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「私達が知る、たった一つのふるさと」-天文学者カール・セーガンとボイジャー1号が写した、ペイル・ブルー・ドット–

 

突然ですが、こちらの画像は、皆さんは何の画像に見えるでしょうか。

 

Credit:NASA

一見、少し光が差した、ただの空の画像に見えます。もしかしたら、撮影に失敗した、ただのノイズが入った画像だと思う人もいるかもしれません。ですが、画像の中心にある光の一線の中に、一つの青白い点があるのが分かるでしょうか。画面の傷や汚れに見間違えてしまいそうなほどの、1ピクセルの点です。

実はこの画像は、宇宙探査機「ボイジャー1号」が、1990年に約60億km離れた場所から撮影した、地球の画像なのです。

宇宙の遥か深くを進む、「ボイジャー1号」

この画像を撮影した「ボイジャー1号」が打ち上げられたのは、1977年でした。ボイジャー1号に与えられたミッションは、木星と土星の探査でした。当時、いつもはそれぞれの周期で回っている木星、土星、天王星、海王星の4つの惑星がほぼ同じ方向に並ぶ時期ということもあり、一機の探査機で複数の惑星探査を行うことができました。さらに、これらの惑星の重力を利用して、少ない燃料で太陽系の外側にある「星間空間」を探査することさえも可能だったのです。
ボイジャー1号は、当時まだわからないことが多かった木星と土星で高解像度の良質な観測データを得た後、ひたすら太陽系の外へ外へと旅を続け、星間空間に到達し、40年以上経った現在も進み続けています。ボイジャー1号は、現在も地球から最も遠く離れた人工物となっています。

ボイジャー1号は、太陽系から脱出するという性質上、あるもう一つの特殊なミッションを与えられました。それが「太陽系の外の宇宙へメッセージを届けること」です。

Credit:NASA

ボイジャー1号に搭載された、金メッキを施された銅製の「ゴールデンレコード」には、115枚の画像、地球上の様々な自然音や人の声、音楽、そして55言語の挨拶が収録されています。これはいつか、ボイジャー1号を発見した未来の「宇宙旅行者」が、未来の人類や地球について知ってもらうためのものでした。ボイジャー1号が太陽系以外の星系近くに到達するのは少なくとも数万年はかかりますが、それでも我々人類が「ここにいた」という証として、これからも宇宙を進み続けていきます。

このゴールデンレコードのミッションを考案した中心人物が、「カール・セーガン」でした。

宇宙に魅了された天文学者「カール・セーガン」

「カール・セーガン」は、少年時代から宇宙空間に広がる長大な空間に魅せられたアメリカの科学者で、ボイジャー1号のように太陽系の謎を解明するための惑星探査の指導者として、宇宙探査機計画に多く関わり、そして実際に様々なミッションを考案してきた人物です。また、当時はまだ難解な印象で一般的ではなかった「科学」という分野の面白さを、テレビ番組や小説を通して大衆に向けて発信もしていました。特にテレビ番組の代表作である「コスモス」は、多くの人々が科学者を志すきっかけとなりました。

こうした大衆への科学の発信やゴールデンレコードなど、宇宙探査以外にも様々な功績を持つカール・セーガンですが、特筆すべきものとして「人類のあり方」についての啓蒙があります。
カール・セーガンは宇宙に関すること以外にも、核戦争の後には大規模な環境変動により人為的な氷期が訪れるという「核の冬」理論を提唱し、核兵器が持つ危険性について警鐘を鳴らしました。また、科学について「悪霊が彷徨う闇の世界を照らすろうそくの光」と表現し、科学への無知を「人類の自殺行為」と訴え続けていました。
我々人類はこれから未来を歩むためにはどのようにあるべきか、それをカール・セーガンは常に発信し続けていました。そしてその代表的なものが、記事の冒頭で紹介した一枚の画像なのです。

たった一つの小さな小さなふるさと、地球

ボイジャー1号が、木星と土星の探査を終えて当初の目的であるミッションを終了した後、カール・セーガンは一つの提案をしました。それが「振り返って地球の画像を撮影しよう」というものでした。地球から数十億kmも離れた場所から地球を撮ったとしても、科学的な成果として得られるものは少なく、さらに探査機を振り返らせること自体にリスクがあることだったため、懸念の声も上がりました。しかし、打上げから12年が経過した1990年、ボイジャー1号は地球からおよそ60億km離れた太陽系の端から地球にカメラを向けて、一枚の画像を撮影しました。
それが記事冒頭の、小さな一点の地球の画像「ペイル・ブルー・ドット」です。
60億kmも離れた場所から見た我々が生活する地球は、僅か1ピクセルしかない、広大な宇宙空間に漂う小さな小さな一点だったのです。
カール・セーガンは、このペイル・ブルー・ドットについて、以下の解説を残しています。

 

From this distant vantage point, the Earth might not seem of any particular interest.

この遠く離れた場所から地球を見ると、あまり興味深い場所には見えない。

But for us, it’s different.

しかし、私たちにとっては違う。

Consider again that dot.

この点をよく見てほしい。

That’s here, that’s home, that’s us.

あれがここ、あれが故郷、あれが私達だ。

On it everyone you love, everyone you know,

ここに、あなたが愛する人、あなたが知っている人、全員が乗っている。

everyone you ever heard of, every human being who ever was, lived out their lives.

