アルテミス計画の月着陸船「スターシップ」〜どのように月面に降り立つか?〜

宇宙飛行士が月へ降り立つための宇宙船「月着陸船」は、アメリカが主導するアルテミス計画にとって重要なシステムの一つです。1969年、アポロ11号が初めて月面着陸をしたときに、4つの足を持った月着陸船が月の表面へ降り立ち、2人の飛行士が月面を歩き回る姿を見たことがある人も多いでしょう。2025年に計画されているアルテミス計画では、どのような月着陸船が開発されているのでしょうか。

 

月着陸船は「Human Landing SystemHLS: 有人月着陸システム)」と呼ばれます。月周回軌道上に滞在している飛行士を月面へ送り、滞在終了後、元の場所まで送り届ける役目をします。NASAによると、初期のミッションでは、飛行士が着陸船内部の与圧された部分で1週間ほど生活できる必要があるということです。これらの開発は、アメリカの民間企業がNASAから委託を受けて実施します。

 

202251日現在、スペースXが月着陸船の開発を行っています。2025年に実施予定の有人月着陸計画「アルテミスIII」では、スペースXの「Starship(スターシップ)」が月着陸船として使用される予定です。なお、細かな仕様は、現在開発中のため明らかになっていません。

アメリカの民間企業スペースXが開発を進める有人月着陸船「スターシップ」の想像図

Credit: NASA/SpaceX

 

ここでは、アルテミスIII計画でスターシップがどのように月着陸船として用いられるか見てみましょう。

 

スターシップは、第一段目に「Super Heavy(スーパーヘビー)」と呼ばれるブースターを装着して打ち上げられます。スーパーヘビーは、スターシップ宇宙船を地球低軌道に送るために使用され、役目を終えると地球へ帰還して再利用されます。打ち上げられたスターシップ宇宙船は、地球軌道上で別のスターシップ機体により燃料補給を受けます。そして、飛行士をのせたオライオン宇宙船が打ち上げられ、月軌道上でスターシップとドッキングします。飛行士はスターシップに乗り換えて、月面へ着陸。滞在後は、月周回軌道上へ戻ります。

アルテミスIIIミッションにおける有人月面着陸の方法
Source: Kent Chojnacki, Manager, Systems Engineering & Integration (SE&I) Office (NASA employee)

 

アルテミスIII以降の月面探査では、月着陸船が月周回有人拠点「ゲートウェイ」にドッキングする案も出てきています。飛行士はゲートウェイで月着陸船に乗り換えて、月面へ降り立ちます。

 

では、飛行士は、月面に降り立ったスターシップ宇宙船からどのように降りるのでしょうか?NASAとスペースXが公開した想像図から、エレベーター、もしくはカゴのような機器を使い、キャビンから月面に降りることが想定されていると分かります。アポロ計画では、はしごを使って月面へ降りる様子が地球へ生中継され、多くの人がテレビで見守りました。いっぽう、アルテミス計画の月着陸中継は、エレベーターで降りてくる飛行士をスマートフォンやパソコンなどで見ることになるかもしれません。

 

人類が再び月面着陸をする「アルテミスIII」は、2025年に計画されており、あと3年です。実際にどのような着陸をするのか、その開発過程に注目です。

 

参考資料

NASA, As Artemis Moves Forward, NASA Picks SpaceX to Land Next Americans on Moon

(2021.4.17)

NASA/Kent Chojnacki, HUMAN LANDING SYSTEM

NASA/Marshall Space Flight Center, More About the Human Landing System Program

Space News, NASA selects SpaceX to develop crewed lunar lander

 

SPACEMedia編集部