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悪天候回避や新たな測位システムの確立を目指し、JAXAと民間企業が共創・連携

Credit: © ZIPAIR/エムティーアイ/JAXA

2024年2月28日と29日、JAXAと民間企業による連携、共創の取り組みが相次いで発表された。

気象データの3D描画と衛星データを活用し、航空機の被雷回避へ

28日に発表されたのは、株式会社ZIPAIR Tokyo(千葉県成田市、代表取締役社長 西田真吾)、株式会社エムティーアイ(東京都新宿区、代表取締役社長 前多俊宏)とJAXAによる、気象データの軽量化と雨雲情報の可視化に向け連携の開始。

3者はこのたび、エムティーアイが提供する航空気象サービス「3DARVI」にJAXAが開発した衛星全球降水マップ「GSMaP」を搭載し、新たな機能「IN FLIGHT(インフライト)モード」を開発。

これにより、パイロットは飛行中のコックピットから最新の悪天候情報を確認できるようになり、より安全な運航ルートを選択できるようになった。

航空機の運航においては航空機が帯電した雲に近づくことで雷が誘発されることが多く、日本国内では年間数百件の被雷被害が発生しているという。

そのため、被雷リスクを予測し回避する対策が喫緊の課題となっており、被雷リスク予測のためには、気象状況をリアルタイムに把握する必要がある。しかし、航空機のコックピット内では電波干渉の観点から通信が制限されており、最新の気象状況を確認できるサービスを利用することは難しい状況にあった。

こうした状況を解決すべく、3者は「3DARVI」の新機能として、コックピット内の通信環境下での利用を可能にした「IN FLIGHTモード」を連携して開発、2024年4月以降、体制が整い次第、ZIPAIRで運用を開始する。

また、JAXAではさまざまな領域における地球観測データの利用促進に取り組んでいる。今回の取り組みでは、「IN FLIGHTモード」に、航空機内としては初めてJAXAの「GSMaP」を搭載し、パイロットが気象情報をリアルタイムで認知することによる航空機の安全運航と飛行中作業の負担軽減に貢献する。

今後、ZIPAIRとエムティーアイでは被雷被害軽減の効果検証を行うことで安全性の高い正確な運航サポートを目指すとともに、「IN FLIGHTモード」の機能改善につなげていく構え。
一方のJAXAも、効果検証を通して得られるパイロットなどからのフィードバックを踏まえて「GSMaP」の改良や、新しい分野における地球観測データの利用促進を目指していくという。

屋外・屋内をスムーズにつなぐ位置情報システムの実装を目指す

Credit: © JAXA/MetCom

29日に発表されたのは、MetCom株式会社(東京都中央区、代表取締役 平澤弘樹)とJAXAによる、「地上波方式測位システム」に関する共創活動の開始。

これは、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みのもとで行われるもので、MetComが提供を計画している、都市部で地下・屋内・屋外問わずシームレスな位置情報の提供を可能にするMBS(Metropolitan Beacon System)三次元測位サービスに、センチメータ級測位補強信号を活用した高精度単独測位「MADOCA-PPP」による時刻同期情報を組み込むことで、地上波測位の精度に寄与する基地局間の時刻同期精度の2桁向上を目指すもの。

また、同社が建設する地上基地局の衛星信号受信アンテナに対して、JAXAが研究開発を進めるアレイアンテナ技術を組み込むことで耐干渉性を高め、安全性の向上も図る。

なお、MetComの「MBS」のアイデアは内閣官房が主催する地理空間情報のビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード 2023」で技術基盤部門賞に選出されている。

測位衛星などによる位置情報は日常生活に不可欠なものとなっているが、現状、位置情報は屋外で使用されるという前提があり、屋内外をシームレスにつなぐコスト・精度のバランスを満たしたサービスはまだ現れていない。

今回の共創では、MetComは、MBS三次元測位システムの時刻同期にMADOCA-PPPに基づく時刻情報を組み込み。時刻同期情報にGPSのみを利用した場合に比べ、MADOCA-PPPに基づく時刻情報を利用することで基地局間測位精度が距離換算にして数m級から、数cm級の誤差へ、2桁向上させることが期待できるという。

また、JAXAでは、MADOCA-PPPを用いた時刻同期技術の研究開発とアレイアンテナ技術の研究開発を行う。
アレイアンテナ化により指向性を高め、特に「みちびき」からの測位信号を優先的に受信する機能をもたせることで、ジャミングやなりすましに対する耐性を向上させて安全性、信頼性の改善を目指す。

なお、MetComではアレイアンテナ技術に対して、同社が建設する地上基地局の衛星信号受信アンテナとしての有効性を検討し、アレイアンテナ技術の開発にフィードバックする。

この共創では、最初の1〜2年でMetComとJAXAのそれぞれで研究開発を行ってMBS三次元測位システムへ組み込むためのフィードバックループを回し、その成果として、それぞれの技術を組み込んだ高精度で安全な地上波方式測位システムの実現を目指していくという。

公民の垣根を越えた連携・共創活動が、社会課題の解決や利便性の向上にどのようにつながるか、今後の展開が楽しみな取り組みだ。

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