流星群ウォッチング入門 -流れる星を数えてみよう-

私たちが普段生活している頭上では毎日夜空は移り変わり、彗星や惑星同士の大接近、宇宙ステーションの通過など、時には見ごたえのある天文現象が繰り広げられています。そんな中でも、いくつもの星が夜空を流れる「流星群」は、美しく多くの人が気軽に楽しめる天文イベントの一つです。

流星群は手軽に見られる天文現象ですが、より良い観察方法を知ることができれば、これから幾度も訪れる流星群をより深く楽しむことができるようになります。

今回は、そもそも流星群とはいったい何で、より深く楽しむことができる観察方法を紹介していきます。

 

流星群とは?

流星群とは、多くの人が想像するように、地球から見ると、まるで星が落ちるかのように素早く流れるように見える現象を言います。その正体は、宇宙のはるか遠くから来る「彗星」の塵の粒が密集した場所を、地球が横切る際に発生するものです。

 

彗星は、太陽から遠い場所では低温のため凍っていますが、彗星が太陽に近づくと表面が蒸発してガスや塵が放出されるようになります。地球から見られる彗星の「尾」は、このガスや塵が、太陽風と呼ばれるプラズマによって彗星から見て太陽の反対側に出ているように見えるものです。

 

こうした彗星は塵を放出しながら宇宙を巡ります。つまり、彗星が通った後、その場所には彗星から出た塵が多く残ります。この彗星の塵の分布を「ダストトレイル(塵の帯)」と言います。これが流星の元になるものになり、このダストトレイルを生む彗星を「(流星の)母天体」と言います。

 

太陽の近くを通った彗星はダストトレイルを残します。そこを、太陽の周りをまわる地球が「通る」ことで、ダストトレイルの塵が地球に降り注ぎます。この塵が地球の大気と激しく衝突、気化した塵の成分が発光することで、「流星群」として地上から観察できるのです。

彗星が通った場所にダストトレイルができ、地球がそこを通ることで流星群が出現する

Credit:国立天文台)

国立天文台著作物利用:https://www.nao.ac.jp/terms/copyright.html

 

毎日たまたま塵が地球に飛び込んで流星が見えることももちろんありますが、一定期間にまとまった数の流星が流れる「流星群」は、実は毎年決まった時期に発生するものが多くあります。

 

これは地球が太陽の周りをまわる周期・経路(軌道)はある程度決まっており、毎年決まった時期に同じ母天体のダストトレイルを通るからです(もちろん、流星群の中には突発的に出現するようなものもあります)。

 

毎年決まった時期に発生する流星群は、国立天文台のホームページや天文雑誌等を確認することで、流星群が観察可能な時期を確認することも可能です。

 

 

地球から見る流星群と、三大流星群

決まった時期に流れる流星群ですが、それぞれに「ふたご座流星群」のような星座の名前がついています。

 

流星群には、地上から見た際の「放射点(輻射点)」という概念があります。毎年決まって発生する流星群は、それぞれ彗星の塵が地球に飛び込んでくる位置が決まっています。この位置を地上から見ると、その空の位置一点を中心に広がるかのように流星が流れるように見えます。この一点を「放射点」と呼び、殆どの場合この放射点がある星座の名前がそのまま流星群の名前となるのです。

 

さて、毎年決まった時期に流れる流星群は多くあり、恐らく多くの人が最初に目にする流星群もそうした流星群です。しかし、流星群によって流れる流星の数は違い、例年多く流星を見られるものと、普段過ごしていると気づかないくらいに少ないものもあります。

その中でも毎年1時間に数十から数百個見られるような3つの流星群を、日本では「三大流星群」と言い、毎年ニュースや新聞でも取り上げられてネットでも大きな話題となります。以下の3つが三大流星群ですので、最初の観察に最適かもしれません。

 

「三大流星群」

・しぶんぎ座流星群

毎年1月はじめ頃に見られる流星群です。流星群名がついている「しぶんぎ座」は、かつて存在していた星座の名前で、現在のりゅう座に放射点があります。毎年最大平均で1時間に50個ほどの流星が見られます。毎年はじめに発生するため、1年の始めの験担ぎにも最適と言えるかもしれません、真冬での観察になるため、防寒対策が必須です。

 

・ペルセウス座流星群

毎年7月後半から8月の中ごろまで見られる流星群です。お盆や夏休みの期間中に見られる流星群であり、気温が高い夏の夜に見られることから、三大流星群の中では最も観察しやすい流星群です。ペルセウス座流星群の忠誠は速い速度で突入するため、流星が速く流れ、増光する可能性が高いと言われています。

 

・ふたご座流星群

毎年12月前半に見られる流星群です。他の流星群に比べて数の増減が少ない堅実な活動が魅力の流星群で、毎年ほぼ一定の数の流星が見えると言う意味では最大の流星群です。しぶんぎ座流星群と同じく真冬での観察になるため、防寒対策が必要です。

 

これらの流星群は毎年一定以上の流星を見ることができるため、最初の観察におすすめの流星群です。前述のように毎年流星群が見られる時期は決まっていますが、その中でも「極大」と呼ばれる日時があります。これは「その流星群の中で最も流星が流れる時間帯」のことであり、流星群観察において最適な時間となります。

 

記事画像(photo AC

https://www.photo-ac.com/main/detail/824372?title=%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%82%A6%E3%82%B9%E5%BA%A7%E6%B5%81%E6%98%9F%E7%BE%A4&searchId=85492357

2018年のペルセウス座流星群。画像中央のペルセウス座を中心に、放射状に流星が流れている。

 

 

