本来、人工衛星は太陽電池パネル利用し、太陽の光を電力に変えて動いていますが、宇宙空間での姿勢や軌道の制御には、ヒドラジンという猛毒な化学剤を使用し、スラスターのようなもので物理的に移動しています。オール電化衛星は、この化学剤による推進系と呼ばれる部分をすべてイオンエンジンに変え、衛星の動力源がすべて電気になった衛星のことです。
Credit: Boeing
近年の通信衛星は、通信の大容量化と高速化により、衛星のサイズが大型になり重量も重くなるという課題がありました。実は、従来の衛星の質量の半分は化学剤による推進系が占めているのです。コストのかかる衛星質量とサイズを減らすため、世界中の通信衛星事業者が人工衛星のオール電化を推進しています。これらの需要を受け、ヨーロッパの航空宇宙機器開発製造会社のAIRBUS社は、ESA(欧州宇宙機関)やCNES(フランス国立宇宙研究センター)の支援を受け、オール電化衛星バスシリーズである“Eurostar Neo”を開発中です。開発は順調に進んでおり、今年の2月には“Eurostar Neo”プロジェクトにおける初のサービス・通信モジュールの統合に成功しています。また、JAXAはオール電化衛星である“技術試験衛星9号機”の打ち上げを2022年に予定しています。
SPACEMedia編集部