後よりリアルな宇宙ドラマや映画が生まれてくるでしょう。

参考リンク

If you want less CGI and more real effects in movies, you may get your wish: Inflatable film studio to orbit Earth

また、宇宙から撮影した映像を配信する取り組みは日本でも始まっています。ISSの日本実験棟「きぼう」に、株式会社バスキュールが宇宙と地上を双方向でつなぐ世界唯一の番組スタジオ「KIBO宇宙放送局」を開設し、宇宙から見る初日の出の配信などが行われています。

参考リンク

KIBO宇宙放送局

ここまでは宇宙利用におけるエンタメの未来について、すでに動き出している事例があることを紹介しました。以下では、編集部内で妄想した宇宙空間におけるエンタメの未来を紹介します。

宇宙からのリアルな映像をVRで配信

今ではVR(仮想現実)という言葉が広く世の中に普及していますが、宇宙ステーションから流れてくる映像を、VR技術を駆使して地上のどこからでもリアリティ高く見られるようになる日もいずれ現実となるでしょう。

すでにMeta(旧FaceBook)社や先に紹介した株式会社バスキュールとJAXAの共創プロジェクトでも、リアルタイムでISSの飛行位置を再現し、周囲を遊泳できるVRサービスを展開しています。今後は宇宙ステーションからのリアルタイム映像にもVR経由でアクセスでき、宇宙からの景色を題材としたサービスが生まれるでしょう。

例えば、ISSが90分に一回地球を周回する(90分に一度朝を迎えられる)特性から、宇宙ステーションが朝を迎える任意のタイミングで、各国の人が同時にVR空間上の宇宙ステーションにアクセスし、「Good Morning」から始める英会話を学ぶ場の提供といったサービスも考えられます。

宇宙ステーション内のロボットを自由に操作できるサービス

技術進歩により宇宙への輸送コストが大幅に下がったとしても、まだまだ高価で、宇宙に行ける人は限られると予想されます。しかしながら、宇宙空間にロボットを配置し、そのロボットと感覚を共有するサービスとなるとコストを抑えて疑似的に宇宙体験ができる人を増やせるでしょう。

さらには、追加料金を払うことで宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士との会話ができるといったオプションも面白いかもしれません。

また、宇宙ステーション内に広告を掲示することで、ロボットを通して広告を目にする人も増やせるでしょう。

ISSに設置した360度カメラによって撮影された船外活動やISSの生活を体感できるVR動画を、過去にKDDI株式会社が配信しています。初期段階では過去の映像をVRで配信するサービスですが、ゆくゆくはリアルタイムの映像を配信できるようになるかもしれません。

参考リンク

KDDI、国際宇宙ステーションISSの360度カメラ映像で宇宙生活を体感できるVR動画を配信開始 船外活動の様子も初登場

社員研修で宇宙空間を活用

企業の社員研修の一環にチームビルディング研修があります。これを、宇宙ステーションを模したVR空間で行うというサービスも今後生まれるかもしれません。

例えば、仮想の宇宙ステーションをVR空間内に作成し、ランダムな社員がチームとなり、緊急ミッション(機体の故障・通信遮断など)の解決に向けて協力し行動するという研修です。

似たようなものに、NASAゲームと呼ばれているものがあります。これは月面着陸の際にトラブルで想定外の場所に着陸したと仮定して、皆で生存することを目的に、手元にあるアイテムの優先順位をチーム内で合意をとって決めていくゲームです。

宇宙ステーションと連動したリアルな映像をVR空間に再現することで、より緊張感を高め、チームでの議論を活性化させることができ、各メンバーの価値観や行動傾向も把握することができるのではないでしょうか。

宇宙で結婚式

過去に宇宙飛行士が宇宙ステーションから地上にいる花嫁と中継をつないで結婚式を挙げた事例があります。今後宇宙への旅行や滞在が活発化していくにつれ、結婚式や披露宴などのブライダルイベントが宇宙で催される日も遠くない未来かもしれません。

宇宙ステーション内でブライダルイベントを行い、一生に一度の記念日を壮大に演出し、ライブ配信を通じて地上にいる人たちも一緒に祝えるようなサービスが実現すると思われます。微小重力環境であることを活かしたウエディングドレスや、宇宙ならではの食事会による特別感の醸成など、妄想が膨らみます。

