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位置と情報を組み合わせて地域と社会の課題を解決し、暮らしのQOLを上げる―国際航業

1947年に創業、航空写真測量を中心に70年以上にわたって地理空間情報を提供し、
現在では地理空間データを活用したDX・GXの取り組みも進める国際航業。
地理空間情報から社会課題の解決を目指す、『イチBizアワード』協賛への思いを聞いた。

右/三浦 勝 氏(みうら・まさる)
国際航業株式会社 執行役員CSO 事業技術開発本部長
左/柴野将広 氏(しばの・まさひろ)
国際航業株式会社 公共コンサルタント事業部 事業推進部 副部長

暮らしや行政活動を支える地理空間情報、技術革新でデータが高度化

見知らぬ場所への外出や旅行で、スマートフォンの地図アプリなしで向かうことは考えられないと感じる方は多いだろう。測量による幅広い範囲の地形調査や、防災上の危険な場所を示すハザード情報、ランドマークや住所に紐づく位置の情報など、現代社会は地理空間情報で成り立っていると言っても過言ではない。
終戦直後に創業して航空写真測量事業を開始、同領域のパイオニアとして事業を拡大してきた国際航業は、社会の基盤となる地理空間情報を提供、活用する企業である。

現在では人工衛星やドローンが取得したデータによる測量なども手がけるほか、地理空間情報をもとにしたインフラの維持管理ソリューションや救急医療現場のミスマッチの解消、再生可能エネルギーの経済効果シミュレーションに加え、交通量の自動観測、人流解析、サスティナビリティ経営関連指標の可視化コンサルティングなど、多彩な事業を展開している。

同社は新技術の導入や社会課題への対応などにも力を入れており、建設現場の生産性向上に関して、最新のデジタル技術を用いて優れた実績をあげた事例を表彰する令和4(2022)年度の『インフラDX大賞』で、「GNSS・IoTセンサ・衛星SARの統合によるインフラ点検の省力化・効率化の取り組み」により国土交通大臣賞を受賞している。

デジタル技術が飛躍的に発展する今、地理空間情報に関する技術革新も進んでいる。国際航業 公共コンサルタント事業部の柴野将広氏は、航空写真測量にまつわる技術革新の流れをこう説明する。

「かつて、航空写真測量ではフィルムカメラを使用していましたが、今ではデジタルカメラを使用しており、非常に高精細の画像が撮れるようになっています。また、20〜30年前まで航空写真測量では立体視の原理を応用して地形の高低差を見ていましたが、現在では航空機からレーザーを照射してデータを取っており、数cmという精度のデータが取れるようになっています。さらに衛星画像の精度も向上しており、地理空間情報の中でも基盤となる地図を作るための技術は大きな進化を遂げてきました」

さらに最近では、国土交通省による3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト『PLATEAU』のように、3次元の精緻な仮想の地理空間情報にもアクセスしやすくなり、多種多様な地理空間情報が手に入る環境になっている。

さまざまな情報との組み合わせで新たな価値を生む

土地の形状や道路や建物の位置、高さなどといった基礎的な情報は、行政サービスを提供する際にも不可欠なものである。

前述のように、国際航業では道路施設の維持管理や地下埋設物のDXソリューションサービスなど、地理空間情報を活かした行政活動の効率化・高度化を図るサービスを長年にわたり提供してきた。特に『Genavisシリーズ』は、行政業務総合支援システムとして都市計画や道路、上下水道、固定資産といった行政内部の地理空間に関する情報と、社会に存在するデータを組み合わせることで、課題解決やこれまでになかった価値を生み出すことをサポートするサービスだ。

「実は、単に位置の情報があるだけでは何も生まれません。そこにどのような情報を乗せるかという組み合わせが重要で、さらにそのデータがデジタルで扱える形式である必要があります。当社は、業界の中でもいち早くGIS(地理情報システム)の提供にも取り組んできました。地図上に浸水リスクがあるエリアの情報を重ねる「ハザードマップ」などもGIS活用の一例です。市民の皆さんに知っておいてほしい情報はもちろん、市民や事業者が知りたい行政情報もある。こうした情報は次々と公開される傾向にあり、市民や事業者にわかりやすく便利な使い方、行政内部での高度な使い方、両方の側面で利用が伸びています。そしてその基盤には、私たちがこれまで培ってきた、地理空間情報を整備し活用できる技術が重要となってきます」(柴野氏)

一方で、行政関連のデータは自治体に権利があり、個人情報の関連などで公開が難しいものも多い。また、技術的な面でもデータの精度が異なれば地図上に重ね合わせて表示することが難しいものもある。

こうしたハードルはあるが、同社ではコンサルティングサービス等を通じて、情報の一元化などにも取り組んできたところだ。そしてこれまでのような、行政から市民や事業者へ、という一方通行ではなく、今後は相互に情報を共有し合うことを実現したいという(自治体DXのToBeモデル)。

自治体DXのToBeモデル。人口減少が進むわが国では、デジタル化による業務プロセスの
変革が急務だ。特にインフラや医療・介護、防災など幅広い業務を行う自治体DXでは、
地理空間情報が重要なものとなる
Credit: 国際航業

「少子高齢化の中で、行政職員も減っています。一方で社会課題は複雑化し、行政だけで地域の課題を解決することは厳しくなってきています。民間事業者や市民が地域課題を解決するための新しいサービスを立ち上げる必要も出てくるでしょう。これからの社会はデータ駆動型社会だと言われていますが、自治体や地域の視点で言えば、それは今いろいろな地域が取り組んでいるスマートシティの発想に通じるものです。これまで行政の内部だけにあった情報を、民間にある多様なデータと組み合わせて地域課題を解決できないか。公開が難しい情報も、条件をクリアしつつ他の情報とつなぐことができれば、最終的には街のデジタルツインなどを用いて、行政施策の決定やまちづくりに役立てることもできるようになり、社会課題の解決にもつながるはずです」(柴野氏)

さまざまな立場の人々との共創で地域や社会の課題を解決する

官民それぞれがもつ情報を組み合わせて地域の課題を解決し、人々の生活の質(QOL)を高める。これが、国際航業が地理空間情報を活かして社会に提供していくことで目指す価値だ。

地域の課題解決のための地理空間情報。基盤となる地図データの上に、
さまざまなデータを重ね合わせていくことで新たな価値が生まれ、
地域の課題解決や新たなビジネスの創出につながる
Credit: 国際航業

そのためには、自社だけではなく、さまざまなステークホルダーとともに取り組みたい。こうした思いが『イチBizアワード』協賛の背景にあると同社執行役員CSOで事業技術開発本部長を務める三浦勝氏は話す。

「DXやGX(グリーン・トランスフォーメーション)を個人や単独の組織だけで進めることは難しいでしょう。やはり共創という姿勢が大切で、日常生活のあらゆるシーンに絡む地理空間情報は、その基盤となるのではないかと考えています。イチBizアワードに応募されたアイデアやソリューションを生かすと同時に、この場に参加した方々がさらに共創の掛け算をして課題解決を進めていくような、ムーブメントにつながることを期待しています」(三浦氏)

【イチBizアワードとは】
『イチBizアワード』は、内閣官房による、地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテストです。
2022年に第1回が行われ、第2回は2023年8月31日までアイデアの募集が行われました。応募されたアイデアは、審査を経て2023年11月上旬に結果発表が行われる予定です。

https://www.g-idea.go.jp/2023/