今まで聞いたことがない人も、既に生涯を終えた人もだ。

The aggregate of our joy and suffering,

私達の喜びと苦しみも数々も、

thousands of confident religions, ideologies, and economic doctrines,

何千もの自信に満ちた宗教、政治主張、経済主義も、

every hunter and forager, every hero and coward,

狩人も、採集者も、英雄も臆病者も、

every creator and destroyer of civilization,

文明の創造者も破壊者も、

every king and peasant, every young couple in love, every mother and father,

王様も、農民も、愛する若いカップルや、母親と父親、

hopeful child, inventor and explorer,

希望に満ちた子供たち、発明家と冒険家も、

every teacher of morals, every corrupt politician,

道徳の教師も、腐敗した政治家も、

every “superstar,” every “supreme leader,”

すべての「スーパースター」や「最高指導者」も、

every saint and sinner in the history of our species lived there

聖人や罪人、人類の歴史における全ての人々が、ここに住んでいる。

—on the mote of dust suspended in a sunbeam.

 —全て、この太陽の光の上野、塵にもひとしいこの場所に。

The Earth is a very small stage in a vast cosmic arena.

地球は、広大な宇宙の中の、とても小さなステージだ。

 Think of the rivers of blood spilled by all those generals and emperors so that,

すべての将軍や指導者たちがここで流した血の川は

in glory and triumph, they could become the momentary masters of a fraction of a dot.

勝利と栄光の名のもとに、この点の、そのごく一部の、束の間の支配者になるために

流された。

Think of the endless cruelties visited by the inhabitants of one corner of this pixel

この点の片隅にいる住人が、別の片隅にいる、

on the scarcely distinguishable inhabitants

ほとんど見た目の同じな準人に対して、

of some other corner, how frequent their misunderstandings,

どれほど残虐な仕打ちをしてきたか。どれほど多くの誤解をしてきたか。

how eager they are to kill one another, how fervent their hatreds.

どれほど熱心に人同士が殺し合うことか。どれほど激しい憎しみを持っていることか。

Our posturings, our imagined self-importance,

私達の気取った態度、思い込みや自惚れ、

the delusion that we have some privileged position in the Universe,

私達は宇宙の中で何か特別な存在なんだという錯覚、

are challenged by this point of pale light.

この淡い光の一点が、それらを教えてくれる。

Our planet is a lonely speck in the great enveloping cosmic dark.

私達の地球は、大きな宇宙の闇に包まれた、孤独な一点に過ぎない。

In our obscurity, in all this vastness,

この広大な宇宙の中では、私達は無名の存在だ。

 there is no hint that help will come from elsewhere to save us from ourselves.

私達自身を除いて、他に助けてくれる者は誰もいない。

The Earth is the only world known so far to harbor life.

地球は、生命が存在していることが確認されている唯一の星だ。

There is nowhere else, at least in the near future,

少なくとも近い将来、私達人類が他に移住できるような場所はない。

to which our species could migrate. Visit, yes. Settle, not yet.

例え他の星に訪問することが可能だとしても、住むことは無理だ。

Like it or not, for the moment the Earth is where we make our stand.

好き嫌いに関わらず、我々の唯一の住む場所は、地球だ。

It has been said that astronomy is a humbling and character-building experience.

天文学は、人を謙虚にさせ、人間の思い上がりを知ることができる学問だという。

There is perhaps no better demonstration

この画像ほどそれが分かるものはないだろう。

of the folly of human conceits than this distant image

遥か彼方からこの景色を見るほどには。

of our tiny world.

この、私達の小さな小さな世界を。

To me, it underscores our responsibility to deal more kindly with one another,

私達は、もっとお互いを尊重し、お互いに真心を持ち、

ssand to preserve and cherish the pale blue dot,

そして、この小さな青い一点を、大切にしていく必要がある。

the only home we’ve ever known.

私達が知る、たった一つのふるさとで。

–Carl Sagan, Pale Blue Dot, 1994

 

今を生きている私達も、全ての人々も、様々な問題や成功も、平和や戦争も、今までのことも全て、60億kmの彼方から見たら目を凝らさないと見えないほどの小さな小さな一点、ペイル・ブルー・ドットの上のもの。それを、カール・セーガンは伝えていました。

ボイジャー1号が宇宙へ旅立ってから40年以上が経ち、宇宙開発は発展し、月面基地や火星への移住が議論され始めています。私達は新しいフロンティアを求めて、動き始めています。そうしていると、私達は特別な存在なのだと思うこともあるかもしれません。

しかし、少なくとも今は、私達の故郷はたった一つだけであり、私達自身もまたそこで生まれた一粒の中の一粒なのです。美しくも儚い、宇宙のたった一点である地球。そしてそこで生まれた人間。そうして謙虚さを持ち、地球と、そしてその上に住む人々を大切にしていくのもまた、大切なのです。

地球の外に向けてひたすら進むボイジャー1号は深宇宙への憧れを多くの人に伝えてきましたが、地球そのものの大切さについても教えてくれています。

たまには宇宙から振り返って、地球を思うことも、大切なことなのかもしれません。

 

<参考>

NASA – Voyager 1s Pale Blue Dot
https://solarsystem.nasa.gov/resources/536/voyager-1s-pale-blue-dot/

THE  PLANETARY SOCIETY – A Pale Blue Dot
https://www.planetary.org/worlds/pale-blue-dot

 

SPACEMedia編集部