Credit: 株式会社すららネット
近年、宇宙業界では理系出身者だけでなく、文系出身者も多く活躍しています。ですが「理科離れ」という言葉があるように、まだまだ「理科」という教科に対する苦手意識を持つ子どもたちが多くいます。
今回は、そのような苦手意識を克服するための独自開発をしたデジタル学習教材「すらら」の企画開発・販売を行う、株式会社すららネット(以下、すららネット)の開発責任者の柿内氏と、理科開発者の亀田氏にお話を伺いました。
すららネット公式HP:https://surala.jp/
すららネットが提供する独自の教育
―本日はよろしくお願いいたします。まず初めにすららネットが提供している教材の特徴についてお聞かせいただけますでしょうか。
柿内氏 弊社で提供をしているのは、お子さま1人1人に合わせた学習体験です。
受験のための学習というより 、基本学習の強化を目的としたe-ラーニングのコンテンツを提供しています。例えば、学校の授業に付いていけなかったり、学習障害などの悩みを持っていたり、そのようなお子さま方を救い上げたいというところが1番の理念となっています。
国内だけではなく海外でも、満足に教育が受けられない環境にいるお子さま方や保護者の方に向けて、学ぶことの楽しさを提供し、将来に可能性を見出せるような授業を目標として展開しています。
その中でも「わからないをなくす」という部分を特に大切にしています。これは、教材開発において1番大きなテーマだと思っています。
―「わからないをなくす」というのは、御社が特許を取得されている「すらら独自のつまずき診断システム※」に通じていますでしょうか。
柿内氏 そうですね。お子さまによって、苦手なポイントや、つまずいてしまうポイントが違いますので、それを個々に診断して、お子さまに適した復習プランを提案するようにしています。進める子にはどんどん次のステップを提案し、つまずいてしまった子には、それを克服していけるプランを提案してあげられるシステムとなっています。
※「すらら独自のつまずき診断システム」:高精度AIによって、間違えた単元を繰り返すのではなく、各生徒が苦手なポイントを判定して、復習させる機能。(2013年6月に特許登録認定)
Credit: 株式会社すららネット
「体験」を重視した「理科」教材
―小学校から始まる「理科」の単元ですが、すららネットで提供されている理科教材はどのようなものでしょうか。
亀田氏 「わからないをなくす」という部分で、教材の作り方から大切にしています。特に理科は「理科離れ」という言葉があるように、わからないところがないように理解してもらうことが目的となってきます。そのため、実際に起きた現象やその原因を「体験」することがとても重要です。学校の授業の場合は、実験があったり、実際に外に行って観察するといった「体験」が必ずありますよね。それを可能な限り、いつでもどこでも疑似体験ができるコンテンツを作ることを重視しています。
ただ「すららネット」はe-ラーニングなので、画面の中での体験しかできません。その中で可能な限り、現実に近い体験ができるシステムを提供して、理解を深めるというところを意識しています。
無学年式オンライン教材「すらら」特別無料特別体験:https://surala.jp/home/trial/
「天体」を3Dでリアルに再現
―画面上で“現実に近い体験”とは、どのようなものでしょうか。
亀田氏 小学生で学ぶ「天体」の単元の場合、自分で星を探す体験ができる教材作りを目指し、画面の中で立体的に学習できる「3Dレクチャー」を導入しています。
実際は、日中ですと星は見えないし、夜も必ず見えるとは限らないですよね。なので、星空を3Dで再現することでいつでもリアルな星空を見ることができますし、誰でも「オリオン座を見つけました」という体験ができるアクティビティーを提供しています。
夏の夜空の星:小学高学年 理科 小学地球分野
Credit: 株式会社すららネット
―かなりリアルな星空ですね。自分で星を見つけるとはどのようなアクティビティーなのでしょうか。
亀田氏 アニメーションの中で、大事なポイントにはクイズが出題され、考える時間が与えられるシステムになっています。例えば、七夕の時には「織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)を探してください」といった問いかけがあり、自分で夜空を動かして、星を見つけるという体験ができるようになっています。制限時間後には、正解の星が映し出され、解説が入るので、実際に星空を見ているような状況で学ぶことができます。
―七夕以外では、どのような星空があるのでしょうか。
