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日本のロケットがノルウェーから発射 SS-520-3号機打上げ 

JAXAは2021年11月4日、ノルウェーのスバルバードロケット実験場から、 SS-520-3号機の打上げに成功しました。観測ロケットとしての SS-520ロケットの打上げは、2号機の2000年以来21年ぶりとなります。今回は、この SS-520-3号機ミッションについてご紹介します。

 

■目次

(1)SS-520ロケットの概要

(2)3号機のミッション

(3)なぜノルウェーから打上げられたのか?

 

(1) SS-520ロケットの概要

SS-520ロケットは2段式の固体燃料観測ロケットで、全長約9.5m、直径520㎝の小さなロケットです。小型の第3段ロケットを搭載することで、小型衛星を打上げることもできます。2017年の4号機で小型衛星の打上げに挑戦しましたが失敗。2018年の5号機で初めて小型衛星の打上げに成功しました。その小型さは「世界最小の衛星打上げロケット」としてギネス記録にも登録されるほどです。今回の3号機は、1号機・2号機と同様に観測目的で打上げられました。

 

SS-520-3号機 Credit:JAXA

 

(2)3号機のミッション

高緯度地方、特に北極や南極に近い地域(極域)には、「カスプ」と呼ばれる磁場の小さい領域が存在します。太陽から放出されたプラズマ(1)粒子(太陽風)がカスプ領域の電離圏(高度100~1000㎞)に入り込むと、「波動‐粒子相互作用(2)」と言われる現象が発生し、電離圏から大気中イオンが流出します。今回の打上げ実験は、現象が起きている場所に直接ロケットを送り込みます。ロケットに搭載した観測装置と地上に設置したレーダーやカメラによる観測により、この現象のメカニズムを解明することが目的です。このような大気イオンの流出は、金星や火星といった地球以外の天体でも観測されており、この打上げ実験は他の天体の研究にも役立つことが期待されています。

 

(1)非常に高い温度では、原子核から電子が離れ、陽イオンと電子に分かれる「電離」とよばれる現象が発生します。この電離により生じる、+や-の電気を持つ粒子を含む気体をプラズマと呼びます。

(2)非常に高いエネルギーを持つプラズマ粒子によって電離圏に波動が発生し、この波動によって電離圏の大気イオンが加熱・加速される現象。

 

(3)なぜノルウェーから打上げられたのか?

極域のカスプ領域は、地球の昼側に発生します。カスプ領域の発生条件をクリアしてロケットを送り込むことができる射場は、ノルウェーのスバルバードにしかないために、SS-520-3号機はノルウェーから打上げられました。今回の実験はノルウェー宇宙庁の協力のもと行われたものであり、宇宙開発における国際協力の重要性がうかがえます。

 

SS-520-3号機打上げの様子 Credit:JAXA

 

今回は、ノルウェーから打上げられたSS-520-3号機についてご紹介しました。遠い北の異国で打上げられた日本のロケットに、想いを馳せてみてはいかがでしょうか。