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次世代の”畑”を宇宙に – 地球の農業を救う持続可能な畑とは – 株式会社TOWING

NASAが進める月面社会構想「アルテミス計画」や宇宙や火星に滞在するさまざまな事業が全世界で動いています。我々人類が、地球外に住むときに重要なカギとなるのが「食」です。

そんな宇宙での食の開発をしているのが株式会社TOWINGです。2021年12月、同社は1億4,000万円調達し、2022年に自社農園を立ち上げることを発表しました。今回は同社の代表 西田宏平氏に宇宙×農業の開発に込める想いを伺いました。

 

■目次

(1)株式会社TOWING

(2)高機能ソイルとは

(3)農業×宇宙事業に参入したきっかけとは

(4)目指す未来の農業の形

 

(1)株式会社TOWING

株式会社TOWING(以下、TOWING)は、「高効率かつ持続可能な畑をベランダから宇宙基地まで」をミッションに掲げ、循環型栽培システム『宙農(そらのう)』サービスや循環型栽培コンサルティングサービスを行っている会社です。2021年9月より、地球と宇宙の食の課題解決を目指すJAXA主催共創プログラム「SPACE FOODSPHERE」に参画し、月面基地上で利用する土・畑の開発を行っています。

 

ZOZOの前澤氏が国際宇宙ステーションに滞在したのは記憶に新しいかもしれませんが、国際宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士の「食」は地球からの定期的な食糧補給によって賄われています。この食糧補給には多大な運搬費用が必要になり、将来人が月に住むとなるとその費用はさらに大きくなります。

 

この課題を解決すべくTOWINGが目指すのが地産地消ならぬ月産月消です。つまり、月で食べ物となる野菜などを栽培し、宇宙飛行士の食糧源とする未来を創ろうとしているのです。

 

月での野菜栽培イメージ Credit:株式会社TOWING

 

(2)高機能ソイルとは

TOWINGが実用化を進めているのが次世代人工土壌技術の「高機能ソイル」です。

 

高機能ソイルとは、農研機構で開発された良質な土壌の微生物環境を構築するバイオテクノロジーです。

通常、有機肥料の分解効率は約1%/日未満であるのに対し、微生物の種類と量を調整することで約30%/日以上の高効率安定分解が可能になっています。

 

この技術の強みは大きく3点挙げられます。

 

①微生物環境を上手く構築することが可能なため、有機肥料を高効率に分解

地上では循環型のシステムが求められますが、宇宙でも同様、人のフンや尿をリサイクルしていく必要があります。

資源のリサイクルに微生物を使用することでより高効率、かつ工程を縮め、コストを抑えることを可能にしています。

 

②作物にとって良い生育条件を土からデザインすることが可能

土・水・酸素の3要素がよい条件で揃うことが作物の生育には欠かせません。

作物にとって最適な環境を土から構築することで、作物の成長にいい影響を与えます。

 

③微生物の制御による耐病性の向上

検証により、土壌由来の病気の発病率をかなり下げることができるという結果が出ています。

そもそも宇宙空間に病原体を持ち込まないことが大前提ですが、作物の発病率を低くすることも、今後月面社会を構築していくうえで重要なものとなります。

 

地上では植物の炭を素材としていますが、月面上では月の砂であるレゴリスを活用できるように、現在レゴリスを模擬した素材を使い栽培検証しています。将来的には、月や火星に行ったときに現地の素材で作物を栽培できるように準備を進めています。

 

また資源が限られているため、宇宙での生活は持続可能なシステムの構築が求められます。「循環」についてどのような取り組みを行っているか、西田氏に伺いました。

(以下、西田氏)

「地球でもそうですが、人のアミノ酸や有機物を分解する一番の心臓部を担っているのが微生物です。

この微生物の働きを上手く活用するアプローチが重要であるため、弊社では土で有機物をできるだけ分解するような栽培方式を宇宙でも使えるよう、研究・開発をしています。」

 

高機能ソイルで生育中の作物

 

 

(3)農業×宇宙事業に参入したきっかけとは

西田氏は、もともと中学生の頃に読んだ「宇宙兄弟」をきっかけに宇宙に興味を持つようになったそうです。

(以下、西田氏)

「宇宙に興味を持ち、天文学者になるために大学では地球惑星科学を学びました。

 

また、高校生までは住んでいる近くに畑があったため、祖母や祖父が育てたお米や野菜を食べて生活していました。

大学に入り一人暮らしを始め、スーパーで買う野菜の味がまったく違ったのでそこから農業にも興味を持つようになりました。

そんな時、農業で儲けるのは難しいという現実を目の当たりにし、何かしらの形で貢献ができないかと考えるようになりました。

 

大学で勉強していく中で、月で農業ができる技術を知り、農業と宇宙の両業界に関われる事業で宇宙業界に参入しようと決意しました。」

 

また、宇宙産業で事業を進めていく難しさについて西田氏は次のように語ります。

(以下、西田氏)

「弊社は現在、SPACE FOODSPHEREというコンソーシアムに参画しているため、組織の中で上手く役割分担を行いそれぞれが開発を行っています。

例えば現在はTOWINGが土の開発を進め、月面基地の開発は他の企業さんが進めています。このようなプロジェクトに参画できない場合、宇宙事業=お金がかかる開発案件となってしまい、宇宙業界に参入する障壁になると思います。」

 

せっかく技術を持っていても開発を進めることができないという点が、宇宙業界ならではの難しさであるというのが西田氏のお話から伝わってきました。

 

高機能ソイルを用いた屋外での実験

 

 

(4)目指す未来の農業の形

世界中で人口が増えていくにつれ、食料生産をするのに欠かせない資源が足りていないという現状があります。これは、鉱石から採取したリンなどを含む化学肥料を食物栽培に使用しており、持続するのが難しい農業形態をとっているというのが大きな理由です。

 

この問題に対し、TOWINGの持続可能かつ生産安定なユニットを使うことで持続可能な形に変えることができると語ります。最後に今後のTOWINGが目指す展望について、西田氏にお話を伺いました。

 

(以下、西田氏)

「宇宙で開発している技術を上手く地上にリンクさせ、地球の食糧問題の解決を目指していきたいです。

 

今後の事業としては、実際に月面基地で高機能ソイルが利用される場合、農園長というポジションで宇宙に行って畑を管理するような人材ビジネス型の事業もできるのではないかと考えています。

 

また現在、土壌を分析する技術はありますが、土壌にとってよい資材を選択する技術がないため、農家さんもどの資材を使ったらいいのか選択が難しいという課題があります。

この課題を解決するために土壌の研究をしていたバックグラウンドを生かし、弊社でよい資材を選定できるようなサービスの立ち上げも考えています。」

TOWING HP: https://towing.co.jp/

株式会社TOWINGのメンバー(中央が西田氏)
Credit:
株式会社TOWING


Emily Ito