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改良型へバトンつなげ 最後の「強化型イプシロン」6号機打上げへ

煙を出して飛んでいるロケット

中程度の精度で自動的に生成された説明

「強化型イプシロン」3号機打上げの様子。2018年1月18日。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月12日(水)、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)からイプシロンロケット6号機による革新的衛星技術実証3号機の打上げを行います。打上げ時刻は9時50分43秒です。予定時刻の打上げが延期された場合、当日打上げ可能な時間帯は9時50分43秒~9時55分11秒、当日打上げができなかった場合の予備期間は10月13日(木)~31日(月)となっています。当初は7日に打上げが予定されていましたが、ロケットからの発信データを受信する測位衛星との位置関係を解析したところ、ロケットの飛行状況を正確に確認できない可能性が生じたため、延期されていました。この記事では、最後となる「強化型イプシロン」の特徴や搭載衛星についてご紹介します。

1 最後の「強化型イプシロン」

イプシロンロケットは2013年から運用されている3段式固体ロケットで、これまで5機全ての打上げに成功しています。イプシロンは「革新を続ける」をテーマにしたロケットであり、2号機以降は「強化型」機体が打上げられてきました。「強化型」では、第2段モータ(=固体ロケット)の大型化による打上げ能力の向上と、搭載可能な衛星サイズの拡大が図られています。また、液体推進システム(PBS)の改良や複数衛星搭載システムの開発により、世界で拡大している小型衛星打上げ需要に対応しています。イプシロンの革新は「強化型」にとどまらず、2023年度には「イプシロンS」型の打上げが予定されています。2022年度から運用される「H3」とのシナジー効果により国際競争力を強化、打上げ輸送サービス事業を民間移管し、自立的・持続的な事業展開と日本の宇宙輸送産業規模の拡大を目指すロケットです。※1 今回の6号機は来年度の「イプシロンS」打上げを前にした、最後の「強化型」打上げとなります。

なお、「イプシロンS」による小型衛星打上げ市場への参入に先駆けて、6号機では株式会社QPS研究所が開発した小型SAR衛星「QPS-SAR 3号機・4号機」を打上げます。これは、イプシロンによる打上げ輸送サービス事業を担う株式会社IHIエアロスペース初の商業衛星打上げ受注です。※2

2 革新的衛星技術実証プログラムとは

革新的衛星技術実証プログラムは、大学や民間企業等が開発した機器や衛星へ、安価に宇宙における実証機会を提供するプログラムです。日本の宇宙技術の発展と、宇宙産業の国際競争力を高めることを目的とします。2019年度以降2回の打上げ実証が行われており、残り5回の打上げが計画されています。なお、実証テーマは通年公募されています(詳しくはこちら、JAXAサイトへリンクします)。今回の3号機は、7つの実証テーマを搭載した「小型実証衛星3号機(RAISE-3)」と、それぞれ実証テーマを持つ超小型衛星3機、キューブサット5機の、9衛星15テーマで構成されています。なお、前述の商業衛星打上げに伴い、超小型衛星3機は別のロケットで打上げられます。※3

「RAISE-3」と革新的衛星技術実証3号機ミッションマーク(Credit:JAXA、※4)

3 各衛星の紹介

革新的衛星技術実証3号機の各テーマと提案機関は以下の通りです。※5

〇小型実証衛星3号機(RAISE-3)

・低軌道衛星MIMO/IoT 伝送装置 LEOMI/日本電信電話株式会社

・ソフトウェア受信機 SDRX/NECスペーステクノロジー株式会社

・民生GPU実証機 GEMINI/三菱電機株式会社

・水を推進剤とする超小型統合推進システム KIR/株式会社 Pale Blue

・小型衛星用パルスプラズマスラスタ TMU-PPT/合同会社先端技術研究所

・膜面展開型デオービット機構 D-SAIL/株式会社アクセルスペース

・発電・アンテナ機能を有する軽量膜展開構造物 HELIOS/サカセ・アドテック株式会社

〇超小型衛星(別のロケットで打上げ)

・X線突発天体監視速報衛星 こよう KOYOH/金沢大学

・陸海域分光ビジネス実証衛星 うみつばめ PETREL/東京工業大学

・宇宙テザー利用技術実験衛星 STARS-X/静岡大学

〇キューブサット

・編隊飛行技術試験衛星 MAGNARO/名古屋大学

・民生用デバイス利用実証衛星 MITSUBA/九州工業大学

・海洋観測データ収集IoT技術実証衛星 KOSEN-2/米子工業高等専門学校

・一体成型技術実証衛星 WASEDA-SAT-ZERO/早稲田大学

・CubeSat 搭載用超小型マルチスペクトルカメラ実証衛星 FSI-SAT/一般財団法人未来科学研究所

一覧すると、高等専門学校から一般企業まで様々な組織からテーマが提案されており、テーマ内容も、水による推進システムや3D プリンタによる一体成型技術の実証など多種多様であることがわかります。より詳しい内容については、こちら(JAXAサイトへリンクします)をご覧ください。

テーマのひとつ、「WASEDA-SAT-ZERO」機体イメージとミッションマーク(Credit:JAXA、※4)

今回の記事では、イプシロンロケット6号機による革新的衛星技術実証3号機についてご紹介しました。「強化型」として有終の美を飾り、IHIエアロスペース初の商業衛星打上げを成功させて次世代の「イプシロンS」へバトンをつなぐことができるかどうか。打上げに注目です。

※1:「イプシロンロケット」JAXA宇宙輸送技術部門

https://www.rocket.jaxa.jp/rocket/epsilon/

※2:「IHIグループ初となる衛星打上げを受注 ~九州発のスタートアップ企業QPS研究所の商業観測衛星2基をイプシロンロケット6号機で打上げ~」株式会社IHI

https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2022/aeroengine_space_defense/1197838_3479.html

※3:「【第一部】イプシロンロケット6号機、革新的衛星技術実証3号機、QPS-SAR-3及びQPS-SAR-4」に関する説明会」JAXA | 宇宙航空研究開発機構

※4:「革新的衛星技術実証3号機」JAXA研究開発部門

https://www.kenkai.jaxa.jp/kakushin/kakushin03.html

※5:「革新的衛星技術実証3号機プレスキット」JAXA研究開発部門

https://www.kenkai.jaxa.jp/library/pamphlets/pdf/kakushin_presskit_3.pdf