世界のロケット最前線!〜アジア編〜

2021年10月21日、韓国は初の国産ロケット「ヌリ号」の打上げを実施しました。
また近年、中国の宇宙開発が勢いを増しており、2020年のロケット打上げ数は世界一でした。このようにアジア地域でも宇宙開発が盛んとなっています。

この記事では、アジア諸国のロケット開発を説明します。今回は、日本、インド、中国、韓国の4カ国です。

 

世界のロケット最前線!〜欧米編〜:https://spacemedia.jp/2021/11/04/00160/

 

<日本> キーワード=安定した技術と成功率

日本は液体燃料のH-IIAロケットと固体燃料のイプシロンロケットを運用しています。
H-IIAロケットは、全長53mあり、重量が289t。初飛行は2001年で打上げ開始から20周年を迎えましたが、打ち上げの成功率は98.1%(44回中43回成功、2021年10月時点)という安定感があります。すべて日本の技術で開発、製造されたロケットです。

記憶に新しいところだと、2014年の小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げにもこのH-IIAロケットが使用され、2021年12月には海外の通信衛星を打上げる予定になっています。さらに後継機であるH3ロケットを開発しており、2021年度中の打上げを目指しています。

また、固体燃料ロケットのイプシロンロケットは2013年の打ち上げ開始から2021年11月9日の5号機まですべての打ち上げを成功しています。旧来日本で利用されていたM-Vロケットの製作期間が3年程度だったのに対し、イプシロンロケットは1年以内という短期間での製作を実現したのが特徴です。

近年では、H3ロケットと構成要素を共通化することで低コストでの実現を目指したイプシロンSロケットの開発も進められています。


開発中のH3ロケット(Credit: JAXA


<インド>キーワード=月・火星探査に成功

かつてはソビエト連邦のロケットを利用していたインドですが、近年は他国と同様に、宇宙開発に力を入れており、自国でのロケット打ち上げも可能になりました。

具体的には、2008年に月探査機「チャンドラヤーン1号」の打上げに成功。さらに2013年には火星探査機「マンガルヤーン」の打上げと火星周回軌道への投入にも成功しています。

 

これらの強力な宇宙開発を支えているのが、PSLVロケットとGSLVロケットです。PSLVロケットは主に地球低軌道をまわる衛星を打上げ、インドの地球観測などに貢献しています。

一方、GSLVロケットは、地上3万6000kmに位置し通信衛星などが利用する静止軌道へ衛星を送る能力を持ちます。さらに、大型化したGSLV MkIIIロケットも運用されており、2022年にGSLV MkIIIロケットでインド初の有人宇宙船「ガガニャーン」が打上げられる予定です。

インドの歴代・運用中のロケット
PSLV-XL、GSLV Mk II、GSLV Mk IIIが運用中
(Credit: ISRO Home Page


<中国> キーワード=バリエーション豊富

中国は、「長征」と呼ばれるロケットシリーズを長年打ち上げています。

初打ち上げは1970年の長征1号ロケットで、中国初の人工衛星「東方紅1号」を宇宙空間に届けました。長征シリーズには、非常に多くのバリエーションがあり、小型から大型まで様々な人工衛星や探査機などを運ぶことが可能です。また近年は、従来使用されてきた長征2、3、4号ロケットから新型の長征5、6、7、8号ロケットへと切り替えを進めています。

 

さらに中国は宇宙ステーション「天宮」の建設を行っており、2022年の完成を目指しています。現在は3人の中国出身の宇宙飛行士が滞在し、建設作業を行っていますが、今後は他国からの宇宙飛行士や宇宙実験の受け入れも予定しています。

中国の歴代ロケット
CZとはChang Zhengを表し、日本語で「長征」という意味になる
(Credit: CALT


<韓国>キーワード=初の国産ロケット

冒頭でも触れましたが、2021年に韓国初となる国産ロケット「ヌリ号」の打上げを実施しました。

ヌリ号は全長47.2m、直径3.5m、重量200tの3段式ロケットです。1.5tの衛星を地球低軌道600〜800kmへ投入する能力があります。2021年10月21日の初打上げでは、ロケットの第1段分離、フェアリング分離、第2段分離まで実施されたものの、第3段エンジンの燃焼時間が予定よりも短く、軌道投入に失敗しました。ヌリ号の2回目の挑戦は2022年の5月を目指しているということです。

 

アジアの宇宙開発も、近年の宇宙ビジネスの盛り上がりや世界的な宇宙開発の進歩に伴って、活発になっています。国産ロケットを有していない国の衛星が、アジア諸国のロケットでさらに打ち上げることが可能になることで、様々な国が宇宙産業に参入する未来も遠くはありません。


 
                                                                                               

SPACEMedia編集部