• HOME
  • 宇宙ビジネス
  • 総合力でISS運用を支えるジェネラリスト集団- 株式会社アミル - SPACE Media

総合力でISS運用を支えるジェネラリスト集団- 株式会社アミル

宇宙工学は総合工学と呼ばれ、幅広い分野の工学を組み合わせて宇宙開発は成立しています。各分野の技術力だけでなく、それらを統合するための力が求められます。今回のインタビューでは、幅広い分野の知見を活かして日本の宇宙開発を支えている株式会社アミルの武藤氏、山崎氏、佐々木氏にお話を伺いました。

アミルと宇宙との関係

―本日はよろしくお願いします。初めに、貴社の事業概要についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

山崎氏 私たちは、研究開発の支援を行っています。お客様は国の研究機関や民間の研究所になります。事業分野としては、航空宇宙関連事業、研究開発総合支援事業、エンジニアリングサービス事業があります。

Credit: 株式会社アミル

航空宇宙関連事業は主にJAXA関連の業務であり、国際宇宙ステーション(ISS)/日本実験棟「きぼう」の運用関連、月・火星探査の開発、航空機の軽量化・電動化に関する研究開発支援を行っています。研究開発総合支援事業では、化学・材料・環境・生物に関する基礎研究の支援を行っています。エンジニアリングサービス事業は、プラントエンジニアリング全般を担う事業であり、プラントの設計・解析・運用までをサポートしています。例えば、PCB無害化業務や原子力プラント配管構造解析などとなります。

―防衛省やJAXA、日本原子力研究開発機構、東電HDやIHIなど、国の機関や大手民間企業との取引が多くあると伺いました。

佐々木氏 このような広がりがあるのは、大手重工との付き合いがきっかけです。長い間、材料評価関連で分析のみならず研究内容の提案など様々な業務を行っていたところ、その繋がりから派生して、電力会社やJAXAともお取引を頂けるようになりました。当初は、タービンの金属評価や燃料電池の触媒研究などを行ってきました。

―JAXAとはどのようなきっかけでお取引が始まったのでしょうか。

山崎氏 宇宙実験や各種活動等に用いる材料には安全性などの観点から様々な制約があり、その制約を満たしているかを確認するための試験が求められます。AMIL設立当初にこの安全性を実証する試験の業務がスタートし、これがきっかっけでISS関連の業務を行うようになりました。この試験を実施する中で、いろいろな方々との繫がりが構築され現在に至ります。

Credit: 株式会社アミル

ジェネラリストとしてのアミル

―ISSの運用に関する業務とはどのようなものなのでしょうか。

山崎氏 大きくには運用管制業務と各種調整業務というものを行っています。運用管制業務では、つくばにある運用管制室から日々の運用が計画通りに進んでいるかをリアルタイムで確認し、計画通りに進んでいない場合は対応を考え、対処することを行っています。各種調整業務では、国際間の調整を支援しています。ISS運用は参加国の協力で成立っており、JAXAやNASA等の計画などがある中で連携しながら調整しています。

―ISS周りの業務を任されるに至った、アミルの強みや特徴はなんでしょうか。

佐々木氏 工学のあらゆる分野に満遍なく対応できるジェネラリストとして重宝されているということだと思います。多種多様な分野のお客様に支えられている私たちの会社には、化学、材料、電気と幅広い分野に対応できる社員が揃っています。調整業務では色々な方とコミュニケーションを取ることが求められますので、どんな話でも対応できるということが非常に活きています。

―なるほど、ジェネラリストですか。

山崎氏 運用業務とモノづくりは異なります。運用するとなると細かく様々なことに対応していかなくてはなりません。会社として工学的な技術力を持っていることはもちろん、それに加えてコミュニケーションが必要です。私たちが社内で「社会性スキル」と呼んでいるものになりますが、人と人がやりとりをしてビジネスは成立するわけですから、会社としてこの部分の教育に長年力を入れ、社員一人一人がこのことを意識して仕事に取り組んでいます。

これからのビジョン

―2030年にISSが退役すると言われていますが、民間の宇宙ステーションが打ち上がった時にISSでの運用の経験が活かされていくという可能性はあるのでしょうか。

山崎氏 あり得ると思います。現在までの経験が活かされるように取組んで行きます。

―他にはどのような領域で宇宙産業と関わっていくのでしょうか。

武藤氏 内閣府「宇宙基本計画(および工程表)」やJAXA「日本の国際宇宙探査シナリオ(案)2021」には、数多くの宇宙への挑戦が示されています。宇宙産業といえばロケットを打ち上げて人工衛星を飛ばすというイメージが強いですが、今後産業として大きくなっていくのは宇宙の利活用の分野になると思います。なかでも小型衛星コンステレーションの開発やそのデータの利用、さらには月の移住や建築などの分野にも広がっていくでしょう。我々は長年にわたり、JAXA殿と取り組んできましたので、この先も一緒に歩んでいきたいと思います。そして、日本の宇宙産業をもっと大きくしていけたら素晴らしいと考えています。

―まだまだ新しい挑戦が待っていそうですね。

武藤氏 いまよりももっと世界が広がっていきます。月面開発で言えば、ローバーや探査センサの技術等が必要ですが、今後は居住棟や農業施設の建設、さらにはエンターテイメント等まで、街づくりの技術も必要とされるでしょう。宇宙関連のイベントでも、最近では建設会社がスポンサーになっているなど、異業種の分野から多様な企業が宇宙産業に参入しつつあります。我々はISS運用で培ってきたノウハウを生かして、そうした多くの企業をご支援できるようになっていけたらと思います。

―これからどのようなエンジニアが求められていきますか。

武藤氏 調整やマネジメントのスキルが益々重要になります。技術力や英語力は手段として当然必要ですが、私たちの役割は総合力でまとめていくことなので、そうした資質のある方を多様な経験を持つ方を幅広い分野から募集しています。また、将来の夢を語ることも多いので、是非若い方々に挑戦していただきたいと考えています。

以上、株式会社アミルのインタビューでした。宇宙産業は幅広い分野の技術が求められるからこそ、多様な関係者とコミュニケーションをとってまとめていく役割が非常に重要となります。これから広がっていく宇宙開発の中で、株式会社アミルがどのように活躍していくのか注目していきたいと思います。

テキスト ボックス:

【氏名】武藤栄一郎

【役職】取締役

【経歴】川崎重工業(株)にて新たな防衛装備品の研究開発に従事、

日本航空宇宙工業会(出向)、今年3月定年退職

4月より(株)アミル

【氏名】山崎利夫

【役職】北関東事業部長

【経歴】1999年入社。官公庁研究所をメインとした技術提案をするなかで宇宙開発関連の事業に携わる

【氏名】佐々木俊文

【役職】管理部部長

【経歴】2005年入社。総務・人事等を中心に業務に携わる