2024年3月28日、今後日本が宇宙領域において開発を進めていくべき技術をまとめた「宇宙技術戦略」が策定、公表された。
同日、戦略の策定に携わった宇宙政策委員会委員長で株式会社西武ホールディングス 代表取締役会長の後藤高志氏が高市早苗内閣府特命担当大臣(宇宙政策)を訪問して文書を手渡した。
戦略の手交に際し、後藤委員長は戦略策定の過程で省庁・産業界・学術界のコミュニティを形成することができたとし、さらに「宇宙技術戦略は策定して終わりではなく、ここからが本当のスタート。関係省庁・機関とともに本戦略に記載された技術開発について実行に移していくことが重要」と語った。
これに対し高市大臣も、「この戦略のおかげで予見可能性が出てくる。特に技術の実装、商業化まで見据えた日本の勝ち筋、技術どう活かしていくかのタイムラインが示されたことは投資を呼び込むことにもつながる」と期待を述べた。
今回とりまとめられた「宇宙技術戦略」とは?
「宇宙技術戦略」は、2023年6月に閣議決定された「宇宙基本計画」に基づいて策定されたもの。
世界的な技術開発のトレンドやユーザーニーズの調査分析をふまえ、安全保障・民生分野、双方の観点から、日本として開発を進めるべき技術が示されている。
「衛星」「宇宙科学・探査」「宇宙輸送」に加え、それらに共通する「分野共通技術」のカテゴリーの中で開発を進めていくべき技術が挙げられており、開発タイムラインを示した「技術ロードマップ」が含まれている点も大きな特徴となる。
技術ロードマップは、通信、衛星測位システム、リモートセンシング、軌道上サービス、衛星基盤技術、宇宙物理分野、太陽系科学・探査分野、月面探査・開発、地球低軌道・国際宇宙探査、宇宙輸送、そして分野共通技術という11個に分けられており、いずれも「世界における技術開発の見通し」と「我が国における技術開発の見通し」が対比されている。
宇宙技術戦略によって高まる「予見可能性」と、ビジネス活用の可能性
宇宙技術戦略は、関係省庁が予算の要求などを行う際に参照されるため、宇宙開発や宇宙利用ビジネスを考える企業にとっては国の方向性をふまえた開発・事業計画が行いやすくなる。
これが前で高市大臣がふれていた「予見可能性」で、宇宙ビジネスの事業性を判断する材料としても役立てることができる。
さらに、10年間で総額1兆円規模の支援を行う予定の「宇宙戦略基金」でもこの戦略が参照されるため、今後の日本の宇宙開発・宇宙産業振興にかかわる全体の見通し、予見可能性が高まることはビジネスへの参入や投資を考える企業にとって重要なポイントとなる。
現在宇宙ビジネスに取り組んでいる企業はもちろん、戦略に示された技術要素を有する非宇宙領域の企業にとっても必見の戦略だと言える。
なお、宇宙技術戦略は、技術開発の状況や国際情勢の変化などを鑑みて、毎年ローリング(改訂)が行われていく予定。
宇宙技術戦略の概要と全体版は下記の通り。
宇宙技術戦略の概要(詳細版)
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai111/sankou1.pdf
宇宙技術戦略
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai111/siryou.pdf