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衛星コラム第1回 宇宙から見る気候変動 ~気温上昇と温室効果ガス~

地球の平均気温が上昇し、かつてないほどの豪雨、酷暑、猛烈な台風などの極端気象を引き起こしている気候変動。衛星による地球観測データは、気候変動の実態把握や、その対応に使われています。気候変動の分野における衛星データの利用について紹介します。

 

そもそも地球の気温はどのくらい上昇しているのでしょうか。気象庁によれば、世界の平均気温は最近100年で約0.7度のスピードで上昇しているといわれています。直近では、2020年に世界平均で観測史上1位タイの気温が観測されました。

 

これらの記録は地上の設備で観測されたものですが、人工衛星の中には熱赤外線のセンサーを搭載しているものがあり、地表面の温度を観測することができます(図 1)。熱赤外線は通常の赤外線よりも長い波長で、サーモカメラや非接触体温計でも使われており、対象物の温度を測定できます。

 

一般的に気温は地上から1.5mの高さで温度を測られる一方、衛星で観測する地表面は、地面、建物、木々、雪氷などの表面が対象です。衛星の場合、地上観測のような点ではなく、面的に広く観測できるというメリットもあります。また、広範囲の中から特に高温の地域を検出し、数ヘクタール規模の森林火災の発生を監視することにも使われています。

図 1 NASAのTerra衛星が観測した全球の地表面温度

(過去の平均温度との変化を色で表している)

出典:NASA

2021年11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26では、産業革命前に比べ、世界の気温上昇を1.5度未満に抑える努力を追求することが合意されました。地球の気温上昇の大きな原因は、人間活動によって排出される「温室効果ガス」と言われているので、この温室効果ガスの排出を抑えることが、地球の温暖化を防ぐ手立てとなります。

 

日本の法律は7つの物質を温室効果ガスとして定義しており、その中で真先に挙げられているのが二酸化炭素(CO2)です。そしてこの二酸化炭素も宇宙から観測することができます。

 

日本は世界に先駆けて、温室効果ガスを観測する専用の衛星「いぶき」(GOSAT)を運用しており、2009年から継続的に二酸化炭素の濃度を観測しています(図 2)。観測を開始した2009年に385ppm(ppm:濃度を表す単位)前後だった二酸化炭素濃度は、2015年に初めて400ppmを超え、現在は約420ppmに達しています(RESTECのページ参照)。

図 2 いぶきが観測した全球のCO2濃度分布(提供:JAXA)

(2009年6月から2021年4月までの月平均の濃度分布図を並べている)


温度や二酸化炭素は地上の観測装置で測ることもできますが、地球全体の状況を把握するためには、全球をまんべんなく観測できる衛星が有効です。そして、温暖化が進むと地球の至るところで様々な変化が生じます。衛星はそのような変化を捉えることにも長けていますが、それは次回のコラムでご紹介します。

 

RESTEC 亀井 雅敏