教育×宇宙で学びと社会をつなぐ!-コクヨ株式会社

ここ数年、日本の宇宙開発が盛んになりテレビやネットで宇宙に関連するニュースが数多く見られるようになりました。今まで遠い存在だった宇宙が身近に感じられるようになったことで、子どもたちの宇宙に対する関心が高まってきています。しかし、宇宙と一言にいっても、宇宙を理解するには化学や物理、工学などあらゆる分野の知識が必要です。今回のインタビューでは、2023年3月30日から4月1日の3日間にかけて教育イベント「Campusカフェ」を企画し、その中のプログラムの1つで宇宙にまつわる内容を実施する、コクヨ株式会社の久我氏にお話しを伺いました。

2023年3月開催のCampusカフェ https://www.kokuyo.co.jp/study/campuscafe2303.html

久我氏 コクヨ株式会社経営企画本部イノベーションセンター

コクヨの事業内容

-本日はよろしくお願いします。はじめに、コクヨ株式会社と聞いて文具としてのイメージが強いですが、会社全体としてどのような事業を展開しているか教えていただけますでしょうか。

久我氏 弊社の事業領域は、「ワークスタイル領域」と「ライフスタイル領域」の2つに分かれています。その中で、主に文具や事務用品を製造・販売する「グローバルステーショナリー事業」、オフィス家具の製造・販売からオフィス空間の設計・構築、コンサルティングまでを行う「ワークプレイス事業・海外ファニチャー事業」、通販サイトの運営などを行う「ビジネスサプライ事業」に大別されますが、多様化する顧客ニーズに対応するため、文具や家具といったカテゴリにとらわれない様々なサービスを展開しています。

2021年11月に発表した長期ビジョン「CCC2030(チェンジ・チャレンジ・クリエイト)」の実現に向けて経営のあり方を「森林経営モデル」へとシフトし、既存事業の強みを活かしつつ新規事業を創造する企業を目指しています。

 Credit:コクヨ株式会社

-そのなかでも久我氏の在籍されている経営企画本部イノベーションセンターではどのような取り組みをされているのでしょうか。

久我氏 私たちのチームは「ライフスタイル領域」をさらに分割したうちの1つ「探求学習領域」を担当しています。既存事業の領域を拡大し新規事業の創出を進めるという計画のもと、新規ニーズの事業化に力を入れているところです。具体的には、2022年1月にリリースした新しい勉強アプリ「Carry Campus」の開発・運用を行ったり、中高生向けの教育イベントを企画・開催したりしています。

教育機関ではないからこそできる学びのサポート

-どういった経緯で教育イベントを開催するに至ったのでしょうか。

久我氏 中学や高校での勉強が将来生活していく上でどんな部分に役立つのかを学ぶことで、勉強に対するモチベーションを上げてほしいという想いから教育イベントを開催しました。今の中高生のリアルな悩みとして「勉強がいやだ、何のために勉強するのかわからない」と学ぶことに対して否定的になってしまうことがあります。もちろん勉強は、学校や塾などの教育機関で教えてもらえますが、こういった“学ぶことの意義”についてはなかなか教えてもらう機会が少ないと思っています。弊社は教育事業者ではないからこそ、“学ぶことの意義”という部分に触れていけるのではないかと考えています。

-過去には2022年7月と12月にイベントを開催されていましたね。

久我氏 はい、7月には建築模型を使った数学や物理を勉強する理由を考えられるプログラム、12月には進路について考えるプログラムと海外とライブ中継を行い世界のSDGsを英語で学ぶプログラムを実施しました。具体的に英語で学ぶプログラムでは、インドで教育に従事している外国人や、インドネシアで生物保護活動をしている外国人と学生とがオンラインでつながり、英語でコミュニケーションをとってもらいました。このように実例を通して“英語を学ぶ”ことの重要性を教えることで、将来どんなことに英語が役立つのかを理解しやすくなると考えています。