地上で宇宙からのリアルな景色を味わう

宇宙ステーションと連動し、地上のプラネタリウムに実際の宇宙の景色を映すことで宇宙に実際に存在する天体や現象をリアルに再現することもできるでしょう。

また、宇宙から見た地球上の景色をリアルタイム上映し、まるで宇宙ステーション内にいるような、普段とは異なるプラネタリウム体験を提供することも増えるかもしれません。

宇宙写真コンテスト

日本の宇宙飛行士が、ISSから撮影した地球の写真のSNS投稿を見たことがある人も多いでしょう。

宇宙ステーションは地球を1周約90分で回り、地球上のさまざまな場所をさまざまな視点から撮影することができます。

今後宇宙に滞在する方が増えれば、「宇宙の美しさ」や「呼吸する地球」がテーマの写真コンテストも開催できるかもしれません。

コンテストに投稿された写真はCMに活用されるといった二次利用ビジネスも考えられます。

宇宙空間でファッションショー

宇宙旅行が頻繁にできるようになり宇宙に滞在する人が増えると、微小重力環境を存分に生かした服のデザインを披露する宇宙空間でのファッションショーの開催も面白いかもしれません。

また、微小重力環境の有無に関係なく、宇宙に浮かぶ星や惑星をイメージした模様やデザイン、宇宙の水平線をイメージしたデザインなど、宇宙の美しさや神秘性を表現した服などもアイデアとして考えられます。

ファッションと科学技術の融合により、地球の外で未来的なファッション文化が形成され得ます。

月で着ることを想定した洋服のデザインが日本のデザイナーからすでに発表されており、宇宙ステーションをはじめとした宇宙空間での生活をイメージした洋服のデザインも今後普及してくると思われます。

宇宙ステーション内で音楽ライブ

宇宙ステーション内で、さまざまなアーティストによるライブコンサートも今後行われるかもしれません。

宇宙船や宇宙ステーションの窓から見える星や惑星、地球の景色は、地上のライブにはない特別な視覚的演出となります。また、宇宙の微小重力環境を活かした、演奏者や楽器が浮遊しながら演奏される光景は、地球ではなかなかお目にかかれないでしょう。

過去、実現には至りませんでしたが、アメリカの人気歌手レディー・ガガさんが宇宙でのライブ開催を目指したこともありました。今後宇宙でのライブが実現されれば、ライブ以外にも宇宙での作曲やミュージックビデオ撮影なども実施されるようになり、宇宙×音楽という新たなジャンルが普及してくるかもしれません。

参考リンク

レディー・ガガ、2015年に宇宙からパフォーマンス!?

地上と異なる重力環境でスポーツ

宇宙空間は、重力が地上とは異なります。例えば、月は地球の6分の1の重力であり、バスケットボールでは誰でもダンクシュートができるようになるでしょう。

また、宇宙ステーションは微小重力環境であるため、それを活かした新たなスポーツが生まれるかもしれません。
そうした試合を地球の人々にライブ配信し、地上では見ることのできないスポーツを楽しむというエンタメも新たに生まれるでしょう。

ちなみに、早ければ2026年に建設が始まる商用宇宙ステーション「Von Braun Rotating Space Station」には、バスケットボールのコートが作られる予定で、ほかにもロッククライミングやトランポリンといったアクティビティも設置される計画です。

参考リンク

宇宙飛行士のトレーニング時間に合わせて地上でトレーニング

宇宙飛行士が宇宙から帰ってきた後、介助を受けて歩いているところを見たことがある人もいるでしょう。

宇宙で一定期間生活すると、足や腰を中心に筋肉や骨が弱ってしまいます。そのため、宇宙飛行士は宇宙にいる間も少しでも筋肉を衰えさせないためにトレーニングをしています。

参考リンク

宇宙でからだはどうなる? | JAXA 有人宇宙技術部門

今後、宇宙に滞在する人が増えるとそのようなトレーニングが日課に組み込まれることが考えられます。トレーニングに慣れるということ、また、宇宙飛行士と一緒のトレーニングに挑戦したいという純粋な興味から、宇宙飛行士のトレーニングコンテンツを作成するというのも面白いかもしれません。

番外編① 人工流れ星

その名の通り、打ち上げ花火のように意図したタイミングで人工的な流れ星を作り、地上から楽しむエンターテイメントです。日本でも株式会社ALEが取り組んでいる事業で、2025年の事業化を目指しています。