いざ、流星群観察へ

見えやすい流星群とその時期も分かったところで、快適な流星群観察について紹介していきます。

 

・流星群観察の準備

事前にいつが流星群の時期で、極大はいつかをインターネット等で確認してみましょう。

時期によっては防寒対策や暑さ対策が必須で、虫除けスプレー等が必須になることもあるかもしれません。キャンプ等と同じく、時期や行先によって最低限臨機応変に対応できるようにすると良いでしょう。また、おすすめなのは地面に寝ころべるレジャーシートです。寝ころびながら流星群を観察することができます。

星がよく見えるところに行くのでしたら方位磁針や星座早見表を持っていき、流星群観察の合間に星座を探すとより楽しめるかもしれません。

また、詳しくは後半でも紹介しますが、月が出ている時間帯は空が明るく、流星を探すのに一苦労するので、できるだけ月が出ていない時間を狙うとよいでしょう。

 

 

・流星群観察の場所

まず流星群観察の場所ですが、特に上の3大流星群は、地上の明かりが少ないところでももちろんどこでも見ることができ、大都市部でもない限りは公園などでも見ることができます。

しかし、より地上の光が少なく、視界が開けていて空が広く見渡せる場所であれば、より多くの流星を見つけることができます。これは通常の天体観望でも同じですが、明るく光っていない星も見つけることができるからです。

都市部から離れ、車の往来が少ない公園やキャンプ場などがおすすめです。

 

 

・流星群の見方

流星群を観察するのに、望遠鏡や双眼鏡は必要ありません。持っていても、星が流れるのが速すぎて、こうした道具ではほとんど観察できないからです。

さて、これは天体観望全てで言えることですが、人の眼は暗いところに眼を慣らせるのは時間がかかり、逆に明るい光を見るとせっかく暗闇に慣れた眼が元に戻ってしまいます。星を見るときは携帯電話をしまい、しばらく星空を眺め、暗いところに眼を慣らしましょう。眼が暗闇に慣れたところで、早速流星群観察に移ります。

先ほど「放射点」の話がありましたが、流星はそこから中心に流れているように見えるというものであって、そこを見ていなければ流星が見えないというものではなく、空全体で流れる可能性があります。そのため、空全体を見渡すように見るのがおすすめです。その際には座ったり、立って空を見上げていると首を痛くしてしまうため、地面にレジャーシート等を敷いて寝ころびながら観察するのがおすすめです。

 

流星群観察における注意・マナー

・「光」に気を付けよう

先ほど説明した通り、人間の眼は暗いところに慣れるのに時間がかかり、明るい光を見るとリセットされてしまいます。そのため、天体観望中は携帯電話やカメラのフラッシュ、懐中電灯等の明るい光は避けましょう。やむを得ず懐中電灯などを使用する際には、人の眼に優しい赤いフィルターをつけると良いです。

 

・観望地は静かに、綺麗に、マナーを守って

流星群観察や天体観望をしている場所は、自分の家や土地ではない限りは当然自分の物ではありません。近隣の迷惑にならないように静かに観察するのはもちろん、観察中に発生したゴミなどは全て持って帰るようにしましょう。また、立ち入り禁止の場所や人の私有地で勝手に観察するのは当然やめましょう。

 

・トイレは済ませて、防寒対策もしっかり

人工光がすくなく都市部から離れているような観察場所の場合、トイレがない場所も少なくありません。事前にトイレは済ませておきましょう。

また、繰り返しになりますが夏でも場所によっては夜に冷え込むところもあります。夏でも長袖の服、場合によっては上着を用意することをおすすめします。

 

 

流れ星を数えてみよう

流星群は道具が必要なく、誰でも簡単に観察することができる天体現象です。一方で、流星群はその時の空の条件によって毎年見える数は違います。

 

特に大きな影響を受けてしまうのは「月明り」です。月の明かりは、流星群に限らず星の光をかき消してしまうため、流星群観察においては天敵となってしまいます。そのため新月の際は流星群観察に最適で、満月の際は流星群観察に最も不向きであると言えます。年によって流星群観察において「好条件」、「悪条件」などがありますが、その大半はこの月明りによるものです。他にもその場所の地上の光、大気の状態によっても見える流星の数は変わってきます。また、純粋に地球に突入する塵の数によって流れる星の数は例年違います。

 

流星群シーズンの際は、学術研究のためにインターネット上で、流星が見えた場所、1時間に見えた数などを募集している団体もあります。もし流星群を継続して見る機会がある方は、1時間当たりの流星の数を数えて、年や場所による見える流星の数の違いを調べてみるのも良いかもしれません。

 

長い期間流星群観察を続けていると、流れ星流星群の「大出現」に立ち会うことができるかもしれません。地球に突入する塵の数が多く、多くの星が流れることで起きます。その中でもまるで童話の中のように短時間中に大量の星が流れる流星群を「流星雨」と言います。

 

もっとも有名なのは、大出現し流星雨となった「2001年しし座流星群」です。

20011119日の明け方に流星雨となったしし座流星群は、極大時刻には1時間に2000個を超える流星が見られる場所もあり、日本では好天に恵まれたこともあり多くの人がこの流星雨を目にしました。

 

流星群は道具が必要なく、誰でも簡単に見ることができ、また条件によって見える星の数も変わってくる大変魅力的な天文現象です。

 

皆さんも、流星群観察の扉を叩いてみませんか?

 

 

 

参考記事

国立天文台流星群

https://www.nao.ac.jp/astro/basic/meteor-shower.html

 

アストロアーツ 2001年のしし座流星群出現について

https://www.astroarts.co.jp/news/2001/11/19nao496/index-j.shtml

SPACEMedia編集部