アメリカ航空宇宙局(以下、NASA) の探査機「Double Asteroid Redirection Test(以下、DART)」 は、アメリカ航空宇宙局(以下、NASA)の探査機「は、2022年9月27日(日本時間)に小惑星に衝突し、人為的に天体の軌道を変更する手法の実証実験を行う予定です。
この記事では、小惑星の衝突から地球を防衛する新しいミッションについてご紹介します。
DARTはNASAの惑星防衛戦略のひとつで、ジョンズ・ホプキンス応用物理学研究所(APL)によって開発されました。2021年11月24日(日本時間)、DART探査機はスペースX社のファルコン9ロケットによってカルフォルニアにあるヴァンデンヴァーグ宇宙軍基地第4番発射台から打上げられ、再利用可能なファルコン9の第一段ロケットの回収にも成功しています。
衝突実験の様子は、NASAの公式YouTubeにて配信される予定です。
▼配信はこちら▼
9月27日(火)午前8時頃
こちらのリンク先から配信される予定です。
NASA LIVE
DARTミッションの意義 ―巨大隕石から地球を守る―
太陽系の中には、私たちのよく知る惑星の他にも大小様々な天体が数え切れないほど存在しています。そして、それらはしばしば地球と接触する軌道を描きます。数ミリから数センチ程度の大きさの塵や小石などは日常的に地球の大気に降り注いでおり、「流れ星」や「火球」として観測されることも珍しくありません。
まれに大気の中で燃え尽きず、地上まで落ちてくるものもあります。これが「隕石」です。2013年、ロシアのチリャンビンスク州に落下した隕石を覚えていますでしょうか。甚大な被害をもたらしたこの隕石は、元々数メートルから15メートル程度の大きさだったと考えられています。
では、直径100メートル以上の小惑星が地球に衝突したらどうなるでしょう?
少し考えただけでも恐ろしいですね。15メートル程度の隕石でも地域一帯に大きな被害が出たことを考慮すると、100メートル以上のものとなれば地球規模で致命的な被害が出るであろうことは想像に難しくありません。
幸い、今後100年のうちに地球に衝突する可能性のある140メートル以上の大きさの天体は発見されていません。しかし、決して楽観視もできません。NASAによると、地球近辺を通過する軌道を持つ8,500個以上の小惑星が常に監視対象となっているようです。起こりうる最悪のシナリオを防ぐため、NASAなどの各国宇宙機関は対策に乗り出しています。
そのうちのひとつが、今回のDARTミッションなのです。
DART探査機を小惑星に衝突させ、軌道の変化を観測する
DARTミッションの目的は、探査機を小惑星に意図的に衝突させ、軌道を変化することができるかどうか実験することです。
地球への衝突リスクが高い天体が発見されたとしても、高速で物体をぶつけて軌道を変えることで衝突を回避できると考えられており、今回DARTが初の実証実験を行います。
今回DARTのターゲットとなるのは、小惑星「ディディモス(直径780メートル)」を周回する衛星「ディモーフォス(直径160メートル)」です。なお、これらの天体は地球に衝突する危険はないと考えられています。
DARTは、爆弾などの特殊な装備は一切使用しません。非常に低燃費なイオンエンジンで加速し、身一つで「ディモーフォス」に衝突します。その結果、「ディモーフォス」の軌道がこの実験で危険な天体の軌道を逸らすのに十分な効果を得られることが実証できれば、低コストで地球を防衛する手段の確立に一歩近づきます。
DARTプロジェクトの調査チームは、7月に強力な地上望遠鏡(ローウェル天文台のローウェル・ディスカバリー望遠鏡、ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡、南部天体物理研究(SOAR)望遠鏡)を用いてターゲットとなる天体の事前観測を行い、衝突時の天体の位置や軌道の正確な予測が完了したと発表しました。
9月27日に予定されている衝突実験の後、NASAは10月頃に世界中の地上望遠鏡を使って再度ディディモス・ディモーフォスを観測し、DARTによって小惑星の軌道がどれほど変化したかを調査する予定です。
参考:
Planetary Defense Coordination Office (PDCO) (nasa.gov)