【保存版】東京都内で宇宙工学が学べる国公立大学4選

日本でも盛り上がりを見せる宇宙産業。宇宙開発について大学で学びたいという方も増えているでしょう。また、子どもには大学に行くのなら将来性のある宇宙産業についてじっくり学んで欲しいと考えているご両親もいらっしゃると思います。

前回の記事では、将来宇宙開発に携わるにはどういう進路選択をするべきかという話をしました。そこで今回は、航空宇宙工学を学べるのは具体的にどの大学のどの学科なのか、それぞれの学科では何を学べるのか、ということを紹介していきます。

第1段として、本記事では東京都内にある国公立大学(全4大学)に絞って紹介します。

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東京大学 工学部 航空宇宙工学科

巨大な建物

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図:東京大学

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東京大学 工学部 航空宇宙工学科では、最初は航空宇宙工学の各分野について幅広く学びますが、3年次から推進コースとシステムコースに分かれます。推進コースではロケットエンジンやジェットエンジンについて、システムコースでは人工衛星・ロケット・航空機の制御や構造について深く学んでいきます。

東大の航空宇宙工学科の特徴としては、4年次の最後に卒業設計があるということです。他学科よりも早く卒論を終わらせ、12月から約3か月かけて設計を行います。推進コースではロケットエンジン/ジェットエンジン/レシプロエンジン、システムコースでは人工衛星/航空機から1つ選んで設計を行います。

実物を作るわけではないですが、いままでは存在していないエンジンや機体を一から設計するので非常に大変です。目的を設定して、それを満たすにはどのような性能を持つべきかを考え、その性能を発揮できるようにうまく設計しなくてはなりません。例えばロケットエンジンについて、単にたくさんパワーの出るエンジンを作ろうとすると、あまりにも高温なので材料が溶けてしまうというようなことになります。

これまで学んできたあらゆる工学を駆使して、現実的に成り立つような設計をする必要があるので、とてもやりがいがあります。またJAXAや重工などで実際に開発に携わっている方々からもフィードバックをもらうことができ、現場の知見を直接聞くことができます。こうして、学部の最後に航空宇宙工学の醍醐味を味わえるのが大きな魅力の1つです。

卒業設計の製図の例 (推進剤噴射ノズル及び燃焼室)

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卒業設計の製図の例 (ターボポンプ)

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なお、東京大学の一般入試では出願時に学部学科を選ばず、理科1類/理科2類/理科3類、文科1類/文科2類/文科3類という6つの区分から選んで入学します。その後、1年次と2年次前期の成績と志望を基に学部学科を振り分ける進学振り分けが行われ、2年次後期から学部学科に配属されます。

航空宇宙工学科への進学は理科2類からの枠が1名あり、残りの60名弱は理科1類からの進学となっています。そのため、東大の航空宇宙工学科に進学したい場合は、入学時に理科1類に出願するべきです。

東京大学航空宇宙工学専攻 (u-tokyo.ac.jp)

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東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科

屋外, 建物, 草, 小さい が含まれている画像

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Credit: 東京都立大学

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東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科では、1年次から4年かけて集中的に航空宇宙工学について学ぶことができます。1年次から3年次の間では各工学について講義・演習・実験を通じて学び、4年次に研究室に配属されます。

3年間かけて航空宇宙工学についてじっくり学んできているので、研究室での活動をより充実させることができます。また、高校生の時からずっとこの興味のあったという学生が集まるため、同期と航空や宇宙の話題で盛り上がることができるという点も魅力の1つです。

航空宇宙に関する学生団体が多いのも特徴です。学生団体COREではCanSatと呼ばれる小型模擬人工衛星や小型のハイブリッドロケットを作って各種イベントに参加しており、鳥人間部T-MITは飛行機を製作して鳥人間コンテストに出場しています。また、宇宙広報団体TELSTARは、中高生に向けて宇宙に関する話題を発信する活動をしており、宇宙開発に興味を持った専門家を育成するきっかけ作りに取り組んでいます。

インカレサークルも含みますが、このように都立大を拠点とした宇宙系の学生団体が多く、様々な形で航空宇宙に触れる機会があります。

バットを持った人

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学生団体COREのハイブリッドロケット打上げの様子
Credit: 東京都立大学

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東京工業大学 工学院 機械系

本館前の桜並木は、毎年春になると見事な景観を作り出します。卒業式、入学式の思い出に文字通り花を添えます。
Credit: 東京工業大学

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東京工業大学では、工学院 機械系というところで宇宙工学について学ぶことができます。東工大は他の大学とは異なった制度となっており、学部と大学院を統一して「学院」と呼ばれる分類になっています。入学時には理学院、工学院、情報理工学院など6つの学院から選択して1年次は広く学び、2年次から系を選択して専門分野を決めていきます。

前回の記事でも述べたように宇宙工学は様々な工学を統合した分野なので、機械系で学ぶ基礎科目はすべて宇宙工学に通ずることとなります。そのうえで、応用科目の中で宇宙工学を学ぶことができます。

研究室に配属されてからは、さらに特定の分野を極めていくこととなります。東工大にある航空宇宙関連では、エンジンの燃焼現象、宇宙構造物、宇宙ロボティクス、人工衛星や宇宙ミッション、電気推進、といった分野について扱っている研究室があります。

機械系(学士課程) | 教育 | 東京工業大学 工学院 機械系 (titech.ac.jp)

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飛行機が空を飛んでいる飛行船のcg

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ハイブリッドロケット C-53J
Credit: 東京工業大学ロケットサークル CREATE

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東京農工大学 工学部 機械システム工学科

Credit: 東京農工大学

東京農工大学では工学部 機械システム工学科というところで航空宇宙工学について学ぶことができます。最初は数学や種々の工学について広く学び、2年次の後半から航空宇宙・機械科学コースとロボティクス・知能機械デザインコースに分かれます。航空宇宙・機械科学コースで航空宇宙工学について専門的に学んだあと、4年次から卒業論文に取り組むということになります。

入学時からクラスを複数に分けて少人数授業を徹底しているため、充実した教育環境を整えています。研究室は30以上あり、航空宇宙工学に限らず独自性の高い研究を行っているので、きっと自分が強く興味を持てる研究室が見つかるでしょう。さらに、JAXAや産業技術総合研究所(AIST)といった研究機関と連携しており、共同研究体制が確立されています。

また、学生団体としては宇宙工学研究部Lightusや航空研究会といったサークルがあり、CanSatやロケット、飛行ロボットの開発を行っています。

ハイブリッドロケット Lightus-08 “Calcifer”
Credit: 宇宙工学研究部Lightus

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機体画像
モデルロケット Anomalocaris (2021年飛行ロボットコンテスト優勝)
Credit 航空研究会

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http://web.tuat.ac.jp/~mechsys/colleges.html

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おわりに

今回は東京都内で宇宙が学べる国公立大学をまとめました。 学ぶ対象としての航空宇宙工学はどこでも共通していますが、カリキュラムや課外活動などには違いがあります。また、キャンパスや学生の雰囲気にも違いがあり、そうしたことは実際に足を運んでみなければわかりません。オープンキャンパスや学祭の日程をチェックし、是非それぞれの大学を訪れ、学生や教員に直接話を聞きにいってみてください!