亀田氏 「夏の星空」と「冬の星空」があります。教材ですので、小学生が学ぶ天体の内容に沿っていますが、季節ごとで見える星空が変わるという部分も伝わるように、精密に再現しています。
夏の星空では「夏の大三角形」を形成する「こと座(ベガ)」「わし座(アルタイル)」「はくちょう座(デネブ)」、「天の川」「さそり座」について触れ、冬の星空では「冬の大三角形」を形成する「オリオン座(ベテルギウス)」「こいぬ座(プロキオン)」「おおいぬ座(シリウス)」を学べる教材となっています。
また3Dレクチャーを導入しているものでは、夜9時から朝方にかけての時間に応じた「星の動き」や「月の形の変化」を再現した教材があります。
「月の形の変化」の場合、教科書には暗い部屋の中にボールを8個並べる方法が掲載されていますが、それを自分で動かして見ることで、より理解しやすいようにしています。
―自分で動かせるとありますが、どのくらい自由に操作できるのでしょうか。
亀田氏 東西南北、360度回転させることができます。
教科書には「東の空に見られる」と書いてあっても、東がどの方角かというのを急に意識することは難しいと思います。それを可視化して、実際に自分で探す体験をすることで教科書とは全く違う学びを伝えようとしています。
―「天体」の3Dレクチャー以外にも、体験型の教材はありますか。
亀田氏 理科の単元では、教科書に掲載されている「実験」などを体験できるようにしています。例えば「リトマス紙」を使った実験などもアクティビティとして、実際に液体をたらして、リトマス紙の色の変化などを見ることができるシステムを提供しています。
水よう液の仲間分け:小学高学年 理科 小学物質分野
Credit: 株式会社すららネット
―まるでゲームみたいな感覚ですね。
亀田氏 理科に興味を持っていただけるようにしたいですね。「理科離れ」という言葉があるように、年齢が上がるにつれて、理科に対して苦手意識を持つ子が増えています。
今回は小学生の単元について紹介しましたが、中学校の教材も火山の噴火などアニメーションで紹介した体験型を意識しているので、楽しいと思ってもらい、理科離れを克服してもらえるように、盛り上げていきたいです。
火山はどうやってできるのか?:中学 理科 地理分野
Credit: 株式会社すららネット
すららネットが目指す教育
―e-ラーニングを最大限活かした独自の教材を提供されていますが、新たな取り組みなどはありますでしょうか。
柿内氏 現在、NECスペーステクノロジー株式会社(以下、NECスペーステクノロジー)さんと「宇宙教材」の共同開発を行っています。
これまでは基本の強化学習をメインとしていましたが、今は探究学習やアクティブラーニングといった“解がない問い”に取り組むことで生きる力を養うということが注目されています。そのようなアクティブラーニングのイベントを実施する中で、NECスペーステクノロジーさんとご縁があり、探究学習をさらに広げるコンテンツの提供に向けて、今までにないシステムを組み入れた「宇宙教材」の共同開発を行っています。
―リリースのご予定はいつ頃を予定されていますか。
柿内氏 2022年秋から、いくつかの学校でトライアルの利用をしてもらう予定です。その後、改良を加え 、2023年春に向けてのリリースを目指しています。
また、探究学習は「解がない」というところで、正解したら何点など点数を付けられるものではないので、評価基準も変わります。
そのため先生や生徒たちが、きちんと評価に納得のいくシステムにしたいと思っているので、トライアルを通してより良い教材を提供できるようにしていきたいです。
―今後、どのような教育を目指していくのか、お聞かせください。
柿内氏 現在、小学校から高校までのコンテンツは一通り揃ってはきていますが、 学習障がい や発達障がいを持つ子たちに向けてできることや海外に届けられるコンテンツなど、取り残されるお子さんたちが出ないようにするため、国内外問わず、まだまだ沢山できることはあると思っています。今回紹介した3Dのツールを組み込むのもそうですし、わかりやすく、学ぶことが楽しいと思えるコンテンツを提供して、子どもたちの色々な可能性や未来を広げていけるようなものを提供していきたいです。
以上、今までにない新たなe-ラーニング教材で教育業界を牽引する、すららネットのインタビューでした。「理科離れ」や「勉強が苦手」という概念はとてももったいのないことだと思います。子どもたちのこれからの未来への道筋や可能性を広げるために、学ぶ楽しさを「体験」できる教材の大切さを知りました。すららネットで学習した子どもたちの今後の活躍が楽しみです。
SPACEMedia編集部