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宇宙ビジネスで地域産業を活性化-株式会社サイエンス・クリエイトが目指すもの

「今、未来、そしてその先へ」を経営理念に、新産業の創出支援や地域社会を支える人材の育成を行う株式会社サイエンス・クリエイト。近年は衛星データ利活促進事業や宇宙ビジネス相談デスク「宙(ソラ)サポ」を初めとした宇宙関連事業に精力的に取り組んでいます。今回は同社の宇宙ビジネスコーディネーター 勝間亮氏に具体的な取り組みやそこにかける想いについてお話を伺いました。

 

■目次

(1)株式会社サイエンス・クリエイトとは

(2)宇宙ビジネスで地方創生を

(3)宇宙ビジネス相談窓口「宙サポ」

(4)サイエンス・クリエイトが目指すもの

 

(1)株式会社サイエンス・クリエイトとは

株式会社サイエンス・クリエイト(以下サイエンス・クリエイト)は愛知県豊橋市に本社を持ち、東三河全体の産業の振興と発展を目指して平成2年10月に第三セクター方式で設立されました。近年は急速な技術革新に合わせたイノベーション創出を目的に「産学官連携による新産業創出拠点」、「創業・スタートアップ支援拠点」、「ものづくり人材育成拠点」という3つの機能に重点を置いた事業を推進しています。

サイエンス・クリエイトが近年力を入れて取り組むのが宇宙関連事業です。具体的には次のような事業を展開されています。

・研究開発支援

・衛星データ利活用ヒアリング

・宇宙ビジネス相談窓口

・宇宙ビジネス検討イベント(アイデアソン)の開催

・Tellusとの連携、各種ネットワーキング

・関連事業

サイエンス・クリエイト30周年記念ムービー[https://www.youtube.com/watch?v=pWHrQf6FsVw]

 

 

(2)宇宙ビジネスで地方創生を

宇宙関連事業と聞くと、ロケットや人工衛星、宇宙探査機の開発・研究など人々の生活とは離れたイメージを持たれる方が多い中、サイエンス・クリエイトが特に注力しているのが「衛星データ利活用」です。その理由を勝間氏は次のように語ります。

(以下、勝間氏)

宇宙産業はこれまで国や大企業が主導だったが、近年はベンチャー企業の参入も多く、様々な人にチャンスがあります。しかし、地域産業の振興を目的としたときに、地に足の着いたことを行う必要がある中で一番フィットすると考えたのが「衛星データ利活用」です。例えば衛星データを活用する際には、実際の土地の調査やそこでの課題と紐づけることが重要ですが、国や都道府県よりも市町村単位で管理している土地のほうが多く、地域との繋がりが強い弊社ではその土地の利用者の声も聞くことが出来ます。

 

例えば、農地運営において雨量や風量・土壌水分量などの膨大な記録作成が重要となるが、そのために新しい設備を導入すると膨大なコストがかかります。そこでサイエンス・クリエイトでは衛星データとIoT機材・気象データなどを掛け合わせたデータを用いることで、低コストでのスマート農業の環境整備を実現しようとしています。

 

関連記事:宇宙利用で救う日本の農業 <農業×衛星リモートセンシング 第1回>

https://spacemedia.jp/2021/10/28/00159/

 

しかし、衛星データを使うことが出来ると伝えても、地域の方がイメージ出来ないことが多くあります。そこで勝間氏はレンチキュラー印刷*1を用いた名刺で、見る角度を変えると同じ場所の異なる種類の衛星画像が切り替わる様子を見せることで直感的にイメージしやすいようにしています。このような細かな気遣いが、地域の方の心を掴んでいることがインタビューを通して伝わりました。

 

勝間氏の名刺で利用している衛星画像

 

 

(3)宇宙ビジネス相談窓口「宙サポ」

サイエンス・クリエイトが2020年4月に開設したのが宇宙ビジネス相談窓口「宙サポ」です。宇宙ビジネスに関する相談であれば東三河地域に限らず広く受け付けています。無料で受け付けていることもあり、宇宙に関連する大手企業に依頼・相談するのが難しい方から多くの方からご相談を受けています。宇宙に興味があるが何かできないかというものから、具体的な投資先や企業の相談など多種多様な問い合わせがあるそうです。

 

宇宙ビジネス相談デスク「宙サポ」[https://www.tsc.co.jp/topics/more.php?id=5]

 

宙サポへの問い合わせをきっかけに実際に支援させていただいた事業の一つが、「衛星データを用いた農業IoTと既存観測所のデータ補完実証事業」です。この事業では太平洋岸の農業に対して、衛星データとIoT機材、気象データを利用し相互に補間することで、スマート農業の環境整備を目指しました。雨量や風量・土壌水分量といった農地運営において重要となる膨大な記録の作成には従来農家ごとに大規模な投資が必要でしたが、衛星データをはじめとした各種データを用いた独自技術でプラットファーム化することで各農家が低コストで利用できるようになりました。

 

 

このほかにもサイエンス・クリエイトでは、豊橋市衛星データ利活用可能性調査事業の一環で「衛星データによるマップインフラの開発」、「風倒木自動計測システムにおける位置基準局の実証実験」等、衛星データを用いることで地上に存在する様々な課題の解決を支援した実績があります。宙サポではこのような事業の知見を活かして、様々な面から地域の課題解決のご支援をすることが出来ます。

(以下、勝間氏)

「宇宙ビジネスの価値はどこにあるか、その一つの答えが宇宙での技術を地上で活かすことだと思います。例えば宇宙において水を使用せずに洗濯が出来る技術が生まれれば、それは必ず地球上でも価値になります。そして「宙サポ」にお問い合わせいただくことで、宇宙技術によって既存の課題を解決するだけではなく、新たな価値創造を支援することが出来ると考えています。」

 

(4)サイエンス・クリエイトが目指すもの

宇宙技術を利用した地域の活性化に取り組むサイエンス・クリエイトでは、この記事の中で紹介した以外にもNASA宇宙ハッカソンを始めとしたイベント開催や超小型人工衛星の開発企画支援、宇宙ビジネスに特化オフィス「Satelli-con Valley」の開設・運営支援など多くの取り組みを行っています。最後にサイエンス・クリエイトが目指すものについて勝間氏に伺いました。

(以下、勝間氏)
全国には1,718の市町村があります(2021年11月現在)。ひとつひとつの市町村に様々な課題があり、衛星データを活用することで課題の解決だけではなくその地域活性化も実現したいと思っています。そして、豊橋市を発信地とした様々な取り組みの積み重ねが、いずれは宇宙産業全般の促進にも繋がればと思います。

 

 

 

*1:レンチキュラー印刷

表面をかまぼこ状にして平行に配置した透明樹脂製フィルム(レンチキュラーレンズ)を通して見る事により、アングルによって別の絵柄を見せる印刷物の総称です。レンチキュラーレンズへの印刷手法

*2:HACCP

食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析し 、それを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法