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UNISECインタビュー①:次世代を担う若者の宇宙開発支援

皆さんにとって宇宙開発というのはどのような存在でしょうか? 現在、多くの民間企業がロケットや衛星を開発・運用しており、以前に比べて宇宙開発の敷居は低くなりました。それでも、宇宙開発はどこか自分とは遠い世界のことで、ましてや直接関わることなど想像できないという人も多いのではないでしょうか。

NPO法人大学宇宙工学コンソーシアム(University Space Engineering Consortium、以下UNISEC)では、全国の大学生が大学や組織を超えて共に宇宙開発に取り組んでおり、その活動を2回に分けてご紹介します。

1回の今回は、東北大学准教授でありUNISECの理事長を務める桒原聡文氏にお話を伺いました。

UNISECとは

本日はよろしくお願いします。はじめに、UNISECの概要を教えてください。

桒原氏 UNISECでは、宇宙開発に取り組む大学生・高専生が集まり、個々の研究室やサークルだけでは行うことが難しいプロジェクトや実験を実施することや、活動報告や技術交流の場を設けています。

もともと、ロケット発射やCanSat (※) 投下実験を各大学共同で実施する仕組みとして、大学衛星コンソーシアムとハイブリッドロケットグループがありました。両団体は同じ宇宙工学という研究領域にあるため共通の課題も多く、より有機的な活動を目指して実践的な教育活動の実現を支援する組織として、2002年にUNISECが生まれました。

 

(※) CanSat:ジュース缶サイズの小型模擬衛星。宇宙には到達しないが、数十~数千m上空から落下させ、目的地到達を目指すミッションなどを行う。CanSat開発を通じて衛星開発のプロセスを学ぶことができる。

 

  

 



(上)小型ハイブリッドロケット
(下)CanSat

Credit: UNISEC

 

―UNISECは「人材育成」「技術開発」というミッションを掲げていますが、これらを達成するためにどのような活動を行っているのでしょうか。

桒原氏 まず、学生や法人、個人の参加会員が毎年2回、一堂に会す場(UNISEC総会・活動報告会/UNISECワークショップ)を作り、人材育成及び技術開発の向上に寄与しています。参加団体の登録には教員もセットである必要があるので、教員が学生をサポートするという形で人材を育成しています。

教員といっても学生会員から所属している人も多くいます。私は第5代の理事長ですが、初代の理事長は私の指導教員でした。教員が学生を指導し、その中からまた教員になるというサイクルになっています。

また、20036月に東大と東工大が世界で初めてキューブサット (※) を同時打上げしました。その後のUNISECによる人材育成・技術開発の活動が、小型人工衛星を商用レベルまで引き上げることに繋がったと自負しています。

 

(※) キューブサット:10 cm×10 cm×10 cmの立方体を1ユニットとする小型衛星

   


世界初のキューブサット () 東京大学のXI-IV () 東京工業大学のCUTE-I

Credit: 東京大学 / 東京工業大学

~NCUBE構想:参考資料~ (todai.tv)

超小型人工衛星で宇宙産業を切り拓く—宇宙への想いを繋ぐ学生と研究者— | 研究ストーリー | 研究 | 東京工業大学 (titech.ac.jp)

 

―UNISECの掲げるミッションには「アウトリーチ」というものもありますね。

桒原氏 はい、参加大学・高専は全国各地域に分散している利点を生かし、それぞれの地域に根ざした、草の根的なアウトリーチを含めた活動を展開しています。また、国外の機関への宇宙教育も行っています。共同研究として海外から受け入れて、日本の大学と一緒に衛星を開発して打上げを行います。フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、アフリカなど、多くの国々の宇宙開発に貢献しています。こうした活動は宇宙業界における日本のプレゼンス向上に寄与しています。

JAXAからの委託事業も多くあります。現在取り組んでいるものの一つに「超小型衛星の成功率向上に向けたJAXA知見を活用した支援方法の調査検討」があり、これまでの事例を基にしてどのようにしたら失敗しない衛星を作れるのかということを、調査検討しています。

KiboCUBE」というプログラムでは、国連に対して宇宙工学講座を英語で提供しています。「J-CUBE」というプログラムでは、JAXAが提供する国際宇宙ステーション「きぼう」からの衛星放出機会を、各国の機関と繋いでいます。こうした活動を通じて、世界中のみんなが宇宙を使える環境にしていくことにとても貢献していると思っています。

UNISECでの充実した活動内容について

非常に幅広い活動をしているのですね。ワークショップを定期的に実施しているとのことですが、具体的にどのような内容なのでしょうか。

桒原氏 各加盟団体の活動状況の報告や技術情報の共有化、宇宙工学専門家による講演や懇親会等を行っています。これらの活動は、加盟団体間の健全な競争・協力意識の醸成、情報交流及び人的なつながりを目的としています。また、分野によってCanSat、衛星、ロケットのワーキンググループなどがあって、各ワーキンググループの中で質問しあったり、経験の多い会員から知見を共有してもらったりしています。

 

 

設立から20年近く経ち、加盟団体の数も大きく増えました。昔と今とで変わったと感じる部分はありますでしょうか。

桒原氏 当初は衛星の作り方などわからず、手探りでした。今はノウハウが蓄積され、市場でも購入できるものが増えていて、調達性も高くなりました。現在は、衛星を作ることができる上で、どれだけ技術レベルの高い衛星を作れるのかを目指すのかというところになっています。また、衛星は商用レベルのものを作れるようになったので、次は小型ロケットの方でも商用化を実現できるようにしていきたいです。

UNISEC総会の様子

Credit: UNISEC

 

これからのUNISECと未来を担う学生へのメッセージ

団体を通じて学生にどのようなことを学んでほしいとお考えでしょうか?

桒原氏 まず、学生に宇宙は手の届くところにある研究対象だと伝えたいです。かつて、宇宙開発といえば国家プロジェクトによるものでしたが、いまは違います。宇宙は遠い世界だという時代は終わっています。宇宙との繋がりが至る所にあふれているこの時代で、自分の活躍の場として楽しんでほしいです。UNISECは、そういった学生の最初の扉としての存在でありたいです。実際、UNISEC出身の宇宙事業従事者は多いです。

そして宇宙開発に取り組むなら、実践的で実用的な、将来に繋がることをしてほしいです。挑戦の場としてUNISECを利用してくれたら嬉しいです。

 

宇宙に関わっている、あるいは興味のある学生に向けてメッセージをお願いいたします!

桒原氏 2020年からこの10年間で、宇宙はこれまでにないくらい生活に溶け込んでいきます。人類の活動の場が広がるわけですから、これまでとは違う宇宙の利活用が出てくるでしょう。これを体験できるというのは非常に貴重なタイミングです。みなさんには、民間主体の宇宙開発を動かしていける人材になってほしい、そのためにまずはこのUNISECの環境で実力をつけてほしいと思っています。

 

今回は、東北大学准教授UNISEC理事長の桒原氏にお話を伺いました。次回の2回目は、2021年度UNISEC学生代表の佐藤伸成氏のインタビュー記事です。お楽しみに!

 

SPACEMedia編集部