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国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウムDay3 -2030年までの「成果の10年」 ポストISSに向けて–

『国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウムDAY3』が2月2日にYouTubeでのLIVE配信で開催されました。4日間を通して、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の利用について、サイエンス利用やビジネス利用、技術実証利用など、熱く議論が繰り広げられます。

DAY3では、米国のNASA・日本のJAXAからISSに関わる専門家の方々を招き、2030年に退役が決まったISS、そしてその後継となる低軌道の商用プラットフォームについて、モデラ―の方々による日米両国の視点から、話題提供と、視聴者の方々から寄せられた質問の回答が行われました。

今回はDAY3の「話題提供」の一部をご紹介します。

Current Status of CLD Program

現在、NASAは地球低軌道のほか、月・火星についてのミッションを継続しており、組織としてもエキサイティングな時期となっています。そんなNASAの地球低軌道における今後10年間の計画について、ワシントンDCのNASA本部でISS担当ディレクターをされているRobyn Gatens氏が解説しました。

 

Robyn Gatens氏:NASAは2021年にはISSへのクルー(宇宙飛行士)打ち上げを5回行い、春には短期間ですが11人が同時滞在しました。滞在したクルーはISSにおける13回の船外活動のほか、数百に及ぶ実験を行い、将来に繋がる研究や観測を行いました。

2021年12月31日、バイデン政権は2030年までISSを存続させることを発表しました。これは大変重要なニュースで、重要な科学実験を完了し新しい商業機能を使えるようになってからの時間も多くとることができます。

 

私達は、ISS利用延長によりできた2030年までの10年間を「成果の10年」と呼んでいます。ISSからの恩恵を最大限活かすことができる期間となるからです。ISSにおける様々な研究のためだけではなく、有人宇宙飛行に必要な技術維持のためにも、この10年は必要な期間です。これらの目標を実現するために、ユーザコミュニティーや国際パートナーの協力をお願いしたいと思います。

NASAはISSの利用を継続しつつ商業的能力の開発、ISSから民間が所有する宇宙ステーションへの移行についても、4つの民間パートナーと共に計画しています。同時に、NASAと各パートナーは、他のユーザにも宇宙ステーションを利用できるようにし、持続的な需要を確立することも考えています。宇宙環境利用サービスが行われているISSから民間の低軌道宇宙ステーションに移行する計画は、現在その初期段階にあります。計画のためにはユーザが将来的に地球低軌道で何をしたいのかを理解するのかが重要です。

 

NASAの民間パートナーであるAxiom Space社の宇宙ステーション

「アクシオム・ステーション」の想像図

(Credit:Axiom Space

 

Current Status and the Future of ISS Research Program

今後10年間のISS運用の方針決定に大きく関わるNASA・ISS統合研究室の室長を勤めるRyan Prouty氏は、ISSの運用終了を見据えて、今後10年の間にどのような成果を残しどのような機能を残していくかの判断の難しさ、そしてこれまでISSが残した多くの成果について語りました。

 

Ryan Prouty氏:私達はISSにおいて2030年までの有意義な10年間を活用し、その経験や設備を今後に反映させていきたいと考えていきます。しかし、ISSを運用しながらどのような設備を運用・廃止するか、商用利用を視野に入れて更新していく機能は何かを判断するのは簡単ではありません。私達は非常に限られた資源の中で、非常に重要なISSへの要望をこなしていくため、今後判断を下していくことになります。

現在はISSでの研究成果のほか、有人宇宙開発自体の発展も進んでいます。何も変わらない日常のようですが、少し距離を置いて有人宇宙開発を振り返ると、驚異的な成果を残しています。宇宙工学、技術開発、研究、発見、そして国際協力による様々な成果は歴史に残るものとなることでしょう。

 

2030年での退役が決まった国際宇宙ステーション(ISS)

(Credit:NASA

 

Current Status and the Future of ISS National Lab

米国のISS国立研究所(ISS National Laboratory)宇宙科学研究本部にて首席研究員・最高責任者を勤めるRamon (Ray) Lugo氏は、ISSにおける幅広い研究やその支援を政府や民間向けに提供しているISS国立研究所の、多岐にわたる研究と投資について解説しました。

 

Ramon (Ray) Lugo氏:ISS国立研究所は様々な非営利組織や民間企業と多くのプロジェクトを実施しており、ここ10年間は多くの資金調達を行い、530を超えるペイロードをISSに送り出して多くの実績を残してきました。

代表的な研究としては、疾患の加速モデルに関する医療実験、そしてNHIと共にスポンサーとなって進めている結晶成長に関するもの等があります。

 

また、投資についても多くの活動を行ってきました。ISS国立研究所はパートナーが行いたい実験について4億8000万ドル以上の資金調達支援、1000件以上の投資家を含む、大規模なエコシステムを通して行われました。

ISS運用が2030年まで継続することになり、我々もISSの研究を継続できることになりました。人類が直面する重要課題を解決できることを祈っています。

 

LEO Research and Commercialization Activities of JAXA

JAXA/有人宇宙技術部門 きぼう利用センター センター長の小川 志保氏は、2030年までのISSを通した研究開発、そしてポストISSについてのJAXAが持つビジョンについて述べられました。

 

小川 志保氏:JAXAはISS利用が終了する2030年移行を見据えたポストISSのビジョンを既に持っており、2030年代は「地球低軌道における宇宙環境利用が人類の社会、経済活動の一部として定着している」ことを目指し、それに合わせて2020年代は「きぼうによる宇宙環境利用が社会に定着し、複数のサービスがプラットフォームとして提供される。そしてそれが民間による運営が始まっている」というビジョンを掲げています。

 

プラットフォームとは定時化、高頻度化、定型化といういつでも使えるサービスのほかに、優位性のある日本独自の技術、一定の需要がある適切なものです。こうしたプラットフォームについては既に民間企業との提携を通して行われており、民間ならではのアイデアを通して運営してもらっています。更に米国の民間宇宙ステーションとの連携活動も活発化してきています。

 

こうしたISS退役後の地球低軌道利用について「我が国に知の創造をもたらす公的な研究基盤として持続させたい。そして多種多様なプレイヤーが参画する経済的な場として持続する」。それが我々の大きなポストISSの大目標です。

 

技術の民間移管と運営、レガシーとなる成果の創出を見据えながらポストISS時代を迎えたいと思います。最終的には月や火星、そしてその先にある地球低軌道の活動拠点で我が国の活動領域の拡大というビジョンを見据えています。

 

今回は『国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウム DAY3』の、話題提供の一部をご紹介しました。

下記のURLからDAY3の様子をアーカイブ映像で視聴可能です。是非ご覧ください。

アーカイブ:https://www.youtube.com/watch?v=T6x9QVqKd0o&t=3549s

公式サイト:https://iss-kibo.space/2021/

 

K.Imanishi