
日本国内でもさまざまな宇宙ビジネスが展開されるようになった昨今、宇宙開発や天文関連だけでなく、宇宙ビジネスをテーマとした書籍も発行されるようになってきています。宇宙関連でさまざまなテーマの書籍が出版されるようになったことは、宇宙業界のすそ野が広がりつつあることを示しているのかもしれません。
今回は、2025年7月までに出版された宇宙関連書籍の中から、編集部が注目する書籍をご紹介します。
猛暑が続くこの夏、涼しい屋内で書籍を通じて宇宙ビジネスの新知見や新たな気づきを得てみてはいかがでしょうか。
目次
『投資家が教える宇宙経済』(チャド・アンダーソン/著、加藤喬/訳、並木書房)

宇宙ビジネスの最大市場であるアメリカで、10年以上にわたって投資家として活躍する宇宙経済のエキスパートである、チャド・アンダーソン(Chad Anderson)氏による1冊。
同氏は宇宙関連企業に特化した投資会社スペース・キャピタル(Space Capital)の創業者で、現在世界的に事業を展開しているプラネット・ラボ(Planet Lab)など現在の宇宙ビジネスを牽引する企業に投資を行ったことで知られています。
そんな同氏が本書で語るのは、劇的に成長する宇宙経済の現状・将来展望と参入を考える人に向けたキャリア戦略。数々の宇宙スタートアップに投資し、それらの企業の内側からも業界をつぶさに見ることができる著者ならではのインサイトが散りばめられています。宇宙ビジネスのみならず、起業や新興市場全般に関心をもつ方にもおすすめです。
主な目次
序章 宇宙で始まる新しい産業革命
・宇宙は誰のものか-投資と参入のハードル
・著者の原点と転機-宇宙ビジネスへの道のり
・仲間とチームの力-実務家たちとの出会い
第2章 宇宙経済の地図を描く -収益構造と主要プレイヤーを知る
・いまや当たり前のGPS機能
・目を見張るGEOINT(地理空間情報)の技術革新
・衛星通信(SatCom) ほか
第3章 宇宙ビジネスの立役者たち -なぜ宇宙を目指すのか?
・地球を毎日、見つめる-プラネット・ラボの軌道上革命
・設計の〝裏側〟から宇宙を変える-バイオレット・ラボの挑戦
・空の渋滞に挑む-リオラボの宇宙ゴミ監視システム ほか
第4章 宇宙ビジネス最前戦 -スペース・エコノミーの起業家プロフィール
・国家を越えて、起業家が宇宙を変える
・未知の市場へ-宇宙経済というブルーオーシャン
・衛星産業マトリックスから見えてくる未開拓分野
第5章 軌道を定める -共同創業者、顧客、資本
・「誰が顧客か?」から始まる宇宙スタートアップの成功法則
・最初の顧客がすべてを決める-宇宙経済で生き残るために
・地球を観る商機-スカイ・ウォッチ社が描く宇宙データの未来 ほか
第6章 アポロからスペースX、そしてその先へ -宇宙野心の衰退と復活
・アポロ計画の終焉とレーガン大統領のISS建設計画
・スター・ウォーズ計画が残した光と影-冷戦・政策・商業化の40年
・「高いほど儲かる」-イノベーションを阻んだ構造的病理 ほか
第7章 勝ち馬を選ぶ -宇宙ビジネスへの投資
・宇宙に便乗する詐欺師に用心-投資に必要な冷静な目
・打ち上げコスト低下が生んだ連鎖反応
・スペースXが開いた扉-宇宙市場の立役者 ほか
第8章 宇宙ビジネスの扉を開く -最大のチャンスをつかむ
・エンジニアだけが宇宙を目指す時代は終わった
・スペース・キャリア最前線-広がる宇宙、足りない人材
・適職を見つける-〝宇宙で働く〟という選択肢 ほか
第9章 金の卵を先につかめ -人材を制する者が宇宙を制す
・最初の一人を間違えるな-宇宙ビジネス成功のカギは創業チームにあり
・最初の仲間が会社を作る-宇宙スタートアップの人材戦略
・人材をどこで見つけるか-宇宙スタートアップの採用戦略 ほか
第10章 宇宙経済の未来 -安く、手軽に、安全に宇宙に行けるようになると何が起こるか?