人工流れ星が実現すれば、テーマパークでの花火が流れ星になったり、音楽フェスで流れ星を見る時間が設けられるなど、さまざまなイベントでの活用が期待されています。

プロポーズに人工流れ星を使うというロマンチックな演出もできるかもしれませんね。

なお、人工流れ星の実現にあたり、ALE社はデブリなどの環境影響が出ないような配慮もしています。

参考リンク

Space Entertainment & Climate Research – Sky Canvas (skycanvasglobal.com)

番外編② 宇宙葬

宇宙葬とは、宇宙を利用した故人を偲ぶための葬儀サービスのひとつです。現時点ですでに実現しているものとしては、故人の遺灰の一部をカプセルに入れ、人工衛星で打ち上げて地球上空を周回させたのち、大気圏に突入させるというものです。

また、今後月面基地の建設が行われ、宇宙ステーションのスペースが広くなると、宇宙空間上に供養するための空間ができ、宇宙供養といったサービスも始まるかもしれません。

民間宇宙ステーション開発に取り組むプレイヤー

最後に、民間宇宙ステーション開発に取り組む企業とその関連企業や組織を紹介します。

まずは民間宇宙ステーションそのものや、実験モジュールなどの開発に取り組む企業を紹介します。

民間宇宙ステーションの開発を進める企業

DigitalBlast(日)

DigitalBlastは、2018年創業の宇宙産業の活性化や宇宙業界の新事業創出をサポートするスタートアップです。2022年12月に「民間宇宙ステーション(CSS)構想」を発表しました。CSSには、「きぼう」日本実験棟の開発初期から携わり、プロジェクトマネージャー経験のある竹内芳樹氏がテクニカルアドバイザーとして参画しています。

構築する宇宙ステーションは、民間主導の地球低軌道や月・火星経済圏の構築や惑星探査における中間拠点としての機能を想定しています。

計画される3つのモジュールは、通信やドッキング機構、宇宙実験の環境などの機能を持ちます。

① 居住・コアモジュール
宇宙旅行に向けたクルー居住施設等の機能を提供。

② サイエンスモジュール
小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ(アマツ)」をはじめとする宇宙実験装置を設置し、企業・研究機関への実験環境を提供。採取した惑星資源の保存・貯蔵や宇宙ステーション内での製造までの機能を有する。

③ エンタメモジュール
宇宙滞在するクルーだけでなく地上居住者も楽しめるVRやメタバースによる宇宙空間を楽しむサービスやスポーツ、映画撮影などの多目的スペースを提供。

このほか、DigitalBlastは2024年中にAMAZをISSに設置・運用するため、Axiom Space社に打上げや軌道上での運用、実験容器の回収等の業務を委託しています。

Digital Blast社の民間宇宙ステーション(CSS)
Credit:DigitalBlast
source:https://digitalblast.co.jp/news/125/
計画する宇宙ステーションの構成モジュールとそれぞれの機能
Credit:DigitalBlast
source:https://www.youtube.com/watch?v=v6-LXdoL9HQ

ElevationSpace(日)

ElevationSpaceは2021年創業のスタートアップです。宇宙実験の成果物を持ち帰るサービスが少ない点に着目し、大気圏再突入技術を活用した小型宇宙利用・回収プラットフォーム「ELS-R」により、微小重力環境を生かした科学研究や製造等を実施します。

ELS-Rは無人であり、安全審査を簡易化できることに加えて、1回の実験でひとつの実験を行う構想のため、利用から回収までが早いことがメリットで、バイオサイエンス・半導体製造などの製造系や、エンタメなどへの利用が検討されています。DigitalBlast、IDDK、ユーグレナなどが利用予定で、Space BDと地球低軌道利用に関する覚書を締結しています。

実証機「ELS-R100」は2025年に打ち上げられる予定です。サービス機「ELS-R1000」は2028年に打ち上げられる予定でしたが、2023年6月に実証機の搭載枠が完売したことを受けて、ELS-R1000の打ち上げを2026年に前倒ししています。

ELS-Rのサービス概要
Credit:ElevationSpace

Sierra Space/Blue Origin

Sierra Spaceは、Amazonの創業者でもあるジェフ・ベゾス氏が創業したBlue Originと共同で商用宇宙ステーション計画「Orbital Reef」の製造を2026年着工、2027年運用開始予定で進めています。また、同社はNASAの「商用地球低軌道(CDFF)開発プログラム」に採択されています。

