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リスクある宇宙への挑戦を保険で支える! - 三井住友海上火災保険株式会社

現在の宇宙産業は大航海時代によくたとえられます。大航海時代に、新たな世界の開拓や資源の調達を求めたリスクある挑戦を支えたのは、保険という仕組みでした。そして、現代の宇宙開発においても保険はその挑戦を支えています。今回のインタビューでは宇宙事業に関する保険を手掛ける三井住友海上火災保険株式会社 企業営業第五部 航空旅行宇宙課 課長代理・福原氏, 久保田氏にお話を伺いました。

三井住友海上火災保険の宇宙保険事業

―本日はよろしくお願いします。はじめに、貴社が手掛ける宇宙保険について教えてください。

福原氏 はい。宇宙保険と一口に言っても実は、打上げ前保険、打上げ保険、寿命保険、宇宙賠償責任保険という4つに分かれています。まず打上げ前にはロケットや人工衛星を製造工場で組立し船などで射場まで輸送しますが、その間に事故などのトラブルに遭ってしまうことに備えたのが打上げ前保険で、要は打上げまでに発生する地上での損害を補償するものです。次に打上げが始まってから宇宙空間に到達するまでの間に対応するのが打上げ保険で、打上げの失敗等で人工衛星が損害を被ってしまった場合に補償するものです。その後、軌道上での人工衛星の運用に係るのが寿命保険です。そして最後の宇宙賠償責任保険は、ロケットの打上げや人工衛星の運用などによって生じた第三者への損害賠償責任を補償するものです。

三井住友海上 宇宙保険

―なるほど。どのような背景があってこのような宇宙保険に取り組むようになったのでしょうか。

福原氏 実は、今のMS&ADグループが初めて宇宙事業の保険に取り組んだのは、1975年に遡ります。当時の宇宙開発事業団 (NASDA, 現JAXA) のきく1号という人工衛星の打ち上げの際の宇宙賠償責任保険を日本で初めて引き受けました。

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三井住友海上火災保険 企業営業第五部 航空旅行宇宙課 課長代理・福原氏

―そんなに前に遡るのですか!そもそも打上げに関して保険があるというのは当たり前なのですね。

福原氏 宇宙開発のような巨大なリスクに保険は必要不可欠なものです。未知なる領域への挑戦は損害保険の発達の歴史とも重なります。例えば、15世紀ごろの大航海時代において、新しい大陸や香辛料の入手ルートを求めて船などに投資した商人にとって、難破して帰って来られなかったりした場合の損害は非常に大きく、ハイリスクな事業でした。そこで、リスクマネジメントとして海上保険が発達していきました。自動車が世の中に普及する際にも自動車保険がお役立ちしています。まさに宇宙における大航海時代の今現在において、私たちが保険という形でリスクを引き受ける役割を担うことで、皆さんの挑戦を支えていければと思っています。

宇宙保険が支える宇宙開発

―50年近く宇宙保険に取り組んでいるとのことですが、近年の宇宙産業の変化に合わせて、保険事業にも変化はあるのでしょうか?

福原氏 そうですね。もともと宇宙開発といえば通信衛星や気象観測衛星、軍事衛星など用途が限られていました。しかしこれからは、SAR衛星や光学衛星といった小型衛星のコンステレーション化をはじめとして、様々な宇宙事業が出てくるので、それに合わせて保険の形態も変わっていくでしょう。一番わかりやすいのは月面開発です。これまで民間事業者が月面に行って事業を行うというのはありませんでしたが、これからは民間事業者が月面開発を目指す時代です。そうなると、先ほど説明した4つの分類の保険ではカバーできない、新たな形の保険が必要になります。そこで現在、打上げから月面着陸までをシームレスに補償する「月保険」をispace社と共に開発しました。これは世界初の取り組みですね。

―なるほど。確かに月面開発に関する保険なんて、いままではなかった話ですよね。新しい動きとして、宇宙旅行に関する保険も開発していると伺いました。

久保田氏 はい、現在JAXAと協力して宇宙旅行保険事業の開発に取り組んでいます。訓練中から打上げ時、ISSでの滞在や地球への帰還といったそれぞれの段階において考えられるリスクについてJAXAから情報提供してもらい、私たちとしては保険事業で培ったノウハウを生かしてリスクの把握や評価を行うことで、今後の有人宇宙開発の発展に寄与していきたいと思っています。

三井住友海上火災保険 企業営業第五部 航空旅行宇宙課 久保田氏

―海外旅行でさえ様々な保険に入るわけですから、確かに宇宙旅行でも保険は必要不可欠ですね。宇宙業界での保険が他の業界の保険と異なるのはどのような点にありますか?