-2023年3月に開催される教育プログラムは大きく3つあるとお聞きしましたが、それぞれどういったプログラムなのでしょうか。

久我氏 メインのプログラムは「国語」「数学」「理科」の3つです。

まず国語は、中高生向けに書かれた新聞記事を活用し活字に触れることで、国語力の伸ばし方を学べるプログラムです。インターネットが普及し、文字をじっくり読む機会がなくなった今だからこそ、全ての教科学習の土台となる国語の重要性について学ぶ必要があると考えています。実際に新聞記事を書いている記者の方をお招きし、国語の力が現在生きていくうえでどのように役立っているのかについての講義も行います。

続いて数学は、「文具(鉛筆シャープ)の価格はどのように設定されているか?」などを題材に、製造原価や利益率、プロモーションコストなどの仕組みを学べるプログラムです。数字とカードを使って、商品の企画にもチャレンジできます。

そして理科は、今話題の宇宙を題材に理科で取り扱うような原理を学べるプログラムになっています。例えば、宇宙に行くためにはどうすればいいのか、ロケットを飛ばすにはどんな角度で打上げなければならないか、など理科の知識が詰まった宇宙をテーマにして学ぶことで、普段勉強している理科とのつながりを感じてもらうことを目的としています。

Credit: コクヨ株式会社

-理科を学ぶテーマとして「宇宙」を選択された経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。

久我氏 最近ニュースでも話題となった、新しい宇宙飛行士の誕生やH3ロケットの打上げなどから、“宇宙“と”社会“がつながる内容を作れると思ったのがきっかけです。H3ロケットの打上げ失敗のニュースでいうと、ほとんどの学生は「あ、失敗したんだ」とただ表面上の事実しか見ようとしません。しかしその裏側にはあらゆる要因が隠れている、ということを伝えていきたいという思いから企画しました。

教育機関でないからこそできる学びのサポート

-最後に、今回の「教育×宇宙」プログラムについて具体的な内容・見どころを教えてください。

久我氏 プログラム内容は大きく分けて「宇宙食」と「衛星データ」の2つです。

まず宇宙食について、地上での生活ではなかなか見たり食べたりする機会のない「宇宙食」がどのような段階を経て作られているのかを学べます。宇宙食の製造・開発には保存技術や包装形態などのあらゆる工夫がなされていますが、その製造工程を知る機会が少ないのが現状です。今回のイベントでは実際に宇宙食を作っている企業の方をお招きし、「宇宙食」にはどんな知識・技術が活かされているのかを話してもらいます。イベントでは宇宙食の試食品として、お米やのりやハンバーグを用意しているので、その場で実際に食べながら「宇宙食ってこんな風に作られているんだ」と感じてもらえればいいなと思っています。

Credit: コクヨ株式会社

-どういった食べ物が「宇宙食」として採用されているのかまでは知る機会が少ないですよね。もう一つの「衛星データ」についても詳しくお伺いできますか。

久我氏 衛星データは、近年ニュースでも大きく取り上げられているので聞いたことのある学生は多いものの、何に役立てられているかを理解している学生は少ないと考えています。そういった背景を踏まえ、「衛星データが実際に社会生活の中のどのような場面で使われているのか」「そもそも衛星はどのような仕組みで観測を行っているのか」を学べるのが「衛星データ」のプログラム内容です。実際のデータ解析を行いながら学べる貴重な体験なので、この機会に宇宙と理科のつながりを感じてもらえたら嬉しいですね。

Credit: コクヨ株式会社

■コクヨ株式会社 宇宙関連プログラムの申込はこちら

試食付!宇宙食開発で活用される理科の知識~中高生対象|学びフェス「Campusカフェ」~

https://campus-cafe2303-1.peatix.com/

衛星データで活用される理科の知識~中高生対象|学びフェス「Campusカフェ」~

https://campus-cafe2303-2.peatix.com/

以上、コクヨ株式会社経営企画本部イノベーションセンターの久我氏へのインタビューでした。今後、月面探査や人工衛星の打上げ増加により、さらに注目が集まる宇宙開発ですが、学生たちが“学ぶ”ことに意義を感じ、将来、宇宙分野含めさまざまな業界で活躍してくれることに期待したいです。