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【特別対談・榎本麗美×宇推くりあ】「宇宙」をつたえる私たち ―いま、「きぼう」が面白い!―【後編】

人類の軌道上の拠点である国際宇宙ステーション(ISS)の一画に整備された「きぼう」日本実験棟。ここではさまざまな実験・研究が行われてきたが、2030年に予定されているISSの退役に伴い、宇宙利用は新たなフェーズを迎えている。

宇宙ビジネスの急成長や月面開発の進展など、大きく変わりつつある宇宙と私たちの関係。 2024年2月22日に開催される『ISS・「きぼう」利用シンポジウム2024』にゲストモデレーター・ナビゲーターとして参加する榎本麗美さんと宇推くりあさんに、転換期を迎えた「きぼう」利用を広げるために何か必要かを語り合ってもらった。
(前編は こちら


榎本 麗美(えのもと・れみ)
宇宙キャスター® / J-SPARCナビゲーター / 一般社団法人そらビ代表理事 / 日本宇宙少年団 東京日本橋分団長
理工学部バイオサイエンス学科卒業後、西日本放送アナウンス部へ入社。2007年フリーアナウンサーとして活動。2019年から宇宙キャスター®として、「Crew Dragon宇宙へ」など多くの宇宙番組を企画し放送。
2020年、JAXA研究開発プログラム「J-SPARCナビゲーター」就任。宇宙関連の活動が評価され「日テレAWARDS2022」にてバリュアブル・パートナー賞を受賞。また、JAXAや民間企業主催イベント・番組出演のほか、自ら宇宙イベントを企画・主催。2021年には宇宙飛行士選抜試験の受験者を対象とした「めざせ!未来の宇宙飛行士講座」を開講し、生徒2名が選抜試験でセミファイナリストに。現在は、子ども達の宇宙教育の場「YAC東京日本橋分団」を立ち上げ、宇宙時代に活躍できる次世代育成に尽力。テレビ東京「おはスタ」にて「宇宙のおねえさん」として出演中。
宇推 くりあ(うすい・くりあ)
ロケット工学アイドルVTuber
2020年10月、ロケット工学アイドルとしてVTuberデビュー。惑星クラリスからアイドルをめざして地球にやってきた宇宙人。日本はもちろんのこと、世界中のロケットの打ち上げ実況・解説を行う唯一無二の存在として、着々とファンを増やす。海外の配信では、英語から日本語への簡単な通訳も交えることで、英語が苦手なリスナーからも重宝されている。
2023年には、H3ロケット試験機1号機の応援パートナー、そして続く2024年にも同2号機の応援パートナーに就任し、日本の宇宙開発ファンを増やす活動も精力的に行っている。
また、アストロアーツ刊「月刊星ナビ」への寄稿を行ったり、宇宙企業の記者会見にも登場するなど、活躍の場を広げている。

宇宙に日本の拠点がある! これって実はすごいこと

― 2月22日に開催される『ISS・「きぼう」利用シンポジウム2024』のテーマである日本の実験棟「きぼう」にはどんなイメージをおもちですか?

宇推くりあ(以下、宇推):最初は、日本のモジュールがISSにあって何か実験してるんだなという感じだったのですが、世界中の宇宙飛行士が活躍している中で日本のモジュールがあるということが、そもそもすごいと思います。日本人宇宙飛行士もどんどん送り込んでいて、日本もやるじゃん、というか。微小重力環境での日本の研究の場が確保されているのはすごいことですよね。日本の財産なので、みんなで使っていってほしいなぁ!

榎本麗美(以下、榎本):くりあちゃんの「やるじゃん!」 っていう気持ち、私も同じ想いです。すごいですよね!

私は、今、ISSにいる古川宇宙飛行士のポスターに書かれている「宇宙でしか見つけられない、答えがあるから」というキャッチフレーズが好きなんです。「きぼう」ってまさにこんな印象だなと思うんですよ。

宇宙でしかできない研究・実験があり、宇宙でしか見られないものもある。そこで見つけられた答えが、私たちの生活をよりよくしてくれ、人類に還元されていく。月・火星に行くための研究も始まっている今、このキャッチフレーズは本当にぴったりだと思います。

「きぼう」ではさまざまな実験・研究が行われていますが、印象に残っているものなどはありますか。

宇推:ライフサイエンス系の実験・研究が多い印象があるかも。

あとは工学系で、宇宙空間で部品が使えるかどうか確かめる実験や、小型衛星の放出もしていますよね!

それから、利用テーマを見ていたときに原子炉の制御棒材料の物性測定というのが目にとまって、めちゃくちゃ面白そうだなと思いました。合金をつくるときに起こる共晶溶融反応のとき、地上では試料が蒸発してしまうのですが、「きぼう」の浮遊炉では蒸発を抑制できると書いてあって、なぜ「きぼう」だとできるんだろうとか、この合金以外はどうなんだろうとか、いろいろ興味が湧いてきました。

榎本:「きぼう」関連でかかわらせていただいているお仕事の中に、ISS内にあるドローン「Astrobee(アストロビー)」を使った学生たちのプログラミング競技会があるんです。大学生や大学院生の参加が多いのですが、最近は小学生も参加していて。教育の機会でもあるし、決勝大会は世界中の学生と競うので、「きぼう」は国際交流の場にもなっている。そこで成長していく姿が本当に素晴らしいんです。

さまざまな実験・研究が行わる「きぼう」をもっと身近に感じるために

こうした「きぼう」での実験・研究をもっと身近に感じてもらうには、どうしたらいいでしょうか?

