アジア初の宇宙港(スペースポート)を北海道大樹町に誘致し、北海道に宇宙版シリコンバレーを作ることを目指すSPACE COTAN株式会社(以下、SPACE COTAN)―同社COOの大出大輔氏に伺ったSPACE COTANの現在・過去・未来について3回に分けて連載します。
今回はSPACE COTANと大出氏の”現在”にフォーカスしたお話を伺いました。
また、SPACEMediaの公式YouTubeチャンネル「New Space Times」では、大出氏のインタビュー動画も公開していますので、併せてご覧ください。
■目次
(1)みんなでつくり、みんなで使う、宇宙港
(2)宇宙港を核として、地域の既存産業の発展に
(3)はじまりは一本の電話から
(1)みんなでつくり、みんなで使う、宇宙港
――SPACE COTAN株式会社は、どのような事業を展開されているのでしょうか?
大出:北海道スペースポート(HOSPO)に関する企画から営業、運営など、あらゆることを行います。
例えば射場建設のための建築的な計画を始めとして、それを実現するための資金調達やPRを目的としたふるさと納税の企画から営業にも携わっています。
また、建設するだけでなく実際に利用いただく必要がありますので、世界中のロケット会社と交渉も進めています。
さらには、北海道スペースポートや宇宙を利用した観光や教育事業にも取り組んでいます。
――北海道スペースポートはどのような事業でしょうか?
大出:大樹町という自治体がふるさと納税を集め、公共事業としてHOSPOを整備し、それを弊社が世界に売り出して、世界中のプレイヤーが利用する宇宙港にする事業です。
まさに、みんなでつくり、みんなが使う、宇宙港です。
――スペースポートの建設地として大樹町が選ばれたのはなぜでしょうか?
大出:1つ目として、東と南に太平洋が開かれていることです。
これにより様々な人工衛星の行き先に対応することが出来ます。世界中のほとんどの宇宙港では、北か東か南のどれか1つの限られた方向にしかロケットを発射することが出来ません。
2つ目に、「十勝晴れ」と言われるように、日本屈指の晴天率を誇り、ロケット打ち上げ可能な天候になりやすいことです。日高山脈の西側で雨も雪も降りやすいため、この地域の晴天率はとても凄いです。
3つ目に、空港や港からもある程度近いことです。
ロケットや人工衛星の輸送にも優位ですし、町が近くにあり、作業員や観光客の滞在環境も良い。東京からも2.5時間で来ることが出来ます。
Credit:SPACE COTAN
(2)宇宙港を核として、地域の既存産業の発展に
――そもそも、宇宙と地方創生に繋がりがあると感じたきっかけは何でしょうか?
大出:我々は、SPACE COTANの規模が大きくなることで地方創生に貢献することに加え、世界中から宇宙産業をこの町に誘致することも地方創生に繋がると考えています。
世界中のロケット会社がこの地でロケットを打つことになれば、ロケット打ち上げの度に世界中から100人以上のロケット打ち上げ作業員や、人工衛星作業員、その家族などが1カ月以上滞在するはずです。打ち上げ頻度が高くなれば、大樹町にロケット工場や人工衛星工場をつくって、定常的に人が住むことになると思います。
また、様々な企業と組むことで、大樹町に多くの取り組みを生み出すことが出来ます。例えば宇宙のまちづくりに関して、大樹町やSPACE COTANは、この半年で、サツドラホールディングス、北海道コンサドーレ札幌、レバンガ北海道、北海道十勝スカイアース、北海道オール・オリンピアンズ、CAMPFIREと連携協定を結び、様々なプロジェクトをはじめました。
名前を聞いただけでワクワクしませんか?いったい、どんな町なんだ??って(笑)
――宇宙版シリコンバレーはどのようなものでしょうか?
大出:これは実は我々ではなく、北海道経済連合会が言い出した言葉です。
空港が出来るとその周辺に航空産業やホテルが集積していくのと同じように、宇宙港が出来ればロケット会社や人工衛星会社、それに関する製造業や実験場、試験設備、観光業も集まってくる。
産業が集積し、地域がどんどん発展していき、人も金も集まる。そんな、宇宙港を核として、宇宙産業の集積と地域の既存産業の発展が起こる町を、宇宙版シリコンバレーと表現しています。
Credit: SPACE COTAN
(3)はじまりは一本の電話から
――最後に大出さん自身がSPACE COTANに参画した理由は何でしょうか
大出:建設会社勤務の頃に一緒に仕事をしていたことのあるインターステラテクノロジズ(IST)社から、2020年の秋ごろ突然電話があり「スペースポートを企画運営する会社が必要になったから、共同創業してくれないか」とー
建築のバックグラウンドを持ちつつ、ロケット打ち上げに関わっていた私が、マッチしたのだと思います。
私としては、結婚して、東京に35年ローンの家を買って、妻も妊娠中だったので、このタイミングか・・・と、非常に悩みました。
しかし、この取り組みの意義も分かっていたため、やってやろう!となりました。
SPACE COTAN株式会社 COO 大出大輔氏
Credit: SPACE COTAN