Sierra Spaceは、2021年6月にSierra Nevada Corporationからスピンオフする形で創業した企業です。Orbital Reefの建設にはSierra Spaceの宇宙往還機「ドリームチェイサー」とBlue Originの「ニューグレン」を利用予定です。

Orbital Reefは、ISSと同程度の容積で10人収容可能で微小重力を利用した科学実験・映画撮影などのエンタメに活用が可能です。条件付きですが、すでにCenterboro Productionsと映画の舞台としての利用契約を結んでいます。

「宇宙に浮かぶ複合型ビジネスパーク」のコンセプトのもと、地上のオフィスビルのように実験室や技術者の時間貸しのシステムを取ります。請求書や契約書の住所を、軌道上にすることができるのが特徴です。

その他、2022年6月に独自の宇宙飛行士訓練施設の設立を発表しており、来客を案内・指導、科学実験を実施する商業宇宙飛行士として3段階に分かれたスキルを教育するプログラムが計画されています。

Nanoracks

Nanoracksは2009年創業の宇宙サービスを提供するアメリカの企業です。同社は商業エアロックモジュール「NanoRacks Bishop airlock」をISSに取り付け、「きぼう」日本実験棟の5倍の容積のエアロックを利用した衛星放出サービスや、ロボットアームを用いた船外取り付けによる宇宙実験サービスを提供しています。

衛星放出は3種あり、CubeSatを一度に48U(1Uはキューブサットの大きさである10 cm×10 cm×10 cmの立方体1つを示す)放出可能なNanoracks CubeSat Deployer (NRCSD)、90 kgまでの衛星に対応したKaber Deployer、322 kgまでの衛星に対応したBishop Deployerがあります。船外取り付けについては、6つのスロットに227 kgまでのペイロードを搭載可能です。

Nanoracks社の商業エアロックモジュールNanoRacks Bishop airlock
Credit:Nanoracks
source:https://nanoracks.com/bishop-airlock/

Voyager Space、Lockheed Martinと常時有人のフリーフライングステーションであるStarlabの開発を計画しており、2028年に打ち上げ予定です。同社もNASAの「商用地球低軌道(CDFF)開発プログラム」に採択されています。

科学者と産業エキスパートが発見や新技術を共有できるような科学を進歩させるサイエンスパークを想定しており、ISSの1/3サイズの与圧室、科学実験室、ドッキングポート、電力推進要素(PPE)、ロボットアームが搭載されます。

Voyager Spaceがホテル事業大手のヒルトンと建築・デザインの分野で提携しており、ホスピタリティに特化したスペースの提供が予定されています。

Northrop Grumman

Northrop Grummanは1994年創業のアメリカの大企業です。2028〜2032年の間に3段階に分けてフリーフライングの商用宇宙ステーションの建設を検討しています。また、同社もNASAの「商用地球低軌道(CDFF)開発プログラム」に採択されています。

初期コストを最小限に抑え、時間の経過とともに機能を追加するオーバーラップステージ方式を採用しています。

初期は4名の収容に加え、クルーの乗車船、貨物船、3つのドッキングポートを有する基礎的なモジュールの打ち上げ、その後収容定員を8人に拡大し、外部パレットや科学実験用のエアロックなどを打ち上げます。

複数のドッキングポートは、探査クルーの模擬居住、実験室、クルーのエアロックや人工重力を発生させる施設に活用される予定です。

2022年2月にNASAが公開したSelection Statement For Commercial LEO Destinationsでは、同社がシグナス宇宙機やゲートウェイ計画に向けて製造中のHALOなどのノウハウや既存設備による技術成熟度・強固なサプライチェーンを有する強みを持つ一方、ECLSS利用に必要な電力の不足、容積の小ささや資金調達・マーケティング方面に弱みがあると評価されています。

Northrop Grumman社のフリーフライングの商用宇宙ステーション
Credit:Northrop Grumman
source:https://news.northropgrumman.com/news/releases/northrop-grumman-signs-agreement-with-nasa-to-design-space-station-for-low-earth-orbit

Axiom Space

Axiom Spaceは2016年創業のアメリカのスタートアップです。

Axiom Spaceの構想する宇宙ステーションAxiomStationは、AxiomHubというモジュールを3つISSに取り付けて最終的に切り離すことで完成します。

