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元JAXAで大気圏再突入技術の第一人者・藤田和央氏が宇宙スタートアップのElevationSpaceに参画

国際宇宙ステーション(ISS)に代わる世界初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する宇宙スタートアップの株式会社ElevationSpace(以下ElevationSpace)は2023年4月21日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で大気圏再突入技術を牽引してきた藤田和央氏を研究開発担当バイスプレジデントに迎え、経営体制と研究開発力を強化し、新たなリーダーシップチームを組成したと発表しました。

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Credit: 株式会社ElevationSpace

新たなチーム組成の背景

これまで基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されてきたISSは、構造寿命などの関係から2030年末に運用を終了することが決定しており、その後宇宙利用を行う場所が無くなると考えられています。

ElevationSpaceは「ポストISS時代」を見据え、世界初の宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」の提供を目指しています。

「ELS-R」は、無重力環境を生かした実験や実証を無人の小型衛星で行い、それを地球に帰還させて顧客のもとに返す世界初のサービスです。このサービスを実現するためには、宇宙空間に打上げた物資を地球に持ち帰ってくる「大気圏再突入技術」が欠かせません。

同社は、人工衛星が軌道を離脱し、大気圏に突入、燃え尽きずに大気圏を突破し、その後回収するという難易度の高い技術を実現しようとしていますが、国内における大気圏再突入技術の成功例はJAXAが行った数件しかなく、世界でもこの技術を持っている企業は限られています。

同社の研究開発担当バイスプレジデントに就任した藤田和央氏は、JAXAにおいて小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」や、次世代型無人宇宙実験システムの再突入モジュール(USERS/REM)の開発に従事し、大気突入・着陸・回収(EDL&R)の技術開発をリードしてきました。はやぶさシリーズでは、大気圏再突入時にカプセルが1万度以上の高温にさらされ、表面温度は3,000℃にまで達しましたが、無事サンプルリターンを成功。同社によると、藤田氏の持つはやぶさシリーズの知見は、「ELS-R」の再突入カプセル開発においても非常に有意義なものだとしています。

宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」
Credit: 株式会社ElevationSpace

藤田氏「新しい宇宙サービスを実現したい」

藤田氏は、東京大学大学院航空宇宙工学専攻博士課程修了後、JAXAで20年以上研究開発に従事。数多くの再突入・回収プロジェクトへ参加した経験があり、大気圏再突入技術の第一人者です。

ElevationSpaceの研究開発担当バイスプレジデントに就任したことについて藤田氏は「これまで培った知見を活かし、若い世代へ伝えていくとともに、私自身も引き続き勉強して、新しい宇宙サービスを実現したいと考えている。まずは宇宙から地上への物資を運ぶ輸送システムを、いずれは人が宇宙と往来するシステムを日本でも実現したい」とコメントしました。

同社は藤田氏をリーダーシップチームの一員に迎え、研究開発を加速していく計画です。