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宇宙の魅力・楽しさを伝える! 宇宙系VTuber紹介 そもそもVTuberって何? どんな活動をしている?

宇宙系VTuberたち

「VTuber(ブイチューバー)」という言葉を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? いまや動画配信プラットフォームを越え、リアルイベントへの登場など、現実世界にも活動の幅を広げているVTuber。しかし、どんなことをしているかよく知らない、という方も多いはず。

そこで今回は、VTuberの概要や活躍について解説するとともに、特に宇宙に関する活動を行っている「宇宙系VTuber」のうち、編集部が注目した4名をピックアップしてご紹介します。

ちなみに、今回紹介する宇宙系VTuberは、2月3日(月)に行われる、宇宙航空研究開発機構(JAXA)主催「国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」利用シンポジウム2025」の展示スペースにて出展を行う予定です。この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ現地へ行ってみてはいかがでしょうか。

VTuberとは 何が人々を惹きつける?

VTuberは“Virtual YouTuber”の略で、2Dもしくは3Dのキャラクターを用いて、動画投稿やライブ配信を行う配信者のことを指します。Virtualは「仮想的」「疑似的」といった意味を持つ単語です。生身の人間が顔や姿を出すことはなく、キャラクターを通してYouTube配信者(=YouTuber)のような活動を行います。

なお、キャラクターを演じる実際の配信者のことを「中の人」と呼ぶことが多く、中の人の正体は明かされないことが多いです。この記事でもこの慣例に従い、演じる配信者を「中の人」と呼びます。

VTuberの姿には、「Live2D」というソフトなどを使って動きをつけることが多いです。中の人の表情や動きを読み取るトラッキングソフトを使用すれば、中の人に同期する形でVTuberの表情や姿勢を変化させることができます。

VTuber配信の様子。上下でVTuberの表情と姿勢が変化しているのがわかります
Credit: 月女神イチライブ配信(12月17日)より

VTuberの魅力は、アニメやゲームのキャラクターのような魅力的な外観でありながら、中の人と視聴者との距離感が近い、双方向的なコミュニケーションがほぼリアルタイムに取れることです。

またVTuberには、例えば「実は宇宙人」などの設定があることが多く、このような設定や中の人の話し方などが組み合わさって、それぞれ違った魅力を生み出しています。

VTuberの活躍 意外と長い歴史、動画を超えた影響力

VTuberのはじまりは、2016年に「キズナアイ」が登場したことがきっかけとされています。彼女は「世界初のバーチャルYouTuber」として自己紹介を行い、その斬新さが注目を集めました。テレビやネット上で、彼女の名前や姿を見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか。

キズナアイの成功を皮切りに、数多くのVTuberが活動を行うようになりました。また、簡単にキャラクター作成ができるアプリや、「SHOWROOM」「17LIVE」などの配信プラットフォームが登場し、VTuber活動をしやすい環境が整えられていきました。

また、VTuberが所属し、芸能事務所のようにマネジメント等を担う「VTuber事務所」も数多く設立されました。中でも「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社と「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社は、それぞれ上場を果たしています。

ちなみに、事務所に所属するVTuberを「企業勢」、個人で活動するVTuberを「個人勢」と呼び、個人勢だから応援する、というスタンスのファンも多いです。

VTuberの活動内容はゲーム実況や雑談、歌など多岐にわたりますが、リアルタイムで視聴者とコミュニケーションを取ることができるライブ形式で配信されるコンテンツが人気です。

VTuber×企業のコラボ例。JAXA主催イベントの公式アンバサダーにVTuber「宇推くりあ」が就任しました
Credit: 国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」利用シンポジウム2025」公式サイトより

また、他のVTuberコラボ配信を行うことも多く、企業・自治体と提携してコンテンツを展開することもあります。VTuberはバーチャル(仮想的)な存在ながら、現実世界での影響力も拡大しており、2023年の市場規模は約800億円と試算されています(矢野経済研究所による調査)。

宇宙系VTuber あなたの「推し」は!?

それではここで、VTuberのなかでも、宇宙関連コンテンツを中心に活動する「宇宙系VTuber」を紹介します。今回は、日常的に配信・投稿で宇宙を扱っている4名を取り上げます(並びは活動開始順)。

宇推くりあ 専門家も認める知識量! ロケットの魅力伝えるアイドル

宇推くりあ

宇推くりあ(うすい・くりあ)は、「ロケット工学アイドルVTuber」として活動している個人勢VTuberです。宇宙の中でも特に、ロケットや人工衛星に関する発信を行っています。

彼女はメディアミックス作品『ラブライブ!』に登場するスクールアイドルに憧れて、惑星クラリスからやってきた宇宙人であるという設定を持っています。

2020年10月から活動を開始し、ほぼ毎日の頻度でロケット打上げや記者会見の同時視聴ライブ解説配信を行っています。海外のロケット打上げ配信であっても、リアルタイムで英語から日本語への簡単な通訳を交えて解説してくれるので、英語が苦手な視聴者でも安心して見ることができます。

歌枠配信や宇宙界隈の人物を招いた対談配信を実施することもあり、対談ゲストとして、ロケット開発を行っているインターステラテクノロジズ株式会社のファウンダー・堀江貴文氏を招いたことも。

また、ロケット打上げや記者会見の同時視聴を行うだけではなく、実際に現地に行って(またはオンライン上から)取材を行うこともあります。

2023年7月にJAXA能代ロケット実験場でイプシロンSロケット地上燃焼試験が行われた際には爆発の様子を中継していたほか、2024年12月にカイロスロケット2号機打上げ後の記者会見が行われた際には、スペースワン株式会社取締役の遠藤守氏に直接質問を行いました。