Axiom Spaceの商用宇宙ステーションAxiomStation
Credi:Axiom Space
source:https://www.thalesgroup.com/en/worldwide/space/news/step-closer-axiom-commercial-space-station

内装はフランスの著名なインテリアデザイナーPhilippe Starck氏が手がけており、卵型の形状のポッドに対して、キャビンは豪華なパッド入りの壁や家具、未来的な色に変化するLED、約250マイル離れた地球のパノラマビューを提供するとのことです。

世界有数のワインメーカー・Maison Mummとも提携しており、宇宙飛行中にテイスティングができる専用のワインボトル「マム コルドン ルージュ ステラ シャンパン」のデザインを2022年9月に発表しています。

著名なフランスのインテリアデザイナーPhilippe Starckの手がけたAxiomStation内装
Credit:Axiom Space

また、2023年4月に独自の訓練プログラムやインフラを用意することなく、各国の宇宙飛行士が微小重力環境に滞在したり、科学実験などを実施したりできるプログラムの提供を開始しています。

宇宙利用の推進に取り組む企業

続いて、宇宙ステーションそのものやモジュールの開発は行わないものの、宇宙利用を行いたい企業と宇宙ステーションの運用企業とを仲介する役割を持つ企業をいくつか紹介します。

JAMSS(日)

有人宇宙システム株式会社(JAMSS)は1990年創業の有人宇宙技術や宇宙利用を中心とする事業を行う日本企業です。業務として「きぼう」日本実験棟や宇宙ステーション補給機「こうのとり」の運用管制、宇宙飛行士や管制要員の訓練、宇宙実験などを実施しています。

特に宇宙実験の実施においては、実験機器のチェック、実験を行う宇宙飛行士の訓練や手順書作成などを担当し、入念な準備と実験実施の支援から結果回収までをサポートしています。

宇宙利用サービスとして、ISS欧州モジュールに設置されているICE Cubes Facilityと同社の小型恒温槽装置を用いて高品質なタンパク質結晶を生成、提供するサービスKiraraがあります。

2023年6月時点で4号機まで回収しており、企業研究だけでなく高校生向けに宇宙でのタンパク質結晶生成実験を実施するなど教育方面にも力を入れています。Kiraraを利用した世界初のCOVID-19創薬研究にかかわる宇宙実験も行われています。

高品質なタンパク質結晶を生成、提供するサービスKirara
Credit:JAMSS
source:https://www.jamss.co.jp/space_utilization/kirara/

ISSを利用したサービスとして東北復興ミッション2021、KIBO放送局、微小重力下の植物栽培、米や日本酒といった食品のブランディングサービスも行っています。

また、Axiom Spaceのミッションにて光触媒を用いた空気浄化装置の技術実証、KDDIと東京海上日動とISSの運用経験を生かした持続可能な自己管理行動を支える遠隔・健康管理支援サービスの開発など宇宙利用を通じた協業も複数行っています。

Space BD(日)

Space BDは2017年に創業した、衛星打上げ支援から宇宙利用事業まで幅広く手がけるスタートアップです。ISS船外の小型簡易曝露実験装置(ExBAS)を利用した宇宙用機器の実証実験やISS船内で高品質タンパク質結晶化実験サービスなど微小重力環境を利用したサービスを提供しています。

Space BDの宇宙実験サービスの一例
Credit:Space BD
source:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000076.000050164.html

その他、2度のスペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-を通じて企業ロゴの打上げによるブランディングサービスから企業研究への活用まで含めた打上げプロジェクトも実施しています。

過去にJAXAのアカデミア公募案件を中心に合計350以上のサンプルの打上げに成功、Space BDが受託しISSに送り届けた有償利用サンプルの合計は28と多くの実績を有します。

2023年6月には、微小重力環境を活用した宇宙実験を提案から実験設計・打上げまで一貫してサポートするサービスを発表しています。

SpaceTango(米)

SpaceTangoは2014年創業のアメリカのスタートアップです。CubeLabs™と呼ばれる1~9Uサイズの小型の実験装置を開発しており、液体の流量管理・温度管理などを自動で行いながら、顕微鏡や照明などを利用した目的に応じた環境を複数設定可能という強みがあります。