・スターシップ革命-宇宙輸送が変えるビジネスの新常識
・宇宙ステーションから月面工業まで-四つの新興宇宙産業ビジネス
・スターシップが宇宙ステーションになる日 ほか
書籍概要
発行日:2025年7月25日
価格:1,980円(税込)
判型:四六判
頁数:324ページ
出版社サイト:http://www.namiki-shobo.co.jp/
『宇宙から見る地球 観測衛星が切りひらく驚きの未来』(村木祐介/著、扶桑社)

「宇宙活動はいま、ビジネスとSDGsの最前線だ!」と帯文にもある通り、気候変動など地球規模の課題、そして地球規模のビジネスにも深くかかわる領域となっている宇宙。
本書では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)第一宇宙技術部門 衛星利用運用センターに所属しながら、宇宙ナビゲーター「コスモさん」としてアウトリーチ活動も積極的に行う村木氏が、豊富な画像とともに、衛星地球観測の技術的なポイントや、ビジネス・SDGs(持続可能な開発目標)への貢献などについて解説しています。
衛星地球観測は、技術的な専門性が高く、またビジネスや社会課題への応用の幅も広いため、どうやって理解を深めていけばよいか迷う分野でもありますが、写真が多く気軽に手に取ることができる本書は、その入口として最適な1冊です。
主な目次
1章 宇宙から地球を見るのはなぜ大事?
・身近になってきた宇宙
・宇宙と人工衛星
・宇宙から地球を見る「衛星地球観測」 ほか
2章 宇宙から地球を見るには?
・地球観測衛星のキホン
・地球を見る衛星の「眼」
・個性豊かな地球観測衛星 ほか
3章 宇宙から地球を見て何をする?
・大きく広がる衛星地球観測のビジネス利用
・安心安全で持続可能な暮らしを支える衛星地球観測
・新しい活用方法を考えよう ほか
4章 宇宙から見る地球が「自分ゴト」になる?
・衛星地球観測を仕事にする
・生活の中で宇宙から見る地球を感じる
・衛星地球観測が活躍する未来社会 ほか
5章 宇宙から地球を見て何を感じとる?
・宇宙から見る美しく儚い地球
・宇宙旅行で楽しもう:地球の見所ツアー
・宇宙から地球を見て「新しい視点」を得る ほか
特別対談
宇宙飛行士 油井亀美也と語る人間と人工衛星の眼で共に見る地球
書籍概要
発行日:2025年3月18日
価格:1,980円(税込)
判型:A5判
頁数:150ページ
出版社サイト:https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594099633
『宇宙ビジネス 星を見るのが好きな人から専門家まで楽しく読める宇宙の教養』(中村友弥/著、クロスメディア・パブリッシング)

宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長として長年宇宙ビジネスの現場を取材している中村友弥氏による、宇宙開発・宇宙ビジネスの基礎知識から将来期待される新市場までをあますところなく学べる本書。
すでに、スマートフォンによる衛星通信やGPSによるナビゲーションなど、宇宙技術は日常生活に浸透しています。サブタイトルに「宇宙の教養」とあるように、本書を読めばこうした技術を活用した宇宙ビジネスの実態が理解できるとともに、まだまだハードルが高いと思われがちな軌道上サービスのようなビジネスも絵空事ではないことが実感できるはず。
宇宙ビジネスの世界でいま何が起き、どんな取り組みが進んでいるかがわかる本書は、宇宙ビジネスに飛び込みたいと思っている方におすすめの最新入門書です。
主な目次
序章 Is Investing Huge Money in Space Business Worth It? 宇宙ビジネスに莫大なお金を投資する価値はあるのか
第1章 The Surprisingly Close World of Space Business 「できたらいいな」から学ぶ意外と身近な宇宙ビジネスの世界
・SF作家がきっかけとなって生まれた巨大なビジネス
・SFはどこまで現実に?宇宙ビジネスの市場内訳
・スプートニク・ショックからアポロ計画までの宇宙開発時代
第2章 The World of Communications Business スマートフォンから学ぶ通信ビジネスの世界
・スマートフォンで通話やインターネットを利用できるのはなぜ?
