宇宙に行く方法はロケットだけではなく、実はスペースバルーンという気球で行くことも可能です。スペースバルーンは、ヘリウム等のガスを気球に注入し、近宇宙まで(成層圏へ)打ち上げることができます。
スペース・バルーン株式会社は、スペースバルーンでの有人宇宙飛行の開発を行っている茨城県の企業です。2021年2月、同社は、茨城県大洗町に「スペースポート茨城」を建築予定であることを発表しました。この宇宙港はロケットの発射場ではなく、スペースバルーンに乗って人が成層圏まで行き、帰ってくるための拠点になります。コンセプトは「自然との共存」であり、実際にスペースバルーンの打ち上げの時は、近くまで寄って打ち上げを見ることが可能になっています。
現在のスペースバルーンは、天然ゴムでつくられた気球になっており、想定した一定の高度に達すると、気球が破裂してパラシュートで降りてくるように計算されています。現在、有人宇宙飛行のために開発が行われているものは、最終的には地上での直径が約50m超になると予測されており、何トンという重さのものも運べるようになります。現在の小型のスペースバルーンは、気球を破裂させパラシュートで降下させますが、最終形態の大型スペースバルーンは、破裂させずにガスをコントロールしながら、海上へ帰還するシステムを想定しています。最大20人が乗船可能であり、1時間かけてゆっくり成層圏に上がり、1時間かけて地上に戻ります。ロケットとは違い、ゆっくり時間をかけて上がるため、その間は青い地球を眺めることができます。また、正確な飛行経路とバルーンのコントロールによって陸から約20~30kmの沖に安全に着水させる予定です。まずは、一人乗り旅行(実質は二人)を2~3年後に実現させることを目標にしています。
そして今回は、増子秀典氏が代表を務めるスペース・バルーン株式会社にお話を伺いました。
(以下、スペース・バルーン株式会社)
スペースバルーンによる有人宇宙飛行を実現することで、子供たちに夢を与えてあげたいという想いがあります。
「宇宙は新しい分野だから難しい」というイメージを抱く方が多いと思いますが、もはや手が届かない領域ではありません。最終的には、一人約100万円での宇宙旅行を実現したいと考えています。ロケットで宇宙に行き、青い地球を見られる人は世界で何人もいませんが、この有人宇宙飛行が現実となった場合、子供からお年寄りまで楽しんでいただけたらと思います。
また、エンターテインメント分野だけでなく、農業や防災といった様々な産業でも活用したいと考えています。衛星とは違い、スペースバルーンは比較的すぐ打ち上げが可能ですし、民生カメラでも高性能なデータを取得することができます。茨城県は農業国であり、美味しいフルーツ、野菜、さつまいもなどが収穫できますが、近年の自然災害が要因となり、安定した供給バランスがとれていません。スペースバルーンで取得したデータを活用し、環境問題への解決策として役割を果たせたらいいと思います。
さらに2019年、茨城県は台風による大雨で甚大な被害を受けました。その当時、ドローンなども活用したのですが、広域に及ぶ地域の被害状況の把握が困難であったため、スペースバルーンが防災という面で役に立つのではないかと考えました。まだ検討段階ではありますが、スペースバルーンの持つリモートセンシング能力や精度を高める事により、より効率的に広範囲のデータの取得が可能になるのではないかと考えています。
産業への貢献も含め、まずはスペースバルーンの有人宇宙飛行を目標に掲げ、今後とも実現に向け頑張っていきます。
以上、スペースバルーンについて解説しました。100万円で宇宙旅行にいける時代が楽しみですね。
Photo Credit: https://www.spaceballoon.co.jp/
SPACEMedia編集部