2021年11月9日、イプシロンロケット5号機が打上げられました。今回は、このロケット打ち上げ成功を記念して、ロケット燃料の秘密についてご紹介します。
ロケットの燃料には、大きく分けて固体燃料と液体燃料の2種類があります。どちらにも、必ず「酸化剤」という酸素を発生させる物質が搭載されています。ロケットが飛行する宇宙には酸素がないため、燃料と一緒に酸素も積んでおかなければ、燃料を燃やして推力を得ることができません。また、ロケットの重さの9割は燃料と酸化剤であり、コストを抑えるために徹底的な軽量化がなされています。
液体燃料
液体燃料ロケットは、燃料と酸化剤を別々のタンクに搭載し、それぞれをエンジンで混ぜて燃やすことで推力を得ます。構造が複雑なため、開発や運用がとても難しいです。その一方で、推力を変えることや、一旦燃焼を止め再び点火する、といった細かなコントロールができます。燃料と酸化剤の組み合わせには「ケロシンと液体酸素」や「ヒドラジンと四酸化二窒素」など様々なものがあります。現在、日本をはじめ世界中で広く使われているのは「液体水素と液体酸素」の組み合わせです。この組み合わせの場合、燃焼しても水しか発生しないため、燃焼ガスは透明になります。
日本の液体燃料ロケット「H3」に搭載予定のLE-9エンジン 複雑な構造が見てとれる
Credit:JAXA
固体燃料
固体燃料ロケットは、燃料と酸化剤を混ぜ合わせて固めたものを搭載し、それを燃やすことで推力を得ます。ロケット花火のような構造をしており、シンプルで、運用も容易です。しかし、一度燃焼を始めると途中で止めることができず、細かなコントロールはできません。
燃料には主に合成ゴムとアルミニウムが使用され、オレンジ色の燃焼ガスと白煙が噴出されます。固体燃料ロケットの燃料と容器、点火装置、ノズル(ガスの噴き出し口)を合わせ「モーター」と呼ばれます。
日本の固体燃料ロケット「M-V」のモーター内部 黒と茶色の部分が固体燃料
Credit:JAXA
日本で現在運用されているイプシロンロケットとH-IIAロケットの燃料について解説します。まず、イプシロンロケットは固体燃料を使用しており、オレンジ色のガスと白煙を噴き出しながら飛行します。一方で、H-IIAロケットは液体燃料を使用しており、液体水素と液体酸素を燃やしているため、燃焼ガスは透明となるはずです。しかし、H-IIAロケット打上げの様子を見てみると、白煙が勢いよく噴き出ています。これは、側面に搭載している2本の固体燃料補助ロケット(ブースター)から噴出しているもので、よく見ると中央のエンジンからは透明な燃焼ガスが出ているのが分かります。
H-IIAロケット打上げの様子 固体/液体の違いがよく分かる
Credit:JAXA
今回は、ロケットの燃料についてご紹介しました。ロケットの打上げを見る際には、燃料や燃焼ガスの違いに注目してみてはいかがでしょうか。