福原氏 とにかく失敗した時の損害が非常に大きいということです。民間のスタートアップ企業は増えてきていますが、そうした企業にとって資金繰りは大変な課題です。そんな中で、打上げの失敗や衛星の不具合が発生してサービスが提供出来ないといった場合には事業継続自体が困難になってしまいます。保険契約があれば、失敗しても保険金を受け取って次に進むことが出来るので、まさに保険の存在が事業の継続を支えているわけです。

―宇宙事業はお金の課題が特に大きいですよね。他の企業でも宇宙保険に着手していたりするのでしょうか?

久保田氏 ライバル企業の会社も宇宙保険事業に参入していますが、損害額が多くノウハウもなかなかないので、参入が難しい領域ではあります。宇宙保険において技術に精通しており、リスクを適切に評価できる人財も非常に少ないです。

福原氏 通常、社内での配属は大体4年程度でローテーションするのですが、宇宙業界に関しては保険の知識に加えて宇宙の知識も高度に求められるので、長い期間にわたり配属される傾向があります。また積極的に宇宙関連団体への社外出向や宇宙産業の人材採用をしていくことで、知識や経験を蓄えています。宇宙業界はやはり特殊ですね。

これからの宇宙保険と宇宙開発

―現状、宇宙保険事業を行っていく上でどのような課題がありますでしょうか。

福原氏 三つの課題があります。一つ目は参入企業が少ないことによる影響です。自動車保険や火災保険は世界にもたくさんありますが、宇宙保険は世界で30から40社くらいしか取り組んでいません。このように保険会社の数が少ないと、キャパシティの問題が出てきます。現在ギリギリだというわけではありませんが、やはり1社ごとの引き受け額とリスクには上限があります。

二つ目は保険料率のボラティリティーの高さです。宇宙保険は一つ大きな事故が起こると非常に大きな損害になってしまうことがあります。無事故が続けばよいですが、事故が発生すると宇宙保険マーケット全体で悪化した収支を改善するために保険料率が高くなってしまい、すべての宇宙事業者に高いコストがかかることとなってしまいます。

三つ目は保険料算出の難しさで、そもそも宇宙事業はリスクの算出自体が困難です。自動車などの保険なら、大数の法則に基づいて事故が起こる確率を決められます。宇宙は、歴史はあれども大数の法則を適用するほどの十分なデータがまだまだ少ないと感じています。

ただこうした課題は、市場がどんどん拡大し、打上げ機会が増えて参入する保険会社も増えて、データが蓄積していけば解決に向かうと思っています。

―今後、さらに宇宙事業を発展させていくにはどのような人材が重要になると考えていますでしょうか。

福原氏 アンテナを高く広く持っている人、すなわち知的好奇心が高い人です。様々な民間企業が宇宙の利活用を考えており、いままでにはない全く新しいことがたくさん行われてきています。そうしたことに対応できる柔軟な人材が大事ですね。

―最後に、今後の宇宙産業にどのようなことを期待していますでしょうか。

福原氏 いままで通信や気象予報というところで衛星データが利用されてきましたが、これからは保険事業にも宇宙を利用していきたいです。例えば、自然災害であれば宇宙から取得したデータを使って防災に繋げたり、あるいは自然災害で生じた損害を即座に算出して迅速に保険金を支払いしたりすることが考えられます。宇宙事業を保険で支えながら、保険事業もまた宇宙によって支えられる、ということを実現し、広く社会の発展に寄与していけたらと思います。

■三井住友海上 宇宙保険特設コンテンツはこちら

https://www.ms-ins.com/special/space/

以上、三井住友海上火災保険株式会社の福原氏・久保田氏のインタビューでした。宇宙開発において、保険はお金の面を支える存在として非常に重要な役割を担っています。宇宙産業の話題といえば技術的な内容が多いですが、産業として発展するには保険のようにあらゆる業界が関わっていく必要があるというわけですね。月面開発や宇宙旅行はこれからどんどん進んでいきますが、その背景にある保険の存在について考えてみると、より宇宙産業の発展を理解することができると思います。

                                      SPACE Media 編集部