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長年の事業で培った技術を活かしつつ新事業を模索、両利きの経営を進める―アジア航測

航空機をはじめとして、ドローンやMMS、人工衛星などさまざまな手段で空間を測る
センシングのプロフェッショナル・アジア航測。新規事業創出にも取り組む同社では、
新鮮なアイデアや発想をもつ他者とのシナジーを模索している。

右から、
藤本 雄一 氏(ふじもと・ゆういち)
アジア航測株式会社 新規事業創造本部 ビジネス企画部 副部長
森田 直子 氏(もりた・なおこ)
アジア航測株式会社 新規事業創造本部 ビジネス企画部
山本 一二郎 氏(やまもと・いちじろう)
アジア航測株式会社 新規事業創造本部 ビジネス企画部

自社所有の航空機で迅速な撮影を実現、先進技術も積極的に活用

1954年2月に設立、2024年に創業70周年を迎えるアジア航測。
航空機使用事業、測量、検査技術コンサルティング、地質調査など、多様な事業を手がける同社だが、いくつかある空間情報系企業の中でも特徴的なのは、自社で航空機を保有している点だ。これにより、災害時などには航空機で迅速に被災地の状況の撮影などができ、その成果はホームページで掲載されるなど社会的意義も高い。

また、アジア航測は世界で初めて空中写真から地図を量産化する技術を実用化するなど、地理空間情報関連の技術開発や先進技術の導入も積極的に進めている。現在では航空機に加えドローンや車両による測量システム・MMS、人工衛星なども活用して多様な空間情報を取得、事業に活用しており、技術開発の面では、地形のリスクを速やかに発見できる赤色立体地図の発明や、自由な視点で空間情報を可視化できる独自の3Dビューアー構築にも取り組み、こうした技術・データを活かして、データ取得から解析まで一気通貫で提供するコンサルティングサービスも行っている。

同社が発明した「赤色立体地図」では実際の地形を1枚の地図で立体的に見せる表現技法を用いており、地形のリスクを速やかに発見できる

次世代の地理空間情報・3D都市モデルのマニュアル整備に関与

そんな同社では、IoTやAIを活用したセンシングイノベーションにも取り組んでおり、3D都市モデルの自動生成技術構築、都市のデジタルツイン生成なども行っている。現在、アジア航測が最も力を入れているトピックの一つが、国土交通省が主導するプロジェクト『PLATEAU』におけるマニュアル作成とユースケース創出だ。

アジア航測新規事業創造本部ビジネス企画部の山本一二郎氏は取り組みの概要をこう説明する。

「PLATEAUのプロジェクトにおいて、当社では標準製品仕様書、標準作業手順書、測量マニュアルの3つの作成に携わっています。標準製品仕様書は、各都市で3D都市モデルを整備する際に国際標準に準拠したものになるよう示したもの、標準作業手順書は仕様書の内容を深掘りしたもので、手順に基づき整備した3D都市モデルを国際標準に適合させるために守るべき事項を記載しています。測量マニュアルは、3D都市モデルの整備にあたり必要となる測量手順及び成果物を定め、その精度担保及び品質の均一化を図ることを目的とした技術資料です」

アジア航測はPLATEAUのプロジェクトにおいて標準製品仕様書、標準作業手順書、測量マニュアルの3つの作成に携わっている

3D都市モデルは今後、各都市のまちづくりや防災計画などにも活用されるであろう重要なデータだ。こうしたデータの標準製品仕様書、標準作業手順書、測量マニュアルの作成に取り組むアジア航測の技術力の高さがうかがえるプロジェクトだといえるだろう。

「当社独自の取り組みとしては、エリアマネジメントの観点から地域のにぎわいを創出したい自治体・地域に対し、従来は紙を媒体に開催されていたまちづくり会議に3D都市モデルを導入、参加者がより視覚的にまちへの理解を深め、合意形成の効率化を図る支援や、災害時の避難経路や避難誘導の検討などに3D都市モデルを活用いただいています」(山本氏)

他にも、土地利用や都市計画に関する規制情報を3D都市モデルに統合、事業者と行政の双方で利活用することで開発許可のDX・業務効率化などに利用したり、太陽光発電の発電ポテンシャルをデータから推計し発電所の設置場所検討に活かすというカーボンニュートラル面でのユースケースもあるという。

スタートアップへの積極的投資など新規事業に本格着手

『空間情報技術で社会をつなぎ、地球の未来を創造する』という長期ビジョンを掲げる同社では、ビジョン達成に向けた戦略の一環として新規事業創出やスタートアップ投資を重点的に進めている。外部企業とのM&Aや投資に加えて、2016年から実施しているのが社内ベンチャー制度だ。

アジア航測新規事業創造本部ビジネス企画部の森田直子氏は、「この制度では、大きく3つのステップで社内から提案されたアイデアの事業化を進めています。広く社内から提案を募って事務局で精査、また提案書作成の支援などを行い、次のステップで事業化の可能性調査(フィージビリティ・スタディ:FS)を実施します。FSで実現可能性が認められれば事業化に進み、その後、事業部設置や企業設立につなげます。それぞれのステップに進むためには経営陣を前にしたプレゼンなどのハードルもあるのですが、これまでに『クロスセンシング』や『釣りドコ』『アンドヴィオラ』という3つのビジネスが生まれています」と話す。

事業化までのステップについて、同じくビジネス企画部の藤本雄一氏は、「最初の提案時には提案者の熱意を最も重視します。ステップ2では、事業概要や、事業が顧客や社会のペインの解決につながるものかどうか、資金面を含めてビジネスとして成立するかという点を見ています。ステップ3になると提案者に、商品開発含めた形で市場に受け入れられるのかの確認を行ってもらい、収益性が見込める事業計画を策定できれば、新組織設置や子会社として独立する、という流れです」と話す。

上/アジア航測では2016年から社内ベンチャー制度を実施。これまでに3つの事業が生まれるなど、すでに成果が出ている
下/同社の中期経営計画においても、新規事業戦略は重要な位置づけとなっている

社内ベンチャー制度を経て、2020年にアジア航測の子会社として設立されたクロスセンシングでは、スポーツ選手の生体情報を可視化してフィードバックするサービスを提供しているが、今後はこの技術を林業や建設現場に応用できないか検討しているという。親会社と子会社の間で技術が循環し、ビジネスが拡大するというサイクルが生まれている。

今年も、MMSを活用したものと赤色立体地図を活用したもの、2つの新しいアイデアの事業化に向けた検討が進んでいるという。森田氏は、イチBizアワードへの協賛をさらなるシナジー創出につなげたいと期待を寄せる。

「イチBizアワードの応募者には若い方が多く、フレッシュな意見、我々では想像できないようなアイデアがあるのが魅力です。完成したアイデアでなくても、魅力的なアイデアであれば、当社のコア技術と融合し、一緒に何かできるかもしれません。あわせて、社内で検討が進んでいるアイデアとマッチングできる出会いがあることをとても楽しみにしています」

【イチBizアワードとは】
『イチBizアワード』は、内閣官房による、地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテストです。
2022年に第1回が行われ、第2回は2023年8月31日までアイデアの募集が行われました。応募されたアイデアは、審査を経て2023年11月上旬に結果発表が行われる予定です。

https://www.g-idea.go.jp/2023/

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