すでに29のミッション打上げ、152のペイロード打上げ、222の実験を実施しており、そのほとんどがバイオサイエンスや植物科学系です。例えば、加齢に伴う筋力低下の研究や微小重力環境が植物の成長に与える影響評価などがあり、珍しいものだとステーキ肉の培養実験、光ファイバーの製造、液体分離実験などが行われています。

また、再利用可能な再突入自由飛行軌道プラットフォームST-42を開発しており、アメリカ食品医薬品局(FDA)の要求するcGMP(Current Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)を満たした治療薬の軌道上製造を目指しています。

2018年10月には麻の植物生物学と特性をめぐる研究開発に焦点を当てた新たな子会社を設立しています。

Spacepharma(イスラエル)

Spacepharmaは2012年創業でイスラエルに本社を構えるスタートアップです。2U、3〜6U、24Uサイズで地上からリモートコントロールで各種実験を行うことができるアジャイルプラットフォーム「ミニラボ」を開発しています。

代表的な製品として、攪拌型リアクター、蛍光顕微鏡、可視光分光計を装備したSPmg、高度な生物学と生化学実験用のSPAd-ISS、軌道上で医薬品を製造するModern Timesがあります。実験用のチップとして組織培養や肝細胞の培養を行うorgan-on-a-chip、宇宙空間における液体の流れや化学構造の研究向けのlab-on-a-chipの2つを利用して各種実験を実施しています。

特に流体の扱いに長けており、流量の異なる複数のポンプを個別稼働させながら試薬製造や攪拌が可能で、1つのミニラボで100種類以上の実験が実現できます。

また、粉末や水分補給の技術を駆使して、打上げ時点で不活性化しがちな幹細胞を遠隔操作により再活性化し、打上げ後96時間まで生存させるlate-loading法を開発しています。

過去実施されたミッションは、Nexusシリーズ、DIDOシリーズ、SPAdシリーズで、ヒト骨格筋細胞の再生過程における微小重力の影響や喘息治療薬の有効成分の晶析など幅広い分野の実験が実施されました。

まとめと宇宙利用の未来を妄想

以上、すでに始まっている宇宙利用の実例と、今後登場するとみられる宇宙利用の展望、国際宇宙ステーションの歴史、商用宇宙ステーション事業に参入する企業を紹介しました。

宇宙に人が滞在するようになり、宇宙利用がさらに活発化した先には、宇宙ステーション内にバイオ分野の培養施設やその他宇宙空間で必要な物品の加工工場や半導体の製造工場ができ、そこで働く人々が現れるかもしれません。

例えば、今も需要の多いバイオ分野における実験については、高品質な結晶ができるという特性を活かし、さまざまな地上の病気の解決策につながる可能性があります。結晶化専用の施設を作り、そこに人が常駐して働くようになるということも決して夢物語ではないと、この記事を最後まで読んでいただいた方はイメージできるのではないでしょうか?

また、商用宇宙ステーションがさらに増えることで、宇宙空間のモジュールや工場を不動産として売買するビジネスも生まれるかもしれません。

そのような時代に突入すると、宇宙空間で働く環境を整えるために必要なものも、生活インフラのひとつとなりうるかもしれません。

本記事が、読者の皆さまが宇宙利用とは何かについて網羅的に把握する一助となれば幸いです。

国内外でさまざまなプレイヤーが宇宙ステーション開発に取り組んでいる今、本記事で紹介したような宇宙利用に興味がある企業にとっては、事業参入に乗り遅れずにスタートダッシュを切るのに最適な時期であるとも言えます。
宇宙利用に関して気になることや、事業検討に際してアドバイスが必要なことがあれば、宇宙業界の新規事業創出のサポートも行っているDigitalBlastに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

また、2023年12月に、DigitalBlastが企画・編集・執筆に携わった調査レポート『宇宙ビジネス事業創出・参入戦略』が日経BP社より発行されました。

宇宙ビジネスの市場規模予測やビジネスとしての有望領域の解説、国内外の宇宙ビジネスキープレイヤー紹介、新規参入の手引まで、宇宙ビジネスに取り組む方にとって知りたい内容が網羅された大ボリュームの一冊です。

上記のリンクから誌面サンプルを取り寄せることもできますので、関心のある方はぜひ御覧ください。

本記事はSPACE Media編集部とsorano meの共同制作によるものです。