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航空宇宙に不可欠なアルミ合金 – 日本を代表するアルミメーカー UACJグループ

数百トンを超える大型のロケット。しかし、この重量のほとんどが推進剤で占められており、宇宙に運べるもの (ペイロード) は数トンしかありません。少しでも効率よく輸送するためにはロケットのボディを軽くすることが非常に重要です。そこで活躍しているのが強くて軽量なアルミ合金です。

今回は、アルミニウム製造の技術から宇宙産業を支える株式会社UACJ鋳鍛(以下、UACJ鋳鍛)副社長・佐藤一慈氏と広報担当者にお話を伺いました。

UACJグループとは

本日はよろしくお願いします。はじめに、UACJの事業内容に関して教えてください。

広報) UACJは、加工したアルミニウム素材を各メーカーに供給しています。アルミニウムはボーキサイトという鉱物を製錬して作られますが、私たちは輸入したアルミ地金を加工して納入しています。圧延、押出、鋳造、鍛造などの加工方法があり、納入先の分野としてもアルミ缶から自動車、航空宇宙や建築など幅広いです。国内では43拠点を展開し、アルミ板のシェアは約50%で1位です。海外ではタイと北米を中心に40拠点を展開し、シェアは第3~4位です。

Credit:株式会社UACJ


アルミニウムにはどのような特徴があるのでしょうか。

広報) 様々な特徴があります。軽くて強い、錆びにくい、電気をよく通す、熱をよく伝える、低温に強い、などです。自動車をアルミ製にして軽量化することで燃費を向上させ、また航続距離も延びることから寿命も延びるので、自動車のライフサイクル全体としての環境負荷低減が試みられています。リサイクルしやすいというのも特徴で、アルミ缶のリサイクル率は2020年度で94%と言われています。リサイクルするとボーキサイトから作る時に比べてCO2の排出がたった3%で済みます。アルミ缶以外でも、自動車などを作る過程で出たアルミ端材をリサイクルして使用しています。

アルミニウムは強度が低いというイメージがありますが、自動車に使用して問題はないのでしょうか。

広報) 確かに鉄などに比べると強度は劣りますが、重量当たりの強度はアルミの方が大きく、同じ強度のものを軽く作るとなるとアルミの方が有利です。自動車のボディに使われるアルミは、顧客先での加工性と衝突時の安全性の両立が必要です。それを実現するための合金の設計技術や加工技術を有しているという点が私たちの強みでもあります。


Credit:株式会社UACJ

航空宇宙分野には欠かせないアルミニウム

航空宇宙分野向けのアルミ鋳鍛品はUACJ鋳鍛が担っていると聞きました。航空宇宙用のアルミニウム開発を始めたきっかけについてお聞かせください。

UACJ鋳鍛・佐藤氏 私たちは戦前からジュラルミン (アルミ合金の1つ) で航空機のプロペラ製造を行っていました。それをきっかけとして、1940年代に名古屋や関西にあった航空機やエンジンのメーカーにアルミニウムの材料を提供するという事業を始めました。いまでもこれら関連の企業に鍛造品を提供し続けています。宇宙産業については、1970年にペンシルロケットの材料を供給したというのが初めてです。そして現在、H-2ロケットからH-2Aロケット、H-2Bロケット、H3ロケットとイプシロンロケットに至るまで、国産ロケットの構造材に用いられるアルミニウムを納入しています。

アルミニウム材
Credit: 株式会社UACJ鋳鍛

 

日本の宇宙開発の初期から携われていたのですね。

UACJ鋳鍛・佐藤氏 そうですね。

 

航空宇宙分野で用いられるのは鍛造品とのことですが、それはなぜですか?鍛造品とはどのようなものなのでしょうか?

UACJ鋳鍛・佐藤氏 鍛造品は、品質に高い信頼性が求められる部材で用いられます。最初の素材のままだと金属組織が大きいので、プレスやハンマーで圧力を加え、組織を潰して強度を高めていきます。また、鍛造の場合材料の方向に応じて硬度や粘度を変えることができるという特徴もあります。

他のアルミニウムメーカーと比べた際、どのような点が貴グループの強みとなっているのでしょうか。

UACJ鋳鍛・佐藤氏 1つは設備です。私たちは国内最大級の油圧プレスを持っており、そのプレス圧の強さは1.5万トンにもなります。大きな熱処理設備もあります。こうした設備のおかげで大きな製品にも対応することができます。

もう一つは品質保証の認証で、第三者からの認証によって高い信頼性を維持しています。また宇宙分野での技術に関して言うと、国内で最大のリングを作ることができ、これはロケットの補助ブースターに用いられます。最大で直径3.6 mもの大きさのリングを鋳鍛で作ることができ、H3ロケットにも用いられる予定です。

アルミニウムのこれから

近年では、軽くて強い材料としてFRPなどの複合材料も用いられるようになってきました。こうした流れの中でアルミニウムが持つ強みはどのような点にあるとお考えですか?

UACJ鋳鍛・佐藤氏 確かに最近の航空機ではFRPが多く使われるようになってきました。しかし、FRPはリサイクルできないという欠点もあるという声をよく聞きます。一方アルミニウムはリサイクルできるし、原料が鉱石のため、土に戻しても将来的には土に還ります。

航空機の材料でもリサイクルする動きがあるのでしょうか?

UACJ鋳鍛・佐藤氏 アルミニウムは素材から最終加工品になるまでに端材が出ます。そして繰り返しになりますが、それらはすべて再び溶かしてリサイクルすることができます。現在、納入前に行った加工で出た端材をリサイクルしていますが、今後はさらに、納入後の加工で出た端材を回収して利用するということも考えています。

今後、アルミニウムメーカーとしてどのように宇宙産業を支えていきたいですか?

UACJ鋳鍛・佐藤氏 現在の話で言うとH3ロケットがありますね。純国産ロケットということで私たちも貢献していきたいです。また、小型ロケットの開発も活発になっており、民間企業様の進出も増え、その企業様にも素材を供給しています。ロケットの射場も少しずつ増えてきており、これからロケットの打上げが活発になっていくにあたり、大きいロケットにも小さいロケットにも対応して、そのベースを担う会社として日本の宇宙産業を支えていきたいです。

あとは月面ローバーのプロジェクトや月にホテルを作る構想もありますから、そういった分野にも携わっていけるように頑張っていきたいと思っています。これからの宇宙産業の発展が楽しみです。

Credit:インターステラテクノロジズ株式会社

以上、アルミニウムで宇宙産業を支えるUACJグループのインタビューでした。一口にアルミニウムといっても、保有設備や加工技術の信頼性などによって差別化し、他社に負けない競争力を持っています。次にロケット打上げを見た時には、構造を支えるアルミニウムにも思いを馳せてみてください。



SPACEMedia編集部