・通信衛星で災害時にも情報が届けられる
・30億人の新たなビジネスチャンス
第3章 The World of Positioning, Navigation and Timing Business GPSから学ぶ測位ビジネスの世界
・カーナビや地図アプリで現在地がわかるのはなぜ?
・位置情報が無料で使えるのはなぜ?
・誤差数センチ、日本肝入りの測位システム「みちびき」
第4章 The World of Earth Observation Business 宇宙飛行士の視点から学ぶ地球観測ビジネスの世界
・宇宙飛行士が見た地球の変化
・地球観測衛星のトレンドと衛星データの6つの強み
・地球がここまで丸裸に…… 50年間磨き続けた人類の叡智
第5章 The World of Space Infrastructure ロケットから学ぶ宇宙インフラの世界
・今、宇宙に物を運ぶ手段はロケットしかない
・衛星数の急増と今後の市場規模予測
・ロケットビジネスで日本が有利な理由
第6章 The World of In-Orbit Servicing 宇宙のゴミ掃除から学ぶ軌道上サービスの世界
・宇宙ゴミが問題になる理由
・いつから宇宙ゴミ問題が顕在化したのか?
・宇宙ゴミを除去するための技術開発
第7章 The World of Life in Space ISSから学ぶ宇宙生活の世界
・宇宙飛行士はISSで何をしている?
・極限環境から生まれた地上の便利グッズとPRADAの宇宙服
・こんなものまで?多種多様な宇宙食の世界
第8章 The World of Beyond-Lunar Business アポロ計画から学ぶ月以遠ビジネスの世界
・アポロ計画からアルテミス計画へ
・イーロン・マスク氏が目指す人類の火星移住計画
・アルテミス計画や地球外移住で生まれる新たなビジネスチャンス
第9章 The World of People Working in Space 宇宙飛行士から学ぶ宇宙で働く人の世界
・宇宙飛行士は人類の未来を担う科学の最先端に触れる仕事
・宇宙ビジネス時代に求められる人材
・学生でも宇宙ビジネスに参加できる
書籍概要
発行日:2025年2月21日
価格:1,848円(税込)
判型:四六判
頁数:312ページ
出版社サイト:https://cm-publishing.co.jp/books/9784295410652/
『宇宙を編む はやぶさに憧れた高校生、宇宙ライターになる』(井上榛香/著、小学館)

フリーランスの宇宙ライターとしてさまざまなメディアに記事を寄稿している井上榛香氏によるエッセイ。
子どもの頃から宇宙への気持ちを持ち続け、先輩ライターやエンジニア、起業家から宇宙飛行士まで、宇宙業界のさまざまなプレイヤーと交流を深めながら着実に実績を積み上げてきた過程が爽やかに描かれます。種子島やNASAケネディ宇宙センターでのロケット打上げ取材、取材で接する人々の横顔など、あまり知られることのない取材の裏側を知ることができるのも本書の魅力といえます。
また、印象的なのは筆者のウクライナ留学とその後の国際情勢。宇宙は平和な空間であるべきですが、利活用が進むにつれ、地上での争いが影響してしまう面があることを感じます。そうした状況への思いも含めて記載されており、筆者の人柄が感じられる好著です。
主な目次
第1章 宇宙を書く仕事の舞台裏
・北海道発、牛糞ロケット・宇宙に挑む人びと
・炎と轟音の牛糞ロケットエンジン
・ペール・ブルー・ドットの表札 ほか
第2章 ロケットには希望を乗せて
・舌が宇宙に連れて行く
・ウクライナ留学へ
・キーウプラネタリウムと不思議なスープ ほか
第3章 夜を越えたその先に
・宇宙業界に伝わる怖い話
・打ち上げの成功と失敗
・行ってらっしゃい、人工衛星 ほか
書籍概要
発行日:2025年2月5日
価格:1,870円(税込)
判型:四六判
頁数:202ページ
出版社サイト:https://www.shogakukan.co.jp/books/09389190