• HOME
  • ニュース
  • SpaceXの「Starlink」とKDDIの提携で何が変わるか

SpaceXの「Starlink」とKDDIの提携で何が変わるか

日本の大手通信会社であるKDDI株式会社(以下KDDI)とスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(以下SpaceX)の衛星ブロードバンド事業「Starlink」との業務提携が2021年9月に発表されました。 Starlinkは小型の人工衛星を用いた通信サービスにおいて世界の先頭を走る存在ですが、今回の業務提携で私たちの生活にどのような影響があるのか、深掘りしていきます。   ■目次 (1)SpaceXの「Starlink」とは (2)「Starlink」の特徴 (3)KDDIとの業務提携で何が変わるのか  

(1)SpaceXの「Starlink」とは

民間企業として史上初めて、民間人だけが搭乗した宇宙船による地球周回飛行と地球への帰還、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングなどに成功したSpaceXは、近年の宇宙産業を牽引する存在として、その名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。   そのSpaceXがインターネットアクセスサービスの提供を目的として、複数の人工衛星を地球低軌道に投入する(専門用語で低軌道衛星コンステレーション)計画をStarlinkと言います。   Starlink衛星は地表から約550kmの低軌道を飛行します。2021年半ば時点で1600機を超える衛星を軌道上に投入し、世界18ヶ国でベータ版を含めたサービス提供を開始しています。  

打ち上げ前のStarlink衛星 Credit:SpaceX

 

(2)「Starlink」の特徴

Starlinkは、緯度が60度以下のほぼすべての地域に衛星からの電波を届けることが可能ですが、国際的な条約や規定の制限により、実際にサービスを利用できる国・地域は限られています。利用可能な国・地域に関しては、「Starlink kit」と呼ばれる受信用小型アンテナやWiFiルータなどのセットを設置することで、家庭でも利用することが可能になります。   このようなStarlinkですが、次のような特徴があります。  
  • 低価格 月額99ドルで、サービス提供されている国・地域であればほとんどの場所で利用可能になります。 また、月額使用料は世界一律ですが、Kitの送料や税金は国によって異なるので注意が必要です。
 
  • 遅延が少ない 地表から約3万6000kmの静止軌道(一部は準静止軌道)を用いる衛星通信と比べて、Starlink衛星は地表から約550kmという低軌道を飛行するため、地表と衛星の距離が近いことにより、大幅な低遅延を実現しています。
 
  • セットアップが簡単 使用するためには、499ドルのStarlink kitが必要になります。これは自分で設置しなければならないのですが、マニュアルを利用して容易に設置ができるようです。また、2021年11月には、このキットの改良が発表されました。
  •  

Starlink kitの受信用小型アンテナとWiFiルータの性能(左が旧型、右が新型)

Credit:SpaceX

 

(3)KDDIとの業務提携で何が変わるのか

冒頭で紹介した通り、2021年9月にStarlinkとKDDIによる業務提携が発表されました。 KDDIはこの業務提携により、「これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島しょ地域、災害対策においてもauの高速通信をご体験いただけるよう、2022年をめどに、まず全国約1,200カ所から順次導入を開始します」と述べています。 これは一体どういうことでしょうか。   まずStarlinkのように、人工衛星を利用した通信サービスを「衛星通信」と言います。 衛星通信は地上に設置されたアンテナから人工衛星に電波を送信し、人工衛星で電波を増幅したのちに再び地上に送信する技術です。身近なところだとCS放送も衛星通信を利用したサービスです。

一般的な通信とStarlinkを利用した衛星通信の違い(SPACEMedia作成)

  一般的な通信手段では、山間部や離島までケーブル(光ファイバー等)を設置するために多額のコストがかかり、ケーブルの代わりに無線通信を使うこともできますが設置にコストがかかります。 しかし、Starlink衛星を介してゲートウェイと携帯電話基地局にStarlinkの装置を接続することで、ケーブルなしに山間部や離島に高速な携帯電話のサービスを届けることが可能になります。 ※(2)「Starlink」の特徴》で紹介した、Starlink kitを導入して各家庭で利用できる話とは異なる点には注意が必要ですが、これまでau回線を利用できなかった山間部や離島でも、高速なau回線が利用できる未来が待っているかもしれません。  

SPACEMedia編集部