東京ビックサイトで開催した2023国際宇宙産業展ISIEX。三菱グループ企業と共同出展した三菱ケミカルが、宇宙分野に欠かせない先端材料を複数展示しました。高強度炭素繊維複合材料が採用された月面探査機YAOKI(ダイモン社提供)をはじめとした展示レポートをお届けします。
シアネートエステルプリプレグ+ダイモン社YAOKI
―三菱ケミカルのシアネートエステルプリプレグの特徴は?
もともとシアネートエステルの持つ低吸湿・低誘電率という特徴がありますが、加えて三菱ケミカルのシアネートエステルには、以下のような強みがあるようです。
・250℃以上の高い耐熱性と耐衝撃性を両立
・低温で一次硬化が可能なため、一般的なプリプレグ用成型型が使用可能
・二次硬化により高い耐熱性を得ることが可能
・従来のシアネートエステルプリプレグに比べ、貯蔵安定性に優れる
・三菱ケミカルの任意の炭素繊維PAN系、ピッチ系との組み合わせが可能
―YAOKIで採用された理由、その他の想定用途は?
月面の厳しい温度環境に耐えられること、さらにCFRP化により30%の軽量化が実現でき、月への輸送コスト低減につながることが採用理由になります。
その他想定用途については、人工衛星の分野では低吸湿=低寸法変化という特徴を活かし、高い寸法精度の実現が期待できるほか、産業機械部品の分野では、従来のCFRP では対応できなかった高温域へ対応が期待できるとのことです。
サステナブル材料の人工衛星への搭載
三菱ケミカルはサステナブル材料を早稲田大学 創造理工学研究科総合機械工学専攻 宮下研究室に提供し、イプシロンロケット 6 号機に搭載された 6 基の人工衛星のうちの 1 基「WASEDA SAT ZERO」の部品へと採用されています。三菱ケミカルが提供している素材は下記の通り
―PET ボトルキャップ再生樹脂の 3 D プリンタによる造形品
回収されたPET ボトルキャップの再生樹脂を使い、三菱ケミカルの滋賀研究所の 3 D プリンタにて造形した部材。
―植物由来の樹脂コンパウンド「FORZEAS ™」を用いた部品
「FORZEAS™(フォゼアス™)」は三菱ケミカルが開発した植物由来の生分解性樹脂「BioPBS ™」を使用し、他の生分解性樹脂や添加剤と組み合わせることで、性能をそれぞれの用途に適するよう調整した樹脂コンパウンド。
以上、部品の軽量化やサステナブル材料の活用によって宇宙ビジネスに貢献する三菱ケミカルのレポートでした。
SPACE Media編集部