「ビッグデータ」や「データサイエンス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。ITの進歩に伴い、膨大なデータを取り扱うことが可能になりましたが、データはその存在だけでは価値をなさず、大量のデータを読み解き、いかにビジネスに活用するかが重要です。
このデータ活用という領域で、食品ロスや気候変動などの社会課題解決をテーマにサービスを開発するスタートアップが株式会社DATAFLUCTです。スマートシティを実現するサービスの提供や、青果物のサプライチェーンの再構築の支援等にも携わっています。
今回は同社の代表取締役 久米村隼人氏に具体的なサービスや、開発の背景についてお話を伺いました。
■目次
(1)株式会社DATAFLUCTとは
(2)地球温暖化対策「TOWNEAR Climate」
(3)青果物のサプライチェーンを未来予測で最適化「DATAFLUCT food supply chain.」
(4)DATAFLUCTの目指す世界とは
目次
(1)株式会社DATAFLUCTとは
現代社会には、衛星データや天気データ、不動産情報、顧客情報など、様々なデータが溢れています。これらのデータは非常に有益ではありますが、多くの企業が人材やノウハウにアクセスできないためデータ利活用障壁があり、実際に利用するにはハードルが高いという課題がありました。埋もれているデータから価値を生み出し、データ活用におけるクライアントの課題解決や、新たなビジネスの創出を支えているのが株式会社DATAFLUCT(以下、DATAFLUCT)です。
DATAFLUCTは自らを「データサイエンス事業開発集団」と呼び、2021年11月時点で20プロダクト(SaaS)をローンチしました。データ活用に関する様々な種類の技術を保有したメンバーで構成され、データ収集から分析、活用までを一気通貫で支援できる体制がDATAFLUCTの強みです。
(2)地球温暖化対策へのアクションを促進する「TOWNEAR Climate」
DATAFLUCTが展開しているサービスの一つが、「TOWNEAR」というスマートシティやスーパーシティなどの、データに基づくまちづくりを実現するプラットフォームです。
TOWNEARシリーズのうち、「TOWNEAR Climate」は「地球温暖化対策へのアクションを促進し、持続可能なまちづくりを目指す」ことをテーマに開発が行われているデータ分析サービス群です。このサービス群の中の一つに、衛星データを活用したCO2モニタリング「TOWNEAR GHG monitoring」というサービスがあります。
従来のモニタリングとは異なり、衛星データとGDPなどの地上のデータを掛け合わせることが可能になったことが特徴となっています。これにより、CO2やメタンなどの温室効果ガスの濃度の時系列分析や、エリアごとの温室効果ガス濃度と経済成長の関係を明らかにすることが可能となりました。
世界中の科学者は、大気中の温室効果ガス濃度と地球温暖化には因果関係があるのではないかと長年調査しています。日本でも「いぶき」という人工衛星が大気中の温室効果ガスの濃度を測定しており、分析したデータが一般公開されています。しかし、これらのデータは一般の方にとって利用しにくいという課題がありました。
(以下、久米村氏)
「地球温暖化が社会課題となっている中で、人為的な行為と気温の上昇に関係があるのではないかということを、2軸で分析して明らかにする必要があると考えました。DATAFLUCTのサービスでは、一般に公開されている気温変動の衛星のデータを、高度なデータ活用の知識のない方でも分かりやすいようにダッシュボードにして展開しています。温室効果ガスのデータと経済活動のデータを紐づけ、気候変動に向かって人類がアクション出来ているかというのを可視化するためにこのサービスを開発しています。」
GDPとCO2濃度をモニタリング
人口とCO2濃度をモニタリング
土地被覆度とCO2濃度をモニタリング
TOWNEAR GHG monitoring
(3)データに基づく未来予測で青果物の流通を最適化「DATAFLUCT food supply chain.」
また、気象データや衛星データ、市場取引価格データなどを活用した未来予測によって青果分野の生産から出荷、流通、加工・販売、消費までを最適化する「DATAFLUCT food supply chain.」というサービスも提供しています。
農地の衛星画像や気象データ、価格データをAIで解析し、これまで生産領域が商流・物流が多岐に渡っており分断されていたデータを統合することで、青果物の適切な生産量や調達コストを実現し、フードロスの削減と、利益の最大化に貢献しています。
(以下、久米村氏)
「データを活用したサービスをつくりたいと思ったときに、食品ロスという大きな社会課題を解決しようと考えました。食品流通においては、生産、出荷、流通、加工・販売、消費など物流が多岐に渡るため、サプライチェーンの各過程における需要予測が難しく、その過程で食品ロスが発生しているという現状があります。
DATAFLUCT food supply chain.は、気象データ、衛星データから、商品の在庫や市場取引価格データなど多数のデータを組み合わせて、生産計画・配送を最適化し、価格変動の予測も可能です。青果物のサプラチェーンの各フェーズを最適化することで食品ロス削減を可能にします。需要を予測し情報を各プレイヤーに事前に知らせ、しっかり出荷させる仕組みを作ることに社会的意義があると思いました。」
(4) DATAFLUCTの目指す世界とは
データに詳しくない人でも使えるUIを設計、企業にとっての衛星データ利用のハードルを下げ、実際に企業に使っていただけるデータ分析サービスを提供しているDATAFLUCT―データ活用サービスでどのような世界の実現を目指しているのか、今後の展望について久米村氏に伺いました。
(以下、久米村氏)
「当社は、技術やコストの面でハードルがあるデータ活用を、どんな企業、どんな人でも使えるようにする”データ活用の民主化”を目指しています。衛星データには無料と有料のものがあります。無料データは国から提供されていますが、そのままでは使いにくいというのが課題でした。
いくつかの会社が運営している衛星データで有用なものもありますが、価格が高く、値段の割には観測頻度が少ないため、結局企業は購入することができません。この状況を打破するため、弊社は一括で衛星データを購入し、ユーザーには実際に使う必要な部分だけを課金していただくという形をとることで、実際に使っていただけるように価格をできる限り抑えています。
また今後、人工衛星やコンステレーションの数が増えると予想される中で、世の中にはますます大量のビッグデータが存在していきます。これらのビッグデータを高速で処理する方法や、必要なものだけを選ぶ技術を実現するエンジンを開発しています。このような多様なデータを組み合わせて分析できるプラットフォームを提供することで、より多くの企業に衛星データを利用してもらえるチャンスが増えるのではないかと思っています。」
株式会社DATAFLUCT 代表取締役 久米村隼人氏
Credit: DATAFLUCT
久米村氏のお話を伺い、データ活用で社会課題の解決をしたいという熱い気持ちが伝わってきました。今後、DATAFLUCTの技術によりデータ活用が促進され、どのような世界に変化していくのか注目です。
SPACEMedia編集部