宇推:身近ってちょっと難しくて、「開発」と「研究」って結構違うんですよね。開発は、ある製品を作るためなので、その結果が製品やサービスとしてみんなに届くんですけど、「きぼう」しかり、地上でも、研究ってパッと成果に結びつくものだけではなくて。

将来的にこういうふうに応用できそう、みたいなものも多いので、伝えるのは難しいなって思います。

榎本:そうだよね…。でも、そこは発想の転換をすればいいと思っていて。

例えば、「この選手かっこいい」「この選手すごく面白い」っていう入り口からそのスポーツを好きになるみたいに、人を知ってから物を知るという。

研究や実証の前に「きぼう」に携わる人を知ってもらって、「この人に興味ある!」ってファンになってもらったら、自然とその人がしている実験や研究に興味がいくんじゃないかな? 「くりあちゃん可愛い!」から宇宙やロケットに入るみたいに。

宇推:それは本当にそうかも! りあのところでもそうやって宇宙好きになってくれた方がたくさんいますよ!

研究って、わかりやすい結果にすぐ結びつきにくいから伝えづらいけど、逆に言うと無限の可能性があるとも言えるわけで。そういういろんな可能性の話や、単純にこれどうなってると思う? ってシンプルな疑問を投げかけてみてもいいのかな。

榎本:そうだね。どうなってると思う? っていう投げかけをしたりして、「何だろう?」とか「もっと知りたい」って気持ちになってもらえるようなフックが作れたらいいですよね。そこができたら、きっと一気に身近に感じてもらえると思う!

宇推:そうですね。研究されているってことは、その研究に人生を捧げている人がいるってことで、そんな研究が面白くないわけないですよね。その人に話を聞きつつ、面白いと思ったポイントをみんなにも伝えていく。

あとはもう、研究を広めたい人呼んじゃって、対談しちゃいましょう! どこが面白いですか? とか、こういうのってすごいですよね、みたいな生の声を紹介したりするのもいいかもしれないです!

「きぼう」、お疲れさま! リアルになる「ポストISS」の時代

― ISSの退役予定が2030年、それに伴い「きぼう」も務めを終えることになりますね。

宇推:率直に、「長生きしたなあ」と思っています(笑)。個人的には、ロケットに積んで持って帰ってきてほしいな〜!

終わってしまうのは悲しいけど、今は民間でステーションや研究室を作ろうという構想もありますよね。

榎本:そうね、悲しいけど、私も率直な感想を言うと、行ったことがあるんじゃないかってくらい愛着ある場所になっているので、『「きぼう」ちゃんお疲れさま会』したいなって(笑)

宇推:行ったことないのに愛着感じちゃいますよね(笑)。お疲れさま会、したいですね〜!

榎本 しましょう~!そしてポストISSに関しては、去年の6月に決まった宇宙基本計画で、「日本としてのあり方」にも触れられたことで、いよいよ動きだしたなと感じました。「きぼう」で培ったものをうまく活かしてつなげてほしいです。

ポストISSという地球低軌道での活動の他に、月や火星など深宇宙探査の進展も気になりますね。

宇推:まずは月、その次は火星、その次はどこに行くんだろう…。人間の手が届く場所がもう少し遠くに広がる、時代の転換点にいるのかなとめちゃくちゃワクワクしています。

榎本 すっごくワクワクするよね! 日本人宇宙飛行士が初めて月に降り立つことを考えただけで興奮しちゃいます。

「きぼう」では次世代水再生システムのように、人が月や火星で活動をするための研究も進んでいて、こういうことがSFではなく、リアルに始まっているということも多くの方に伝えたいな。

宇宙開発の新たなフェーズに向けて、みんなで作戦会議をしよう!

最後に、「きぼう」利用シンポジウムへの期待を聞かせてください。

宇推:「きぼう」利用シンポジウムは、「きぼう」を利用したい人も、「きぼう」をよく知らない一般の人も参加できると聞いています。特に「きぼう」って何をしているんだろうとか、「きぼう」の利用って何? とか、研究ってどういうものがあるの? と感じるような方々にも興味をもってもらえるきっかけになったらいいなと思っています。

私もそのお手伝いとして、できるだけいろいろな人に広められるよう、皆様と一緒に頑張ります。

榎本:ISSの運用が2030年まで延長されて、「ポストISS」に向けて動き出したばかりですよね。オンラインゲームに例えてみると、今は一つの冒険を終えようとしていて、また新たな冒険に出るために仲間を募集しているところ。

宇推:パーティをつくるんですね。

榎本:そうそう。どこを目指そうか、何をしようか? どんな装備が必要? ってみんなで検討し始めたところなのかなって。世界中でダイナミックに宇宙開発が進んでいる中で、日本にとってすごくチャンスのフェーズだと思うんですよね。

このシンポジウムにはいろいろなプレイヤー・関係者も集まるので、日本としてどうあるべきかを皆さんと議論して、何らかの問いや答えに近づけるようなものを見つけられるんじゃないかなってすごく期待しています。

― シンポジウムの当日が楽しみですね! 本日は宇宙を伝えるお話から「きぼう」の利用、ポストISSへの期待まで、盛りだくさんのお話をありがとうございました!

2024年2月22日開催!

榎本麗美さんや宇推くりあさんも参加する『ISS・「きぼう」利用シンポジウム2024』の詳細・参加申込みはこちらから!

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