前回のコラムでは、地球全体の温度が上昇していることや、その原因とみられている温室効果ガスの濃度が上がっていることを紹介しました。今回は、気温が上昇することによって引き起こされる地球の様々な変化についてお話しします。
温暖化によってどのような変化が生じるかは地域によって異なりますが、北極はそのような変化が表れやすい地域です。北極を覆っている海氷は日々その形や大きさを変えており、毎年9月に面積が最小となります(図 1)。1980年代は9月でも約700万km2の海氷に覆われていましたが、2021年9月の平均は492万km2でした。その差は約200万km2で、日本の国土の5倍以上の面積が減少していることになります。なお、観測史上最少は2012年9月に記録した約360万km2で、2021年は史上12番目の小ささでしたが、最近15年間(2007年から2021年)の記録が史上1位から15位までを占めています。
図 1 2021年9月16日の北極海の海氷分布図
(黄色い線は1981年から2010年の海氷の平均的な形)
海氷の縮小によって、温暖化の更なる加速や生態系への悪影響などが懸念されていますが、船舶が北極海を航行できるようになるという物流面のメリットもあります(RESTECのページ参照)。ただし、海氷は船舶と衝突して海難事故を引き起こすため、安全な航行のためには海氷の監視が重要です。実際に、オホーツク海の海氷監視には衛星データが用いられており、海上保安庁が衛星などから情報を集約して海氷速報図を作成・公開し、この海域を航行する船舶の流氷事故を未然に防いでいます。
ところで、気候変動による影響の1つである海面上昇は、陸上の氷が解けて海に流れ出ることによって起こるため、元々海に浮いている海氷の融解とは関係がありません。陸上の氷とは何かと言うと、南極やグリーンランドの氷床です。2002年から2020年の平均では毎年1490億km3(149ギガトン)という途方もない量の氷が解けています。
図 2 Landsat衛星が捉えた南極のイーグル島
(左は2020年2月4日、右は同年2月14日の観測)
南極西部の南極半島近くにあるイーグル島(図2)では、2020年2月4日から13日にかけて多くの氷床が融解し、陸地が露になり、南極では珍しい融解池(Melt Pond)が生成されました。この間、南極半島の気温は18.3℃に達しています。
図3 アンデス山脈のビエドマ氷河
(1985年から2022年の画像を結合)
また、ヒマラヤやアルプスなどの山岳地帯の氷河の融解も進んでいます。図 3は、アルゼンチン南部アンデス山脈のビエドマ氷河で、1985年から2022年に取得された衛星画像を時系列に繋ぎ合わせたものです。1985年からゆっくりと、融解によって氷河がおよそ3kmも後退していることがわかります。1972年に米国がLandsat衛星を打ち上げて以降、衛星による地球観測は半世紀続いていますので、このような長期の時系列変化を見ることが可能です。
RESTEC 亀井 雅敏