JAXA相模原キャンパス一般公開で研究者とライブを行った様子

官公庁や企業とのコラボ実績も多く、JAXAが主催する「ISS・「きぼう」利用シンポジウム」には2年連続で公式アンバサダーに抜擢されたほか、多くの人工衛星を開発・製造している三菱電機株式会社と2回コラボを行っています。

また、内閣府主催「第6回宇宙開発利用大賞」のPRキャラクターも務め、記者会見で彼女のポスターと高市早苗内閣府特命担当大臣(当時)が並んだ姿は話題になりました。

宇推くりあのX・YouTubeはこちら

星見まどか 初心者でも親しみやすく! 宇宙の魅力を伝える

星見まどか

星見まどか(ほしみ・まどか)は、「惑星科学者VTuber」として活動している個人勢VTuberです。専門領域は惑星科学ですが、「宇宙×エンタメ」をテーマに、宇宙に関する幅広い情報を発信しています。

惑星科学の修士号を持つ彼女の活動コンセプトは、「宇宙に興味がない人にも、楽しみながら魅力を知ってもらう」。そのため、簡単な表現や図などを使い、コメントやアンケート機能を利用する視聴者参加型の配信が多めとなっています。

2021年9月に活動を開始した彼女。ライブ配信では、宇宙に関する最新トピックや毎月の星空紹介に加え、ゲーム実況や映画の同時視聴、研究者との対談配信なども行っています。

また、2024年11月には、クラウドファンディングプロジェクトとして、スペースバルーンに彼女のアクリルスタンドを載せて高度約20kmの成層圏へ到達させ、地球と宇宙を背景に撮影を行うという企画を実施し、大きな話題を呼びました。

スペースバルーンによる成層圏到達の様子。アクリルスタンドの背景に地球(下)と宇宙(上)が見える
Credit: 星見まどかYouTubeより

他にもプラネタリウム番組への出演や宇宙関連イベントの監修、学会での発表など、配信の枠にとどまらないアグレッシブな活動を展開しています。

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宙彩しろん 地元密着型! 宇宙のまちを伝える

宙彩しろん
Credit: 能代市地域おこし協力隊/咲LAB

宙彩しろん(そらいろ・しろん)は、秋田県能代市で活動している、宇宙系・ご当地VTuberです。JAXAの能代ロケット実験場があるなど「宇宙のまち」として知られる能代市をPRしています。

彼女は宇宙のとある星から能代に迷い込んだという設定です。当初は「個体識別番号N-251245」という名前を持っていましたが、公募によって「宙彩しろん」に決定しました。「宙彩」は宇宙のまちを彩る存在になること、「しろん」は能代やイプシロンロケットが由来だといいます。

2023年6月に宙彩しろんとして初配信を行いました。通常は雑談やゲーム配信、宇宙系イベントの紹介のほか、他の宇宙系VTuberやご当地VTuberとコラボ配信を行っています。

能代市で開催された「のしろ銀河フェスティバル2023」会場に設置された宙彩しろんのパネル
(筆者撮影)

彼女は能代市のふるさとPR大使としても活動しており、ゲーム配信では、オープンワールドゲームの「マインクラフト(マイクラ)」内に能代市役所を建設してしまうなど、能代市愛にあふれたVTuberです。

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月女神イチ 新人として宇宙ビジネス勉強中! リアルに会えるVTuber

月女神イチ
Credit: 株式会社オスカープロモーション/株式会社デジタルブラスト

月女神イチ(あるてみす・いち)は、オスカープロモーション所属の「新人宇宙飛行士VTuber」です。宇宙開発事業を行う株式会社デジタルブラストも協力し、VTuberを通じて宇宙ビジネスを広めるプロジェクトの中心を担う存在として活動しています。

彼女は約300年後の月で生まれたという設定を持っており、月面開発が大きく進み始めた現在(2020年代)に、自分が生まれた月がどのように開発されたのか、歴史を勉強するためにタイムスリップしてきたそうです。

2024年9月から活動を開始しており、ライブ配信では宇宙ニュースの紹介を行うほか、雑談やゲーム配信、歌枠(歌を歌う配信)をしています。また、デジタルブラストの社員が特派員となって、イタリアで行われた国際宇宙会議2024や種子島で見たH3ロケット打上げの様子を紹介したこともあります。

2024年11月には東京ドームシティにオープンした、宇宙エンタメ施設「Space Travelium TeNQ」の公式アンバサダーにも就任しました。TeNQ内には彼女の配信ブースも設置されており、来場者と直接話せる機会も提供されます(TeNQでの配信開催は不定期)。

TeNQ来場者と月女神イチが会話する様子
(筆者撮影)

月女神イチのX・YouTubeはこちら

この記事では、VTuberの概要や活躍について解説するとともに、特に宇宙に関する活動を行っている4名の「宇宙系VTuber」について紹介してきました。

VTuberによるライブやイベントはエンタメ業界の一大市場になりつつあり、その影響力が拡大しています。宇宙系VTuberもその例外ではなく、今後の配信内容やコラボ内容から目が離せません!

筆者プロフィール

加治佐 匠真(かじさ・たくま)
鹿児島県出身。早稲田大学卒業。幼い頃からロケットが身近な環境で育ち、中学生から宇宙広報を志す。2019年より宇宙広報団体TELSTARでライター活動を始め、2021年からはSPACE Mediaでもライターとして活動。2024年7月よりSPACE Media編集部所属。主にロケットに関する取材を全国各地で行う。主な取材実績にH3ロケット試験機1号機CFT(2022)、イプシロンSロケット燃焼試験(2023、記事)、カイロスロケット初号機(2024、記事)など。

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