三菱重工業株式会社は2021年10月26日、H-IIAロケット44号機での準天頂衛星初号機「みちびき」後継機の打上げに成功しました。今回で打上げ成功率は97.7%となり、7号機以降38機連続の打上げ成功となります。毎年数回打ち上げられ、安定した成功率を誇る「H-IIAロケット」とはいったいどのようなロケットなのでしょうか。今回は、そんなH-IIAロケットについてご紹介します。
- 基本情報
H-IIAロケットは全長53m、全備質量289tの使い捨て型液体燃料ロケットです。2段式で、第1段・第2段のどちらにも、高性能な液体水素と液体酸素を用いた国産エンジンを搭載しています。2001年の試験機1号機以降44機が打ち上げられ、6号機以外全ての打上げに成功しています。
第1段エンジン LE-7A Credit:三菱重工業
- 開発と特徴
H-IIAロケットの開発は、先代の「H-IIロケット」を全体的に再設計する形で行われました。H-IIロケットは1994年に開発された日本初の純国産大型液体ロケットで、世界的な大型衛星打上げ需要への対応が可能となりました。
しかし、打上げコストが問題となり、2機連続で打上げに失敗したことも重なり、1999年に運用停止となりました。H-IIAロケットはH-IIロケットで培われた技術を引き継ぎつつ、輸入部品の使用や構造の簡素化といった工夫により、低コストと高性能の両立を実現しています。また、打ち上げる衛星の質量に応じて補助ロケットの本数を増やすことや、衛星を保護するフェアリングの形を変えることができるなど、柔軟性も有しています。
- 改良と将来
H-IIAロケットは運用開始して以来、高い成功率を誇り、世界一予定通りに打上げが可能なロケットとしても地位を確立しましたが、海外ロケットの台頭や打上げ需要の変化などの課題に直面しています。
これらの課題を克服するため、2015年から「基幹ロケット高度化開発」という改良開発に取り組んでいます。具体的には、静止衛星打上げ能力の向上、複数衛星を異なる軌道へ投入する機能の獲得、衛星への負担が少ない分離方式の開発などです。また、ロケットに搭載する航法センサも新たに開発しました。これにより、老朽化が進んだ地上レーダーを不要化し、地上設備の維持費用を削減することができます。
ロケット開発マイルストーン Credit:JAXA
H-IIAロケットの改良だけでなく、後継機「H3」の開発も進んでいます。H3ロケットではさらなる柔軟性・高信頼性・低価格の実現を目指し、H-IIAロケットで培った技術を生かした開発が進められています。2021年度末に試験機1号機が打ち上げられる予定です。
今回は、2021年10月26日に打上げが成功した「H-IIAロケット」についてご紹介しました。今後の活躍と、後継機H3の動向にも注目です。