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まるでSF!?未来のロケット技術“ビーミング推進”とは?

宇宙開発の歴史はロケット技術の開発に始まります。宇宙までロケットを飛ばして初めて、人工衛星や探査機、そして人間を宇宙まで運ぶことができるようになりました。ロケットといえば燃料と酸化剤を燃やして打ち上げるものですが、これ以外の方法で打ち上げる新しいロケットの研究が行われていることはご存じでしょうか。今回は、未来のロケット技術の一つであるビーミング推進について紹介したいと思います。

現在のロケットは化学ロケット

ロケットを打ち上げるには大きな推進力が必要です。現在のロケットではこの推進力を得るために燃料と酸化剤 (まとめて「推進剤」) の反応による化学エネルギーを利用しており、化学ロケットとも呼ばれています。

 

化学エネルギーを利用した方法では瞬間的に莫大な推進力を得ることができるのですが、ロケット全体の重さに対して推進剤が占める割合は9割以上にもなってしまいます。これは、推進力を得るために必要な推進剤も同時に打ち上げなければならないからです。

 

つまり、宇宙に運びたい物よりもはるかに大きなロケットを用意しなければならず、打上げのたびに大量の推進剤が必要となります。またロケットの機体も基本的に使い捨てであり、再使用するとしてもその回数は限られています。このため、ロケットの打上げコストは莫大になり、宇宙開発のための大きな障壁となっています。

 

そこで世界各国では、大量の推進剤を搭載する必要がない新しいロケット技術の研究が行われています。

H-IIAロケット42号機 Credit:三菱重工

三菱重工 | MHI 打上げ輸送サービス: H-IIA 42号機 カウントダウンレポート

 

ビーミング推進の利点

新しいロケット技術の一つとして、ビーミング推進というものがあります。これは、地上に建設したビーム発振源からロケットにビームを照射して、そのエネルギーでロケットを打ち上げる技術です。

 

打上げに必要なエネルギーを地上から供給できるため、推進剤をほとんど搭載する必要がありません。そのため、ロケットを軽量化することができ、複雑な推進剤システムも不要になり簡素な構造にすることができます。また、ビーム発振源は繰り返し使用することができ、メンテナンス性にも優れます。

 

ビーム発振源の建設には大きなコストがかかりますが、毎回の打上げにかかるコストは簡素なロケット製造とビームのための電気代のみとなり、これまでよりも大幅に打上げコストを下げることができると期待されています。例えば、後述するマイクロ波ロケットでH2Bロケットの第1段目を置き換えた試算では、打上げコストを74%コスト削減できるとされています[1]

ビーミング推進の概念図 Credit:東京大学 小紫研究室

マイクロ波ロットとは?|東京大学 小紫研究室・マイクロ波ロケット チーム (u-tokyo.ac.jp)

 

様々なビーミング推進

一口にビーミング推進といっても、様々な種類があります。

まず、ビームとしてレーザーとマイクロ波に大別されます。どちらも電磁波ですが、レーザーは波長が短く、マイクロ波は波長が長い電磁波です。レーザーは長距離まで照射した際にビームの広がりが少ないため、ロケットの受電器が小さくて済みます。一方マイクロ波は高出力の発振源を安く作ることができるという利点があります。

 

次に、推進力を得る方法として、ビームを連続的に照射するものと断続的に照射するものに大別されます。連続的に照射する方法では、ビームによって推進剤を加熱することで大きな推進力を得ることができます。加熱のエネルギーは外部から供給するので、化学ロケットよりもはるかに少ない推進剤で必要な推進力を得ることができます。

 

断続的に照射する方法では、ビームを集光して爆発させることで推進力を得ます。ここで爆発させるものは推進剤であったり、ロケット周囲の大気であったりします。低い高度では周囲の大気を利用することができるため、効率の良い打上げ方法であると言えます。

連続的なビーム照射の概念図 CreditNext gen launch technology news

Laser Propulsion – Space Launch Vehicle Technology (ngltnews.com)

 

断続的なビーム照射の概念図 Credit:東京大学 小紫研究室

RP Laser Propulsion Research Team (u-tokyo.ac.jp)

 

まとめ

今回は、未来の新しい打上げ技術の研究としてビーミング推進について紹介しました。ロケットといえば燃料と酸化剤を燃やして飛ぶものですが、実は推進力を得る方法はそれだけではないのです。実用化までは遠いかもしれませんが、化学ロケットの限界を超える新しい技術の発展に期待していきたいと思います。

[1] Masafumi Fukunari et al., “Development of a Novel Launch System Microwave Rocket Powered by Millimeter-Wave Discharge”, International Journal of Aerospace Engineering, vol 2018, article 9247429, 2018.


玉川 俊幸