最近は宇宙ビジネスの裾野もひろがり、多くのメディアで宇宙に関する話題があふれています。多くの人が宇宙の謎や探求に好奇心や冒険心を掻き立てられていますが、実際のところ個人が興味をもって取り組めるほど「宇宙」は身近なものにはなっていません。確かに「宇宙」をついて知りたいと思っても学ぶのが難しく、気軽に体験できないとうイメージがまだ強い分野です。
このコラムでは、身近で学ぶことのできる「宇宙教育」についてご紹介します。
「宇宙教育」とは
宇宙教育とは、宇宙を素材とした教育であり、宇宙開発のトップリーダーである米国NASA(アメリカ航空宇宙局)では、全ての年代の学習者に向け、科学を体験し宇宙について学ぶためのプログラムを展開しています。特に、宇宙分野において科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の5つの領域を横断的に学ぶSTEM教育に力を入れています。最近は、さらにアート(Art)領域を加えたSTEAM教育が注目されています。日本でもJAXAの「宇宙教育センター」が小学校、中学校レベルの子どもたちを対象とした「宇宙教育」支援活動を行っています。また、高校や高専、大学などにおいても学生たちが宇宙技術に取り組む教育機会が増えています。
実は、こうした学校教育機関での取り組みのほかにも、多くの地域で「宇宙教育」活動が展開されています。今回は、第1弾として「日本宇宙少年団」についてご紹介します。
「日本宇宙少年団(YAC)」
日本宇宙少年団(YAC)は、「宇宙が子どもたちの心に火をつける」として、宇宙に関する科学や技術、宇宙での活動を素材に、幅広い人材育成を目指した活動を行っています。YACの理事長には宇宙飛行士の山崎直子氏が2021年に就任し、YAC大使にはJAXAの宇宙飛行士が勢ぞろいしています。
YACでは、主催イベントや宇宙関連施設の特別見学、宇宙飛行士、科学者、研究者、技術者などの講演会への参加や交流会といった幅広い活動をしています。外部の方でも申し込めるイベントもありますが、YAC団員として活動すると、日常的に継続して宇宙を学ぶ機会を得ることが出来ます。
YACは、全国に分団があり、各地域で根付いた活動をしています。YACの公式サイトによると、現時点では全国約140の分団や本部にて、約4,000名の団員が登録しています。
・各分団一覧:https://www.yac-j.or.jp/community/?m=pc&a=page_o_group_list
団員は年齢、性別問わず募集をしており、各分団で定期的に宇宙を素材にした工作や実験、自然観測、天体観察、野外活動などをしています。例えば、夏に水ロケットを工作することで宇宙技術のしくみを学び、他の団員と協力したり、自作のロケットをコンテストで競ったりすることで、宇宙を素材とした活動を自発的に愉しみながら活動しています。
水ロケット
「日本宇宙少年団」で活動するには
団員は、年齢問わずとしていますが、「日本宇宙少年団」であるだけに、子どもたちが中心となっています。一方で、大人である個人としてYACというコミュニティで宇宙教育に関わりたいという方については、団員になる以外の関わり方で活動ができます。
YACの活動は、各分団の運営に欠かせない団長や宇宙教育リーダーをはじめYACを本業としていない教員、会社員、自営業、学生、主婦など様々なバックグラウンドの方による地域のボランティアで成り立っています。
宇宙教育リーダーになるには、YACの理念を理解し、宇宙を通じた青少年育成をしたいという方であれば、宇宙に関わる経験や学歴、資格は問わず応募することができます。ただし、高校生を除く18歳以上で、JAXA宇宙教育センターが実施している宇宙教育指導者育成セミナーを修了することなどの要件があります。新規分団の結成については、ゼロからのスタートになると思いますので、地域の賛同者とYAC本部とのやりとりや調整が必要になりますが、新たな宇宙教育のコミュニティをつくりたい!という方はぜひ検討されてはいかがでしょうか。
・団員募集についてはこちら→http://www.yac-j.com/yac/joinus/
・リーダー募集についてはこちら→http://www.yac-j.com/yac/leader/
・新規分団の結成についてはこちら→http://www.yac-j.com/yac/newgroup/
次回も引き続き身近な「宇宙教育」活動をご紹介していきたいと思います。
Sahoko Kito